1-63 四闘演舞
「はぁぁぁぁぁ!!!」
「あん?なんだよ!俺らの楽しい時間に水をさしやがって!!」
秋人の攻撃の合間に合わせて、突然のルシファリスの乱入してきたことにイラ立つクロス。ルシファリスの攻撃を右手で簡単に防ぐと、カウンター気味に法陣を放とうとする。
…が、
今度はその死角から、アルコがクロスに蹴りを放った。
「っんだよ!?おっさんもかよ!」
クロスはそう言って、法陣をキャンセルし、軽々とそれをかわすと、回転してルシファリスとアルコを同時に吹き飛ばす。
二人はそれぞれ壁に激突し、砂ぼこりを巻き上げた。
「いきなり首突っ込んでくんなよな!」
クロスはその場に着地してそう吐き捨てる。
ガラガラッと音を立て、瓦礫を退けて立ち上がるアルコとルシファリス。
そして、アルコが再びクロスへ飛びかかった。
それに合わせて、ルシファリスが秋人に叫ぶ。
「私たちのことは気にせず、好きなようにやりなさい!!」
そう言うと、ルシファリスもアルコに遅れて飛びかかった。
「くっ…!」
秋人も二人に遅れて、クロスに飛びかかる。
棒立ちのクロスへ、アルコが法陣で加速させた蹴りを放つが、クロスはジャンプしてそれをかわしざまに蹴り飛ばす。
その後ろに回り込んでいたルシファリスが法陣を放つものの、いつのまにか後ろに回り込んだクロスに首を掴まれて、後ろ向きに投げ飛ばされた。
遅れて秋人が飛びかかる。
「調子に乗るなよ!」
「そうそう、もっとこい!怒れよ!!クククククク!」
つかみ合い、睨み合う二人。
互いの力はほぼ互角。
「ググググググッ!」
「ガガガガガ…!!」
「「がぁぁぁぁぁぁ!!」」
二人の気合いがオーラをまとい、地面に亀裂が入る。
そこにアルコがクロスの顔めがけて蹴りを放った。
…が、クロスがうまく秋人の力をいなした。
「ぬう…しまった!」
攻撃の着点に秋人の体が突然現れたため、アルコはとめることができず、秋人を攻撃してしまった。
「っぐぁぁぁ!」
吹き飛ばされる秋人を受け止めるルシファリス。
「何やってんのよ!!長年戦ってなくて鈍ってんじゃないの?!」
「すまん…!」
珍しく謝るアルコをよそに、ルシファリスは秋人に声をかける。
「もう!大丈夫?アキト…だったかしら?」
「あっ…ありがとう…ございます。」
ルシファリスに支えられた体を起こして、秋人は地面に立った。
「やっぱり戦いのセンスはあいつが上ね。」
「…あのトリッキーな動き…確かに…」
確かにアブソルの動きに似ていると、アルコは言いたいのだろう。
ルシファリスはクロスを見ているアルコを一瞥した。
そんな三人に、突然、緑色のオーラが付与される。
「なん…だ…これは?」
驚く秋人の横で、ルシファリスは後方に目を向けると、ミウルが笑って手を振っていた。
「ミウルさまが身体強化の法陣を付与してくれたみたいね。」
「身体強化…?」
「まぁ、付け焼き刃のようなものだけどね…」
その言葉がわかったのか、遠くでミウルが地団駄を踏んで抗議しているのが見えた。
「とりあえず、三人で同時に仕掛けるわよ。」
「え…でも俺、二人に合わせられるほど戦いに慣れていないけど…大丈夫かな。」
「先ほどはしくじったが、我らが貴様に合わせるから安心しろ。」
「頼みますよ。お兄さん…」
「貴様…覚えておけよ。アスラの娘め…」
アルコがルシファリスを睨みつけていると、クロスが痺れを切らして少し離れた位置からしゃがんだまま声をかけてきた。
「そろそろいいかぁ?始めようぜぇ!」
「ちっ…!余裕を見せやがって…ムカつくわね。」
「とりあえず、俺から仕掛けるよ。」
秋人が一歩前に出る。
その後ろでルシファリスが一言だけ告げる。
「私の合図で後ろに大きく飛んでね。わかりやすくするから。」
秋人は振り返らずうなずいた。
三人はクロスに向き直ると、秋人を先頭に攻撃を再開する。
「そうこなくっちゃ!クハッ!」
楽しげな笑みを浮かべて、クロスはそれを迎え撃つ。
◆
クラージュは、力を溜めるように静かに目を閉じる。
大きく息を吐くと、足を前後に構えて腰を落とす。左の拳を体の前に、右の拳は腰のあたりに構えると、目を開いて足元に法陣を発動した。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ゴウッと白銀のオーラがクラージュの周りに現れる。
それらは法陣から身体に伝わり、全身に広がっていく。ゆらゆらと白髪がゆらめき、その双眸には真紅の炎が燃えている。
周りの石が物理法則に反するように、ゆっくりと浮かび上がっていく。彼のオーラに無機物が呼応しているのだ。
始めてクロスと拳を交えた時よりも、柔らかくも力強いオーラは、ゆっくりとクラージュの身体に染み込んでいく。
そして、その全てが身体に収束すると、クラージュは再び大きく息を吐く。
ちらりとルシファリスたちの戦いに目を向ければ、秋人を先頭に三人が攻撃を再開するところであった。
クラージュは集中力を保ち、力を最大限に練り上げつつ、ルシファリスからの合図を待つ。
その間にも、秋人たちとクロスの攻防は、より激しさを増しつつあった。
秋人が仕掛け、クロスが防ぎ、その隙を狙ってルシファリスとアルコが攻撃を行う。
まるで四人で演舞を舞っているかのように。
しかし、クロスの戦闘センスは確かなものだった。
力が互角の秋人の攻撃に加え、ルシファリスとアルコからも攻撃が飛んでくるのにも関わらず、その全てをいなしている。
「くっ…!こいつ!」
「クカカカ!!楽しいなぁ!!」
「アスラの娘!合わせろ!!」
アルコは上から、ルシファリスは下から連携した攻撃を繰り出すが、それすら簡単にかわされ、逆にカウンターをくらってしまった。
すぐさま受け身をとり、体制を立て直すと、秋人がクロスと攻防を繰り広げているところだった。
「このタイミングでいくわ!」
「承知した。」
秋人に合わせるようにアルコが蹴りを放つ。タイミング的にクロスはかわすことができずに、左手でそれを受ける。
そして、秋人の攻撃の合間にアルコへカウンターを放とうとした瞬間、今度はルシファリスが法陣を放ってきた。
「チイッ!!」
クロスはそれを相殺しようと法陣を発動するが…
「なっ…なんだこりゃ!?」
ルシファリスが放った法陣は、クロスの身体にまとわりつくように広がったのだ。
一瞬、思うように動けなくなったクロスを見て、秋人が攻撃に転じる。
しかし…
「アキト!!下がりなさい!!」
ルシファリスの合図に、一瞬だけ躊躇するが、秋人らすぐに後ろへと跳躍した。
その瞬間を見ていたクラージュが、構えていた場所から一瞬で消え去り、クロスの前に移動する。
「またあんたか!おっさん…なんか用かよ…!」
「この前とは一味違う奥義です。受けてみてください。」
いつの間にか白銀のオーラが、右手に集まり、ものすごい魔力によりバチバチと音が鳴っている。
「死閃!!」
クラージュが小さくそうつぶやき、クロスみぞおちに対して右拳を撃ち抜く。
「ぐがががががっ…!」
白銀の閃光とともに吹き飛んでいくクロス。クラージュは身体に溜めていた白銀のオーラを出し切り、その全てをクロスへと叩き込んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます