第8話 散歩外出 (公園編その②)
皆が飴を舐め終って、しばらく経った頃、
リュウが「そろそろ戻りますか。」と声を掛けた。入所者の人たちも何となく、飴を食べたら、そろそろ帰るという事が分かっているかのようだった。
「ほな、行こうか。兄ちゃん、手繫いでくれへんか?」と江藤さんがハルキに手を差し伸べた。ハルキが握手するように手を握ると「ほんまは、あっちの兄ちゃんの方が良かったけど。」とニッと笑っていった。ハルキは「自分ですいませんね~」とわざと顔を引きつらせて、おどけて見せた。江藤さんも笑いながら「我慢するわ」と言っておどけて見せた。「まあ、あの婆さんの面倒みんと、アカンのやろ、百歳やて。」と言った。
リュウは行きと同じように志摩さんの正面から両手を繫ぎ、ゆっくり歩いていた。ハルキは山富さんとも手を繫ぎ歩き始めた。その後ろを沢野さんがまるで皆を守るボディーガードのようについて来ていた。これが、いつものフォーメーションらしい。
リュウ達一向が駐車場に着くと、同時に黒いセダンが爆音を響かせながら車いす用の駐車場に車を停めた。
ハルキが「何だ、アイツ!」と呟くと助手席の女と目が合った。彼女は、運転する男に何か言うと、男は一瞬ハルキを睨みつけるようにしぐさを見せ、なかなかのスピードでバックをし車いす用ではないスペースに駐車をした。ハルキは、少しビビったがその素振りも見せず、「俺の覇気どうすっか?」とリュウに言った。リュウは一言、「ハル、車の窓開いてたよ。でっ、彼女にお前の「何だ、アイツ」が聞こえたんだろ。」と笑いながら言われた。リュウは、ハルキにクルマ回してくると伝え、小走りで車へ向かった。リュウが黒いセダンに差し掛かる手前で、中から見るからに分かりやすいヤンキーカップルが降りてきた。ハルキは遠目から大丈夫かと思い見ていたが、何事も無くすれ違っていった。気のせいか、彼女の方が軽く会釈をしていたように映った。車を回してきたリュウが手際よく、ハルキに指示を出し皆を乗車させた。
リュウは「これから帰りますよ。途中で気分が悪くなったら教えて下さいね。」と言って出発した。
老い、老い、マジかよ!? King doragan @kdoragon19
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