第6話 散歩外出 (ドライブ編)
ハルキは美久から車内では入所者が車に酔わないようなるべく話しかけた方が良いとアドバイスを受けていた。
「江藤さん、気分悪くないですか?」ハルキが取ってつけたように話し掛けると、「気分が悪いことあるかいな。こうやって車乗せてもろうて、外連れてってもろうて、最高や!」と笑顔で返された。すかさず、リュウが「まぁ、走って1分くらいしか経ってないけどな。」と茶々を入れた、園から公園までは十分程の距離だ。各々が自分なりの楽しみ方で過ごしていく。
「酒、石油、そば、だって。凄いね~。」
志摩さんが、車窓から見える看板の文字を次々と声に出し読んでいく。後で聞いた話だが、認知症の人あるあるらしい。
沢野さんは景色を見ながら何の歌かは分からないが鼻歌を口ずさんでいる。
園の中の表情とは確かに違う。心のリハビリとはリュウさん上手いこと言うなと思いつつ、ふと横を見ると江藤さんが、ウトウトしていた。「早っ!」ハルキは心の中で叫んだ。
リュウの運転は優しく、車内も適温。また微妙な揺れが眠気を誘う。「そりゃあ、江藤さんも眠くなるよな。」とリュウに気づかれないよう下を向き両手で髪をかき上げるふりをして欠伸をした。ハルキはドラマで観た雪山の遭難を思い出し、「ダメだ、寝たらダメだ。」と自身に言い聞かせた。青葉公園までは、もうすぐだ。
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