第2話:第二の差

 ここは関門の街テュケー。


 大都市の間を結ぶ街であり、交易路のオアシス。あらゆるものの中継点といわれるテュケーには、金になるものから厄介ごとまであらゆる話が転がっている。


 そんな街を守るための騎士団への入隊試験が、今日行われる。

 毎年多数の街の少年少女が入隊を目指す。


 給料はよく、出世すれば街の一等地に邸宅を構えることも可能だ。危険も伴うため相応の実力が求められるが、その分実入りはよく、何より華やかな職業だ。


 町の人々からは英雄のように称えられ、子どもたちの向ける憧れの目線を一身に受ける。

 試験内容は、筆記、実技、面接の三つの試験結果で入隊の可否が決まる。だが、問題はもう一つ。


 騎士団への入隊には、優先順位が存在する。不文律ではあるし、公的には全ての希望者に対し平等の入団裁定が適用される。

 しかし、入団の可否を判断するのは人間。様々な理由によって有利、不利になる人間は存在する。ハルモは、その不利になる側の一人だった。


「ちょっとこれは、厳しいな」


 筆記試験では点数がものを言うため、試験管の匙加減は直接的に影響しない。

 だが、実技、面接となれば違う。


 何より重視される対人能力を図るための相手が、背丈の低いハルモの倍はあるのではないかと思わせる巨漢であるというのは、理不尽な組み合わせだと言いたくなる。

 実際に倍もないのだが、横幅も相まって体重は倍になるだろう。


 これは、相性が悪かった。

 ハルモの実技能力も問題ないのだろうが、結果として彼の実力は発揮されることなく、試験は終わった。


 相手の親は騎士団員の一人で、筆記試験の結果は芳しくなく、実技試験で実力を見せられなければ入団は厳しいとされていた。逆に筆記試験の成績は優秀であるが農家の三男坊というハルモが存在した。

 騎士団が望んだ結果通りかどうかは別として、現実、ハルモは不合格の通知を、相手は合格の通知を得た。


 面接は、ほとんど点数に影響はない。


「だから言っただろう。農家の息子に、騎士が務まるはずがねえって」

「デュスノ……」


 彼の手には合格通知が握られていた。

 筆記、実技、面接に一切の問題ないというのは、彼が血だけ騎士になったわけではないという証拠に他ならない。


 ぐっと胸を張りながら迫るデュスノは、ハルモより頭一つは、背丈が大きい。


 未だに縮まらない背丈の差は、それ自体が実力の差のようにも、感じられていた。

「ま、試験は来年もあるんだ。せいぜいがんばることだ」


 これが、ハルモとデュスノの、二度目の差。

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