「異世界人はこの世界を愛してるⅠ」の続編となる物語です。
突然異世界へやってきた元自衛官のコーヘイが引き続きこの物語のメイン人物として描かれています。
今回はコーヘイとセトルヴィードとの「絆」がメインで描かれており、二人の関係性に色んな意味でドキドキする展開が目白押し!!
この物語から登場する突然異世界へやってきたロレッタという女性もすごく魅力的なキャラで、段々と好きなっていき、最後は彼女の決断に涙でした。
皆同じような経験をしても、それぞれに思う事や、行動も、信念も受け取り方も全てが違うのは当たり前で、どうしようもない苦境に出会った時にどう乗り越えていくのかもみんなそれぞれなんだよなと改めて感じ、多様な乗り越え方をこの物語から学びました。
お話の構成も、Ⅰからの要素を更に深堀されており、魔法の世界でもとってもリアリティーが散りばめられ、ほんとにこんな世界があるんではないか、と思ってしまう程です。
哲学的要素も感じる作品で、人間の深い部分に触れることが出来る文学作品です。とても読みやすい内容となっていますので、色んな方にⅠからぜひ読んでいただきたいなと思います。
大切なものを失ってしまった銀髪紫眼の美貌の魔導士セトルヴィードと異世界からやってきた青年コーヘイ。ひょんなことから幼い子供を世話することになった彼らが巻き込まれる次なる事件は——?
とにかく誰でも甘やかしがちな、人たらしのコーヘイさんにきゅんきゅんしていると、思わぬ過酷な運命が開示されて唖然とするのはもうこの作者さんの十八番という感じで、くううっとハンカチを噛み締めてしまいます。
セトルヴィードと「彼女」の面影を宿す少女に、あれ、これはもしや……? とありがちな展開を想像してしまうところですが、あにはからんや、その展開の意外なことといったら……! もう、もう……最高なんですよ!!
苦難の多かった二人に訪れる、ひとつの救済。
そして、もうひとり、異世界からの来訪者の彼女の切ない思いの変化と幾つもの要素が絡み合う多重奏のような物語。
さらに彼らの行く末が気になってしまうこの続編。前作をお読みの方はもちろんのこと、前作未読の方も何ならこの物語からでも、ぜひあの二人の絆に悶えていただきたい一作です(率直)
あ、あと個人的にはなんだかんだコーヘイさんがばしっと自分の負債を返したあのシーンが大好きです!
今作は前作に比べ、全体的に落ち着いた文章運びのように感じました。
一つ一つ、しつこ過ぎることのない描写ですが、流れが自然で美しく、この世界の情景、草いきれや土埃が漂う様も脳裏に浮かぶような箇所もあります。とは言え、もう少し肉付けされていてもよいのかもしれない、しかし、この文章の滑らかさを殺すのはどうなのか、そんな葛藤が私の中に前作からあり、この感想もかなり悩んで書いています。
どのキャラクターも相変わらず魅力的で、それぞれの個性がより鮮明に浮かび上がってきた今作ですが、何よりも、前作で活躍した一生懸命な「彼女」を追いかけたい私がいます。
その気持ちと矛盾するようにも思いますが、作品の世界観を全て無に帰すような逆転劇がないのは流石だと感嘆しました。読了後、思わず唸り、それから、静かに涙が零れました。たおやかな彼女が愛したこの世界を、私も愛おしく思うのです。この世界の時間はとめどなく進み、穏やかに、切なく、変わって行くのでしょう。
堅苦しくなく、だからといって、軽すぎず。いつもより丁寧に入れた紅茶を日だまりの中で飲むような、温かく、柔らかい時間が欲しい方に是非、読んで欲しい作品です。
作者ご自身が、あらすじに書いてらっしゃる通り、前作で「もっと読みたい!」と思っていた、魅力的なキャラクター達のエピソードが沢山盛り込まれた作品でした。かつ今作はじっくりと書かれた事がよく分かり、前作以上に文章が読みやすく、ストーリーもテンポ良く進み、毎日楽しく読ませて頂きました。
完結まで読み終わったあと、爽やかな気持ちよさに包まれたのは、私だけではないはず。物語全体を通して、根底にある作者の、人を見る『目』に思いやりや愛情を感じ、それが、読後感の気持ちよさに繋がっているのではないかとも思いました。
とにかくグイグイ引き込まれ、あっという間に読めます!面白かったです!!