第8話友達のガーリックトースト

 私は専門学校を卒業した後も仕事をしながら未だに学び続けていました。 

 私の入った学校だけでは経験にならないので更に専門的な学びを経験しなければならなかった。


 隠さず言いますと私は演劇の専門学校に通う為に上京したのです。

 専門学校では基礎は教えてくれますが、その後の進学先はそれだけでは決まらない。更に後述の話で述べますが、私は両親からの応援が得られずに「新聞奨学金」を利用して学校に通うしかなかった。簡単に述べますと在学期間新聞配達をする代わりに学費と生活を保証してくれる制度。意外と知られてませんね。

 学業より新聞配達を優先しなければならない弊害として、基本朝刊配達と夕刊配達の間…大体午前中の授業しか受けられないと言う大関門が設置されていた事。

 汚い話世の中お金です。時間もお金で買えます。ですのでオーディションを受けるなんて夢のまた夢。もし受かっても休日が一ヶ月に四日しかないもので演劇も満足に出来ない。

 等などあり、苦労の割に学びが少ないので専門学校卒業後は劇団か事務所の養成所に通う事になる事が多く、私はその出合いでした。勿論若くして成功して在学中にデビューなんて人もいらっしゃいます。ですので私の体験は失敗者から見た歴史と言う事で。

 まだ少々愚痴りますが、新聞配達は少ないけどもお給料が出ました。仲間達で節約情報を交換して社の寮を出てからのアパート契約料とか養成所や劇団所属の手付金捻出に躍起になりました。貧乏はしないに限りますね。

 私は複数養成所のオーディションを受けました。有り難いことに落ちる事は有りませんでしたが、次は「お金」の問題です。手付金から月謝迄払わねばならず、バイトないしパートも期間内に決めねばお金の切れ目が生まれてしまいます。

 私は級友の口利きで契約社員に滑り込みました。


 そこからがスタート。運良く入れた養成所。クラス仲は悪くなく私は同じ学校の卒業生と仲良くなりました。もう年月も経ち連絡も途絶えましたが、戦友であります。


 そこで戦友が自宅に招いてくれることになりました。私の金欠ぶりを見かねてのことでしょう。

 戦友は両親からの理解を得られていたので正直羨ましくもありました。ですが貧富を鼻にかけることなくよく帰り際にゲーセンに寄ったりしてつるみました。


 さあ、お呼ばれしたからには食事付き。しかも「お手製ガーリックトースト」です。

 スーパーでバケットを買い、無料の牛脂とニンニクを一欠。

 自室に戻ると手際よく処理していきます。スライスしたバケットに牛脂をすり込み、包丁で潰し香りを出したニンニクも擦りつける。

 そう。戦友も一人暮らし。赤貧には変わりなかったのに心ばかりの晩餐を。

 だけれど奮発して買い置きの白ワインを饗してくれました。酒は苦手ではあったけども初心者にも呑みやすい甘口だったのを舌が覚えています。

 パリパリにトーストされたガーリックトーストによく合いました。

 お腹も落ち着いた頃に戦友が翌朝の朝餉の仕込みをしております。なんと炊飯器ではなく土鍋で米を炊くと言うのです。理由は炊飯器が壊れたから…

 やりくり上手だなぁと感心したものです。


 その日は深夜までゲームをして過ごしました。今の世の中ネットが普及していて、集まって何かをする機会も極端にへったのでこれも私にとっては代え難い記憶です。


 お節介焼きの戦友に乾杯…ですね。

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