第7話 ベイシア電気の洗礼

どういうわけか書き忘れたことがあった。この年の2月、つまり歩いて初日の出を見るために海まで行った翌月に、Mの立案で「さいたま市一周計画」が実行されたのだった。その悲劇は後日に書くとして、前回からの続きで「九十九里浜踏破計画」だ。

Mからその計画の連絡が来たのは10月頃だったと思う。相変わらず私は地図を見もしないで承諾してしまったのだった。

12月末。外房線を下車したのは太東駅だった。電車料金は2800円ほどだった。

「まず灯台を見に行こう」

灯台か、いいじゃないか。海に向かって歩いた。意外と距離があった。1時間ほどあるいてようやく灯台に着いた。

これから海べりを犬吠埼まで歩くというのに、いきなり大変な時間がかかってしまった。

さて、今の今まで九十九里浜の距離を知らなかったので、これを書きながらたったいま検索してみたのだが、なんと65kmだそうです。

無理じゃねえーか、M、このアホ!

いやもう遅い。

我々は海に近い道を北上した。その道のりのつまらないこと、絵にならないこと。海沿いとはいえ、浜風を防ぐためか木が多かったり、または海が見える道は有料道路でそもそも入れもしなかったので、海は全く見えない行進となったのだ。イメージと違う。まあ12月の末に海べりを歩くのもつらい話なので、これくらいでちょうどいいのかな、とは思うけれど。

太東の灯台を出たのが9時過ぎだった。それからの道はひたすら民家が両脇に立ち並ぶ、歩道もないような狭い道だった。やがて民家が少なくなり、道が広くなると今度は何もなくなった。なんだこのつまらないウォーキングは。

5時間ほど歩いたらベイシア電気という聞いたことがないデンキ屋が見えた。コジマ電気とか、ヤマダ電機のように、大きな電気屋である。

これは中で休めるかと思って入ると、マッサージ椅子があった。ここでたっぷりマッサージを楽しむと、たちまち2人とも疲労で気絶した。

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