第2話 西新井大師

浦和から葛西臨海公園までの距離と言われても、すぐにはわからない。もちろん地図を見ればいいのだろうけど、そういうことは面倒な人間である。M君が行けると思っているのなら可能なのだろう。

その時はまだ9月か10月頃だったと思う。初日の出と言うことは、当然元旦のことである。まだ2か月以上も先の話なので、あまり深く考えずにいた。

11月におかしなことになった。

「天皇杯も観に行こう」

M君のひいきのチームが勝ちあがっているらしく、決勝戦に出ると決めつけてチケットを2枚購入したらしい。サッカーには詳しくないのでわからないけれど、今買わないと売り切れるんだそうだ。

天皇杯は1月1日、13時に開始だというのである。埼玉から海まで歩いて、おそらく疲れ切っているであろう体で、その間どこでなにをしろと言うのだろう。

しかもチケット購入から数日後、M君のひいきのチームは敗退したため、彼は「行きたくないけど仕方ない」と言うが、買ったのはお前だ。

そして12月31日がやってきた。14時に浦和を発つ。東京入りまで2時間はかからなかったと思う。順調。

まっすぐ環七まで歩き、環七を左に(東に)折れた。19時過ぎに大きな寺だか神社があるようなので、入ってみた。西新井大師という名前らしい。後述するかも知れないが、別の日になぜかこの西新井大師には何度も悩まされることになる。

屋台などが準備されているが営業はしていない。元日からにぎわうのだろう。30分ほど休憩をとった。5時間以上歩いていて、あしの運びが鈍ってきていた。

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