末路


「お姉ちゃん、頭いい! 死ぬ時の姿がわかったから、違う姿になって違う未来にしたんだね。それでお姉ちゃんの友達は? 二人はどうなったの?」



 話を聞き終えると、紗耶さやは興奮気味に問いかけてきた



「中学から別々になっちゃって、離れ離れになったの。だからわからないわ」



 私は曖昧に微笑んだ。


 紗耶にはとても言えなかった。二人がもうこの世にいない、なんて。



 麻里奈まりなは中学二年生になって間もなく、何者かに殺されてしまった。彼女の遺体は両手両足を縛られた上で顔に布を被せられ、池に捨てられていたという。悪戯されたり暴力を受けたりした痕跡はなく、死因は溺死だったそうだ。犯人は、まだ捕まっていないらしい。

 きっと彼女は、深い絶望を味わいながら死んだのだろう。視界を塞がれて真っ暗な中、自分の吐くゴボゴボという音を聞きながら。


 美紀みきも一昨年、高校一年生の時に死んだ。コンビニで立ち読みをしていたところに、トラックが突っ込んできたそうだ。トラックにさえ気を付ければいいと言って笑っていたけれど、不慮の事故では防ぎようがなかっただろう。

 トラックの運転手は事故直前に逃亡したと見られ、目下捜索中とのことだ。



 二人が最期に目にしたのは、やはりあの通学路で見た光景だったんだろうか?



「さ、もう寝ましょう。朝寝坊しちゃうわよ」



 二人についてこれ以上追及されないよう、私は紗耶に掛け布団を着せかけた。紗耶は素直に頷き、目を閉じた。


 二人の死は、正直ショックだった。けれど私は生き延びることができた。おかげで今もこうして紗耶と一緒にいられる。二人の分も生きよう。きっと二人も、私の幸せを願ってくれている。


 一人生き残った後ろめたさから逃れるには、そう信じるしかなかった。

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