第71話 日常でもちゃんと動いてますよ
「聞いているのかこの奴隷が!!お前のせいで上客が逃げちまったんだぞ!どうしてくれる!?」
「う…うぅぅ…!」
白い耳をペタンと下げて膝をつくのは、白い毛並みのふわもこウサギなシーナちゃんである。赤い瞳をうるうるさせて今にも泣き出しそうだが、眼前の奴らはそんなの目にも入らない様子。
そう、涙目のシーナちゃんの前で、白いローブの医者達が、何やらやかましくがなり立てているのだ。
連中の言葉を要約するに曰く、「診断ミスして客に逃げられた!どうしてくれる!」であるのだが…。
ここは帝都医院。帝都で唯一の大病院であり、お高い値段だが風邪から大怪我まで何でも治せるぜぇ!と標榜している医院なのである。当然、ここの大半の上客は貴族などの特権階級の者達。そんな上客には上位医師、それ以外の下級層は下位医師や看護師などが行うようになっている。ちなみに、医師になるには資格なんて必要ない。腕さえあれば誰でも医者になれるのが、この時代である。まあ、その信頼性はともかく。
で、この怒鳴ってる上位医師連中、上客の貴族の診断をミスったらしいんだよ。でもそのミスを認めるのも癪なので、薬を棚から出した薬師のシーナちゃんに、全部の責任をおっ被せようっていう魂胆。
かぁ~!やだねぇ、自分で責任取りたがらないくせに偉い地位に踏ん反り返ってる奴って、私は嫌いだね。そもそもだ、こいつら、最近じゃ錬金ポーションで全て解決するようになっちゃってさ、そのせいで診断も適当なんだよ。「腰が痛い?じゃあこの万能回復ポーションで!」みたいな。怠慢だからミスしてんのに、何を棚に上げてんだか。
「おい聞いているのかウサギ!?」
「ふぇっ…!?み、耳を引っ張らないでくださぁい…!」
「ふん!その長い耳は飾りか!?聞いていないのなら切り落としたほうがよほど良いだろう」
「そうだそうだ!」
「ふぇぇ…」
虐められている子ウサギちゃんだが、表にも見える位置なのでお客さん達が眉をひそめている。どう見てもウサギをいじめる悪い人間という図だからだ。
と、その騒動が届いたのか、奥から偉そうな医師が一人、ドスドスとやってきた。
「こらこら、どうしたんだね?」
「ああ、院長!」
「このウサギが診断ミスをして、我が医院に傷をつけやがったんです!だから懲らしめてやろうかと…!」
恰幅の良い院長はうんうんとうなずいてから、ずいっとシーナちゃんに近づいて、ニタリと笑みを浮かべた。
「困るんだよねぇ、ウチの名声に傷をつけるようなのが居るのは。特に、お前のような奴隷にそんなミスをされちゃあ、ウチの評判に関わるんだよねぇ」
「あう…で、でも、ボク…言われたとおりにしただけ…」
「嘘を付くな!お前が失敗したのが原因だろう!」
「おおかた、こいつが薬を間違えて出したんのだ!だから患者の病気が悪化したに違いない!」
「ほぅほぅ、それはいけない、実にいけないねぇ」
値踏みをするかのような視線に、シーナちゃんはビクビクしながら床を見ている。…しかし、どこか諦めの感情が見え隠れする。こんな対応に慣れきっているかのような、そんな感情。
そんなウサギの前をカツカツと徘徊しながら、太った院長はネチネチと過去をほじくり返している。
「まったく、どうしようもない奴隷だ。こんな役立たずを拾ってきた者の気が知れないねぇ。…ああ、前院長は変わった御仁だった。こんな奴隷を連れてきて薬師にする、なぁんて言っちゃって。奴隷を、だよ?何処の世界に、奴隷を小間使じゃなく薬師にするなんて暴挙を成す医者がいるんだか。でも、こんなことをされちゃぁ、あの人の見る目も、その程度だったってことかなぁ?」
「…ご主人様はっ…!」
シーナちゃんが食って掛かるように顔を上げた。が、周囲の視線に身を竦ませて、また顔を下げてしまう。
そんなのは目にも入らないらしく、院長はニヤニヤ笑いで続けている。
「前院長が死んで、この奴隷もどうすべきか迷ったけども、下位医師の要望が多くて残したはいいが…こんな不祥事を起こされるのなら、やっぱり売り払ったほうが良かったかもしれないなぁ」
「そうだそうだ!役立たずはさっさと売り払っちまいましょう!」
「こんなウサギ、早く追い出すべきです!」
おっと、ようやくその言葉が出たな。
さぁて、それじゃ私が出ましょうかね。
「それでは、私がその子ウサギを引き取ろうじゃないか」
ドドーンと登場するのは、何を隠そうこの私。
ただし片手に酒瓶、片手にスルメっぽいのを齧ってますが。帝都は海峡が近いので、海産物も豊富に輸入されてますよ。
私の唐突な横入りに、院長はあからさまに鼻を鳴らして睥睨してきた。
「…なんだね、貴方は」
「ははは、失敬。なにぶん、昼の酒盛りの時間だったのでね」
まあ毎時間、酒盛りと食事をしてますけどね!
グビグビ飲みながら、周囲の胡散臭げな空気を無視しつつ続けた。
「その子ウサギ、お前たちにはもう必要ないのだろう?ならば私が引き取ろうじゃないか」
「はっ!貴方みたいな老人が奴隷を買い取るだけの金があると?それはずいぶんな冗談じゃありませんかねぇ。それに、こんなのを欲しがるなんて、物好きな人だ」
「はっはっは!お前たちのような節穴よりはマシだがね」
「…は?」
ピクリ、と反応した連中へ、私はお得意の小馬鹿にしたニヤリ笑い。
「才能を見切れずに、外面だけでレッテルを貼る馬鹿者と、理解できているが故にくだらないプライドで認められずに追い出そうとしている無能。そして…人種以外が存在すること事態が忌々しいと思っている差別主義者」
順繰りに見ながら言ってやれば、連中は面白いくらい顔を歪める。いやいや、こういう反応は素直で良いなぁ。
「何を知った口を…」
「知っておるぞ?院長、貴様は前院長より、医師としての腕が格下だ。そして貴様と違って前院長は腕前も人望もあった。この医院を開院し、錬金道具を流通させることに成功し、皇帝にすら認められるほどの名声を得た。その先代が事故で死に、貴様はこの医院を乗っ取ることに成功した…後は、先代のシンパを処分すればおしまい…だと思ってるよなぁ?」
ズイッと覗き込みながら指摘してやれば、あからさまに顔が引きつった。ははは、わかりやすい男だよ。それにこの程度のこと、神の力が無くとも身近な者なら理解できるだろう。実際、ギャラリーの中には「やっぱりなぁ…」という声も聞こえてくる。
ここでようやく注目を集めていると知ったのか、院長は手を払って追い出そうとしてくる。
「な、何を適当な事を…!こ、ここは私の医院ですよ!?さっさと出ていきなさい!!」
「おっとぉ、図星を突かれたから追い出しかね?腹芸のできん男だなぁ」
「この…!!」
「そうそう、代金だが」
おもむろに懐から出した袋を、相手の弛んだ顔面に叩きつけてやる。
チャリーンッ!バラバラッと袋から零れ落ちるのは、煌々と輝くのべ金貨50枚。
ジャラジャラ落ちたそれに目の色を変えた連中へ、私はどや顔で言い放ってやる。
「それで足りるだろう?このウサギの才能は、その程度の額では到底払いきれないほどの値打ちがある。いやぁ、良い買い物をしたものだなぁ!我が宿に田人が増えるのは喜ばしい!」
田人、という言葉に、反応する人々。この世界では天才を表すそれに、シーナちゃんを見ていた人々の目の色が変わった。
おろおろしているシーナちゃんの手を引いて、半ば強引に私は医院から出ていく。背後の声なんざ知ったことじゃないし、追い縋ってくる連中の前で指を振ってドアを魔法で施錠してやる。ドンドンわーわーとやかましいが、無視だ無視。
しかし、ある事を思い立ち、ドアのガラス窓から中を覗き、
「ああ、そうそう。一つ忠告しておくが…」
ここでお決まり「最後に一つだけ」を発動!
「誤診した患者だが、彼の病状は病気じゃない。ただのギックリ腰だ。この程度の診断にもミスるようなら、医者など辞めてしまえ」
そう言い放ちながら、私は溜飲の下がる思いで、医院から出ていくのである。
あー、スカッとした!
・・・・・・・
「…あ、あのぅ…その、た、助けて頂いて、ありがとうございます…」
帰り道、私の後ろからトコトコついてくるシーナちゃんが、ようやく小さな声で言った。
それに笑いながら答えてやる。
「気にするな。あの馬鹿共に言いたい放題されるままなのも癪だからな。私の溜飲を下げるためにやっただけだ」
「で、でも!あんな大金、ボクなんかのために…」
「イカンなぁ、実にイカン。お前はその才能がどれほど素晴らしいか自覚しておらんのか?」
「え…で、でも、ボクなんかいつも役立たずだって言われてて、ヘマばっかりで…」
「それは連中がお前に責任を引っかぶせていただけだ。ただの嫌がらせに過ぎん」
実際、奴隷というのはそういう扱いをされるのが普通だ。私は別になんとも思わんのだが、ティニマやヴァーベルは激怒するだろうな。とはいえ、シーナちゃんの扱いはまだまだ良い方のレベルなんだがね。元飼い主は、たまたま市場で死にかけていたこの奴隷を見かけて、哀れを催して助けた人情家だったからなぁ。
「…あの、ボク、これからどうすればいいですかぁ…?おじいさんの奴隷になっちゃいましたけど」
「何を言っておる?私に奴隷など必要ないぞ?」
「ふぇ…!?」
「奴隷が必要なほど貧窮しておらん。君を買ったのは、どちらかというと雇用契約だ」
「こよう…?」
理解できていないシーナちゃんへ、私は指を立てて説明してあげるのだ。
「君がたまにやって来る我が宿だが、冒険者の宿としての知名度が上がってきたのは良いのだが、新人の数も増えつつある。それで、できるだけ怪我の後遺症を減らすためにも医療のフォローを行いたく、常駐医師をつけたかったんだが、医院は人手不足で引き抜きはできないと言われた。そこでだ!ナイスな私は虐められているお前をどさくさに紛れて助け出し、あわよくばそのまま我が宿の専属医師にさせてしまおう!と思って行動したのが現状である。オーケー?」
「え、えぇっと…?それじゃ、ボク…ダーナちゃんの宿で働けば良いんですか?」
「うむ。言うまでもないが、私は奴隷は持たない主義だ。お前はこれから一人で生きてもらう。つまり、これはキャッチ&リリースだ」
「ひ、一人で…?」
なんだか不安そうにシュンっとしているが、その心配も無さそうなんだがなぁ。この子の才能は、文字通り飛び抜けている。
とはいえ、奴隷へいきなり自由に生きろと言っても、困惑するのが関の山。ずっと檻の中だった生き物が、いきなり野生に返っても野垂れ死ぬだけだ。なので、ちゃんとフォローはしてやろう。
「なぁに、我が宿で働いていくうちに、お前のやりたいことも見つけられるはずだ。一人で考え、行動し、自由に責任を背負いながら生きていくのが普通なんだ。すぐに慣れろとは言わんが、徐々に学んで行きなさい」
「は、はい…あ、でもダーナちゃんと一緒に働けるのは、ボク、嬉しいです!」
「うむ、そうだろうそうだろう」
ダーナちゃんとシーナちゃん、たまに見られるちびっこ二人組だが、なにげにウチの宿の癒やし枠になっている部分がある。シーナちゃんなんかゴツい冒険者に「抱っこさせてくれぇぇ!!」とか言われて、そのままされるが儘だし。いや、舌は出てるんだけどな。
ともあれ、そんなシーナちゃんが居てくれれば、我が宿の評判もウナギ登りだろう。
いやぁ、本当にいい買い物をしたなぁ!
…などと思いながら帰宅すれば、事情を説明したメルメルにいい笑顔を向けられた。なんだよぉ、偽造はしてないからいいじゃないかぁ。なんだかメルの視線が冷たくて悲しいぞ。
もっとも、ダーナ&シーナちゃんが手を取り合って嬉しそうにしている笑顔を見る分には、悪い選択ではなかったと思いたいのだがね。
というか、そろそろ宿も部屋を拡充したほうがいいんでないの?とゲッシュに進言してやろうか。人が増えて部屋が足りなくなってきてるらしいし。資金は…まあ、ちょいっと有るところから頼んでくるかね。あとシェロスとキュレスタ氏のところにも行かなきゃ。
ああ、忙しい忙しい~。
※※※
「はい?それはまた…構いませんざますが」
ここは豚子女史の屋敷である。相変わらずボンッボンッボーンな豊満ボディの豚子女史だが、今は私が居るので畏まっている。
ティニマが伝来させたケーキに舌鼓をうって歓待されながら、私は豚子女史へ提案を行っていたのだ。
一つは、ゲッシュの宿専属の買い取り人を配置してほしいという点。
ようは遺跡などから持ち帰った値打ち物を、すぐに買ってくれる買取専門店ね。これで安値で買い叩かれる新人を減らしたいという目論見がある。
シェロスやキュレスタ氏と提携契約を結んだんで、商人ギルド出張店舗ももう出店予定だ。こちらはポーションとかのアイテム販売専門店。売却も購入も、宿の中で出来るのだ。便利だろぉ?
で、もう一つが…、
「トンコー、お前に冒険者ギルドを立ち上げてもらいたいのだ」
こちらがメインの話である。
豚子女史、やや怪訝な顔をしつつも、商人らしく目端を光らせながら尋ねてくる。
「僭越ながらお聞きしたいざますが…それを成すことで、妾へどのような利益があるのざましょうか?」
ふふふ、神が相手でも交渉は退かぬか。いいねぇ、その商人魂。好きだよ。
「まず、ゲッシュの宿を手始めに、世界中へシェアを広げていき、最終的には全大陸の冒険者を取りまとめる存在になってもらいたい。つまり、出土した古代の遺物などは全てお前の情報網に掛かるようになるだろう」
「いささか、長期的すぎる気がしますが…」
「もう一つが、冒険者という兵力を持つ勢力になるということ。金を使わずとも、あらゆる勢力へ首を突っ込ませる力を持つのだ。実に素晴らしい」
「素晴らしく胃に悪そうな地位ざます」
やはり気乗りはしないか。ま、当然だな。誰だって各国から目の敵にされるかも、ってわかってるような地位になりたくはないな。
仕方がないので、私も手土産を出すことにする。
ペラリ、と卓上に広げたのは一枚の地図。
「これは…?」
「ゲンニ大陸に存在する、全ての鉱山地図だ」
「っ!?」
はい、神様の力で作り上げました、ゲンニ大陸に存在するあらゆる鉱山の所在地です。もちろん未出土の鉱山もバッチリ網羅!しかも縮小地図もセットでお得!これは買う以外にないでしょう商人ならば!
なんとも冷や汗を流す豚子女子、幾ばくか悩んだ感じでしたが、遂には観念したように両手を上げた。
「…わかりました。貴方様の言われるとおりにしましょう」
「おお、やってくれるか!」
「これを差し出されて、ノーと言えるのは商人以外の者だけざます。…しかし、ディタ・カロン。どうして冒険者ギルドを設立しようとされるのざますか?」
おや、やはり気になるか。
「ふむ、そうだな…私は今回、下界に降りて思ったのだがな。ハディやケルトは間違いなく英雄の才がある者たちだ。まだまだ発展途上だがな。同じように、今までの歴史上でも、才能が埋もれた者達が多く存在したかもしれん。だから、その才能を発露するチャンスを多く取り入れたいのだよ」
誰でも気軽になれる冒険者ギルドがあれば、後ろ盾を得たことで自由に旅ができるようになるだろう。ほら、入都税とかさぁ、アレ地味に面倒なんだよね。あと旅券発行も。
悪人善人大歓迎、ギルドが存在すれば、食に困って山賊に落ちぶれる者も減ることだろう。
まあ、そのかわりギルドは軌道に乗るまで手痛い失費が掛かることになるが…その補填はまぁ、この鉱石地図でなんとかしてちょ。
そんな私の目論見も理解しているのか、豚子女史はパタパタ扇を仰ぎながら、まじまじと地図を見ている。
「しかし、思い切った事をするざますねぇ。ゲンニ大陸の鉱山産業は、妾以外では辛いものになるざますよ」
「なに、鉱山予定地を軒並み買い取って、ドワーフと提携すればいいだけだ。掘り当てるのは連中の仕事、君は鉱石を連中に売り払うだけで儲けものだ」
鍛冶と穴掘りはドワーフに任せよってね。
この物言いに、流石の豚子女史も呆れたように笑った。
「宜しいざます。そのご依頼、承りましょう。…しかし、冒険者ざますか。ずいぶんと変わった部分に目をつけられましたねぇ」
「まあ、そうだな。冒険者といえば…私にとってはロマンだからな」
ファンタジーと言えば冒険者、冒険者と言えばファンタジーだ。
私にとって冒険者とはロマンの塊なのだよ。
「…なんだか、ディタ・カロンはゲンニ大陸を一つにまとめようとしているように見えるざます」
「ああ、まあ間違ってはいないな。とはいえ、裏っかわの繋がりはまだ無いんだがね」
「裏側…そうですねぇ。あの、リングナー、表はともかく裏側の評判はよろしくないらしいですし、裏街道の取りまとめ役だった大盗賊イーレンも、何年も前から行方不明と聞くざます。あちらも一枚岩ではないので、まとめるのは骨が折れそうざますねぇ」
「恐怖統治なら得意なんだがなぁ」
ははは、妙に説得力のある言葉だろう?
冷や汗混じりの豚子女史は、ため息つきながら扇子をパタパタ。
「裏街道を歩く者たちは、彼らなりに裏側の法と秩序の元に行動しているざます。あまり突付いて暴動を引き起こさないでくださいませ。一応、彼らのお陰で、食いっぱぐれないでいられる者達も居るざますから」
「私も悪人だからってだけで、割を食わせる気はないとも。世界の秩序を壊さないのなら好きなだけ薬も盗みも殺しもすればよい。ああ、あと私の目につかない場所でやってくれれば完璧」
「…無法者は神を崇拝してはいないざます。彼らを平和的に動かすつもりなら、行動に出るのは貴方様以外の者の方が、よろしいでしょうね」
ふむ、神の威光が通用しないのは面倒だなぁ。まあ神の威圧感で平伏させることも出来るんだけど…それやって、肝心なところで手を抜かれるのは困るしなぁ。ほら、犯罪者って転んでもただじゃ起きないし、あのネセレ相手に頑張ってる連中とかまだ居るらしいし。たまーに宿に襲撃しようとしてる連中がいるのを、私は知っている。まあ結界のせいで門前払いなんだけどね。
しかし、裏街道の連中かぁ。スリに強盗、闇市に売人、無法者に殺し屋と選り取り見取りなんだが、小集団は居ても大きな組織がないんだよな。まとまりがない現状、できれば動かしやすいように誰かが取りまとめてほしい。
「私なりに思うんだが、裏側のギルドっぽいのも作るべきなんだろうなぁ、と。今は個人や小集団で仕事を請け負ったり、各領域みたいなのが決められてるようだけど…路地裏歩きをする度に、この治安の悪さはどうにかすべきかと考えるんだよなぁ」
帝都歩きが趣味な私は、もちろん裏路地もよく歩く。で、何度も荒くれに絡まれてはぶっ飛ばし、盗賊に絡まれてはぶっ飛ばし、薬を勧められてはぶっ飛ばし、抗争に巻き込まれてはぶっ飛ばし、今じゃ姿を出しただけで連中に逃げられるようになった。
なんかさ、いくつかの犯罪者集団がお伺い立ててきたりしてきたんだけど、各組織それぞれが何度も勧誘に来るんで、もう面倒になっちゃって。いっそのこと、もっと大きな集団が統率してくれないかなぁ、と。
「面倒なんだよなぁ、悪人の相手って。しつこいし更地にする勢いで消し飛ばしても、どうせまた湧いてくるし。それなら受け皿を用意したほうがマシかもって思って」
「………妾は聞かなかったことにするざますね」
おっと過激な発言だったかな?すまんな、悪人の命なんてゴミとしか思ってないもんだから、つい。
そう言って笑うけども、冗談が通用しなかったみたいで、豚子女史は冷や汗まみれ。
むむ、発言が過激すぎたかな?
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