episode15 passion of cyborg Ⅱ
「寂しがることはないさ。おれがいる」
「お前がいるからなんだ」
「お前を裏切らないおれがいる。お前を抱いてやるおれがいる。なんだ、嫌か?」
「僕は軽薄な奴が嫌いだ。酔っ払いの戯言は特にね、沁みるんだ、残酷なくらいに。それで手のひらを返された時のショックは、僕を苦しめる」
「サイボーグが?」
「誰にも言ってないだろうな?」
「言わないよ。おれはお前が好きだもの。お前の立場を危うくするようなことは言わない。絶対にだ。あのさ、おれはお前に傷つけられたっていい。殺されたっていいくらいだ。どうせ、おれは病気だ。短い命を好きに使っていい。だから、流れで軍人になるところまではよかった。しかし、どうだ? おれは人が好きだ。この気持ちを伝えられる相手なら、正直誰だっていいと思ってた。でも、この気持ちのシンの理解者は、お前なんだよ、アレック」
「僕はサイボーグだ」
「でも言っていたじゃないか、お前の死体の体にはクリエイターの脳が埋め込まれているって」
「そうは言った。でも、エンド・ペヴェンシーはそういうことをごまかす傾向が強い」
「大丈夫。そこにごまかしはないよ。だってお前は、あたかもクリエイターを体現している」
「それ、どういう意味?」
「そのままの意味。お前は人生を創る。お前は、お前を創る。お前は、戦う。クリエイティブってそういうことの連続じゃないか?」
「わからない」
「わかるときが来るよ。死ぬってそういうことなんだよ、きっと。分かるようになる。そして忘れていく。おためごかしじゃないよ。真面目な話さ」
「真面目な話」
「そう」そして「なあ」と言うスノウの顔は真っ白だった。不気味だった。死体と話しているみたいだ。でも、サイボーグはその表情が出てこない。だから、きっとサピエンスになれないアレックを、スノウ・レンは好むのだろう。
「趣旨が変わってきたな。まあ、いいけど。おれの話なんか、どうだっていい。生きて、死ぬ。それだけさ。頼むからさ、あのさ、聞いてくれ」
「なんだ?」
「おれを看取るのはお前が良い」
「……」
「言ってる意味わかる?」
「わからない。でもその重みはわかる」
野営をしていた。テントを張り、せわしなく医療に従事するナイチンゲールのような彼女に見惚れる。戦争はそこかしこで起きている。三秒に一人が、何かの理由で死んでいく地球で、一体僕に何ができようか。
戦う。戦う。戦う。でも。
何のために?
スチュアートなら答えを知っているような――
そんな気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます