episode12 always
「お前のこと、嫌いだったけど。どうしてかな、戦場だとお前みたいなやつと一緒にいたほうが楽だ」
そう言って、からからと笑うスノウの肌は病的に白かった。「おれ、病気なんだ」
「どんな?」
「血の巡りの悪くなる病気。こんな顔色だろ? みんな気味悪がる。だからおれは人一倍おどけていなくちゃいけないってわけだ。大変だろ?」
「そうか?」
「そうだよ」むっとして言うスノウをからかいたくなるアレック。ああ、そうか。
――僕にも人の心があるんだ。
「スノウはどうして、戦おうと思ったの?」
「そんなこと思ったことないよ。親が軍人なんだ。で、おれも軍人になろうと思った。理由はよくわからない。きっと考えるのが面倒くさかったんだ。今は好きな人が欲しい。ありのままの二人をそのまま愛し合える二人になりたい」
「妄想?」
「理想」
「死ぬの?」その顔色の悪くなる病気は、死ぬの?
「死ぬよ。人間なら、いつ何時、死んだっておかしくないけれど、おれはその時期がきっと早く来る。赤の他人よりほんの少し短いってだけの人生だ。正直、どうでもいい。うまいものが食えたらいい。やせていて、筋肉質な体だったらいい。女の子を抱けたらいい。なんなら、男だっていい。体温が欲しい」
「やけに初対面の人間に喋るね」
「酔ってるんだ。それに初対面じゃない。同期だ」
「話したことはない」
「でも同期だ」
「つながり?」
「違うよ。同期ってだけさ。つながりなんて。つながりなんて! ははは!」
「どうした?」
「お前って、寂しいの?」
「あはははは!」
「な、おかしいだろ? それとも、無理してるのか? お前、相当センスあるよ。ははは!」
二人は酔っているのを言い訳に、散々お互いをおためごかし、笑いあった。何も残らない吠えるような笑い。上官がいたら、絶対に怒られる。でもそんな人は今、ここにはいない。
「今がずっと続けばいいのに」
「ポエミーだな。日常なんて破綻の始まりさ」
「お前こそ、よっぽどだ」
「よっぽどなんだ?」
「詩的」
「ポエミー?」
「カタカナはあまり好きじゃないんだ」
「人間じゃないからか?」
時が止まる。沈黙? いいや、静寂だ。
「どうして」「いいや、すまん。なんでもない」「違う、いいんだ。続きが聞きたい」「続きなんてない。おれの勘は当たる。人間じゃないって、なんとなく思った。不自然なところもある。でもそれだけだ。お前が人間だって自分をそう思えるなら」
「なに?」「お前は人間だろ?」
僕は――
「人間じゃない」
「ふはは」「……ふふ。あはははははははは」
二人はこうして友達になった。
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