episode10 universe
森羅万象は私だ。私だけが私を知っていて、私だけが私を理解できる。貴方にはこのえぐみはわかるまい。貴方にはこのもどかしさはわかるまい。誰も貴方を知らない。でも私だけが貴方を知っている。なぜか?
それは貴方が私だからだ。現在進行形で物語は進行する。しかし、この現象を不可解と思うことはできない。この現象とは現在進行形を指す。人間が性交を愛の営みだとかセックスだとか、くだらない間違った表現をするように、私もこの物語を間違った表現で語り続けていた。改めて、私は貴方に問わなければならない。貴方は、私か? それとも、貴方は、私ではないのか。
人間の話をしよう。と、同時に有翼竜の話をしよう。どちらもそしてどの可能性も同じくらいに豊かで、分不相応で、無様で、汚らしくて、同時に気高いと思いたがる性質を有す。貴方がどちらかに属すかの話ではない。そんなことは得てして問題ではない。貴方は、貴方の思う貴方でいい。しかし、貴方はどこかで問われる。「自分」が貴方なのか、を。
貴方は生きていて、生きていない。貴方は死んでいて、死んでいない。貴方はふざけていて、ふざけていない。貴方は楽しんでいて、楽しんでいない。弾き語りをするように。始まる。
曝け出してごらん。と、貴方は言えますか?
世界の終わりを間近に控えた、この世界をサイボーグと翼をもつ竜に託さなければならない境遇を、憂いている我々に、何ができようか。これは私の話であり、貴方の話である。終わらない世界が、ただそこにあり続けることを、どこかで終わってくれ、と切に願う絶望。貴方に「それ」がわかりますか? 貴方には、わかりますまい。終わりある世界で生きる喜びを、切なる世界で生きる祝福を、貴方は知っている。貴方を呪いたい。貴方を笑いたい。貴方に幸あれ、と願う。でも。
でも!
物語は加速する。サイボーグは戦場で戦う。ドラゴンは一つの都市を蹂躙する。どちらも支配され、裸を抱えている。脱げない裸を抱えている。こんな世界があるから、弾き語りは優しく貴方の心に触れてくれるのかもしれない。貴方がどう思おうと、物語は加速する。これは弾き語りだ。モチーフは脱げない。裸の私と同じように。しかし、そこに存在する全裸の少年は、ソプラノの声で歌えるサイボーグだ。しかし、そこに存在する全裸の爬虫類だか鳥類だかわからないそれは、醜い翼をはためかせるドラゴンだ。世界は、終わる。だが、今、ではない。
その時を待とう。貴方が絶望するその時まで。
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