第81話・彼は何をしていたのですか?
「では我々はこれにて失礼致します」
「ガルム殿。大変世話になった。ジェーンを助けてくれて有難う。あとで礼をさせてもらおう」
「公爵さま。当然のことですよ。お気になさらず。ではジェーン嬢。お元気で」
「ありがとう。ガルムさま。皆さまにもよろしくお伝え下さい」
当然、皆の中にはギルバードも含まれていたのだけど、ガルムは分かりました。と、ほほ笑んで他の者達を連れて去って行った。わたしは父やスティールに促がされて城の中に入った。
「義姉上さま。捜索隊で保護されたとのことですが、夜はどうなさったのですか?」
「彼らの天幕で過ごさせてもらったわ。わたしだけの天幕を用意してもらってね」
城の中でスティールの問いかけの声が響く。この辺りは前もってガルムと打ち合わせしたとおりなのですらすらといい訳が出来た。万が一にもギルバードに助けてもらっただなんて、父やスティールに知れたなら余計な心配をされそうだし、未婚の男女が一夜を共に過ごしたとなれば不評を買う。その辺りはガルムがうまく誤魔化してくれたおかげで助かりそうだ。
「怖くなかったですか? 天幕の中とはいえ、森の中で……」
「大丈夫よ。ガルム様たちが寝ずの番で警護してくれたから何も怖くなかったわ」
「良かったな。ジェーン。有り難いことだ。彼らのおかげでジェーンの命が救われた。ガルム殿には感謝してもしきれない」
父がそういうのを聞いて、頭にギルバードが浮かぶ。本当は彼に助けられたのだけど。と、いう言葉は胸に収めたところでスティールが訝りの声を上げた。
「義姉上の捜索には、あのギルバードも参加していたのですよね?」
「そ、そうみたいね」
スティールの鋭い指摘にドキドキしていると、スティールは言った。
「彼は何をしていたのですか? あの中には姿が見えなかったようですけど?」
「彼も別働隊でわたしを捜していたようよ。ガルムさまは捜索隊を何組かに分けて指揮されていたようだから」
スティールもよく見ているものだ。わたしを送ってきた捜索隊の中にギルバードの姿が見えないようだが彼はどうしたのかと聞いてきたのだから。でもギルバードは、捜索隊の後ろに隠れていたから、スティールには気がつかれなかった様だ。
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