第67話・油断しました


 男達は鷹を一斉にこちらに放つ。迷いがない動きにオナリー達は苦戦を強いられた。わたしがいなければどうにかなっていたかも知れない。彼女達はわたしを庇っての反撃なので動きが少し遅れる。それを申し訳なく思っていると、どこからか鷹よりも一段と大きな鳥が飛んできて、鷹たちを蹴散らした。


「鷲……?」


 鷲は鷹を追い払い、わたし達から引き離す。


「これで戦いやすくなったわ」


 にやりと笑ったオナリーはびしびし教鞭を振るい、男達を伸した。手足のように使っていた鷹という武器が役立たなくなった事で、男達はオナリーたちの前に早くも屈した。男達は次々に拘束されてあと一人という時になって隙が出た。

 男は侍女らに歯が立たないと分かると、鷲から逃げ回っていた一羽の鷹を呼びつけ、わたしに目がけて放った。あと一人と油断していたわたしは、侍女たちの後方で所在なく立っていただけだったので、鷹がまっしぐらに飛んできて逃げようにも出遅れた。


「きゃあっ」

「お嬢さまっ」


 鷹から顔を守るために後ろに下がったら、足場が滑りやすくなっていてツルっといった。転落したのだ。わたしが立っていたのは川岸だった為、川の中に落ちた。


「お嬢さまっ」

「おのれ、ジェーンさまを」


 わたしを助けようと川へ身を乗り出すダリー。その後ろでリーズは男に飛び掛り、後の者達は川岸を走って川に流されていくわたしの身を案じていた。川の流れは思ったよりも早くわたしはあっという間に急流に飲まれ、川の中ほどまで流されていた。ドレスが纏わり付き、川の中で重くわたしの身に圧し掛かってくる。

 川は無情にもわたしの体から体温を奪うように荒い波をぶつけてきた。重い体を引っ張られる様にしてどんどん体は流されていく。


(これからわたしどうなっちゃうの?)


 早くも心は弱音を吐き、このままでは川の中に飲み込まれてしまうのが目に見えて悲しくなってきた。楽しいはずの鷹狩りがこんなことになってしまうだなんて。ギルバードは天幕の中で大人しくしてるようにと言ったけど、大人しくしていたって、狙われる時は狙われるんじゃない。ここにはいない元婚約者を心に浮かべて思い切り詰るけど、気力もここまでだった。

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