『社会不適合者集団』の『真の敵』とは

第21話 ちっちゃいことが意外と不便だと細目のねーちゃんは言った 『偉大なる中佐殿』の弱点

「じゃー誠ちゃん!とりあえず、ぶっ壊れて!『もんじゃ焼き』作って!『しもつかれ』を調理して!」


 屯所の『運航部』の部長席に『変』なのが座っていた。運行艦『ふさ』艦長だと名乗る『アホ』である。誠から見ても結構、美女で、デカくて目が細い。


 アメリア・クラウゼ少佐と言う細目の長身の美女の格好をした『馬鹿』が誠にそう言った。


「あんた等、本当に失礼な奴だな。死ね!」


 誠は本心からそう思った。屯所の『運航部』のこのでかい部屋は、彼女の『城』らしい。


 しかし、そこに他人を引っ張り込んで『ぶっ壊れる』ことや『ゲロを吐け』と望む人間は死んだほうがいい。誠は本心からそう思った。


「だって……誠ちゃん『ぶっ壊れて吐瀉する芸』が売りの『若手芸人』じゃん!『しょんべん』ちびったり、いきなり『気絶』したり、お得意の『ゲロ』吐いたり……『顔芸』はいまいちだけど……そう言う『暴走』ネタのキャラととらえてるわけ!私は!」


 誠を見つめるアメリアは笑顔で誠に『ぶっ壊れて吐瀉する』ことを期待していた。


 アメリアは完全に笑顔で細い目をさらに補足しながら突然咳払いをした。


「という訳で……一番、ツッコミどころ満載な人物である、『偉大なる中佐殿』について話しましょう!つーか、話す!聞け!ボケ!ぶっ壊れて泣き叫べ!そして吐け!」


 まったくその表情は変化しなかった。『アメリアと言う名の細目の女芸人』は顔芸のプロフェッショナルだと誠はそれなりに感心した。そして準備した胃の中の内容物を元の位置に戻した。


 そして、『偉大なる中佐殿』がどう考えても『平衡世界からやってきたバトル系魔法少女』だという誠なりの結論を思い出したが、誰も信じないので忘れることに決めた。


「大丈夫よ!アタシ『空気読んでる』から!」


 誠はアメリアが完成された『女芸人』であることを理解して黙り込んだ。


「まず!あのちんちくりんの持ち歩いている『拳銃』……ちょっと変わってるわけ!はい!『ぶっ壊れて』!『吐瀉』して!」


 さすがの誠もどう反応していいか困惑していた。


 誠は最初にランと出会った時、銃が入っているだろう『ホルスター』を誠に見せたことを思い出した。


 目の前の細目のねーちゃんは大きくうなづいた。


「はい!『壊れる用意』!『吐く』用意!そこに入っている銃は!あの!ソビエト連邦『PSMピストル』です!」


「ソビエト連邦『PSMピストル』?」


 誠はただ困惑した。『軍』に入って以来、一度も聞いたことが無い『銃』の名前だった。


「わかんないならいい!理由は簡単!手が『ちっちゃい』から!」


 誠の中で何かが壊れた。さらにアメリアはとどめを刺した。


「『偉大なる中佐殿』にとっては、銃の性能なんてどうでもいいのよ。手がちっちゃいんで、弾の口径もちっちゃいのじゃないと駄目。当然グリップは薄くないと駄目。それで一番、手にしっくりした『PSMピストル』を使ってるの。大人が握ると違和感を感じるほど『ちっちゃい』グリップが売りなんだけど……こんな売り、誰が喜ぶのかしら?」


 そんな理由で拳銃を選ぶ『偉大なる中佐殿』の、『偉大な』兵器思想が理解できなかった。


 それはただの『ちっちゃい』銃である。


 彼の最後の理性の安全装置が破壊された。


 誠の脳内では『魔法騎士』と化した『偉大なる中佐殿』が『フリフリのドレスに何か人形を付けた赤いベレー帽』をかぶり、『大きさが自在に変わるハンマー』を振り回して、『友達』の為に『闇』戦っている姿が想像された。誠の意識は半分そっちへ持っていかれた。


「……なんですか?その結論?」


 とりあえずそう言うのが精いっぱいだった。命の危険はない。どちらにしても誠の立場は変わり用ようが無い。永遠に『若手芸人』であることの宿命から逃れられない。


「うーん。言わない。『空気読んで』」


「『空気』……」


 誠はそう言って意識を脳内で再生される『バトル系魔法少女アニメ』の、『クライマックスシーン』方に九割がた預けた。

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