04
「すいませえん」
声が聞こえる。
「はい。ただいま」
小さなファミレスの店内。声はすぐ届くけど、ファミレス感を出すために呼び出しボタンを配置していた。もしかしたら、壊れたかも。
「おまたせしました」
「ごめんなさい。何回もボタン押したんですけど」
いつものカップル。延々とここにいるひとたち。
「あ、これ」
呼び出しボタンではなかった。
「あ、呼び出しボタンこっちのほうか」
「ほら。だから言ったじゃん。違うって」
「これは回収しますね」
何のボタンだろうか。忘れ物でもなさそうだった。
「ご注文は?」
「しちゅーください」
「おれもシチューお願いします」
「シチューふたつですね。かしこまりました」
奥に戻って、シチューをよそう。特製のシチューだった。人気も高い。
シチューをいつものカップルにお出しして。
厨房に戻る。
「それはなんですか?」
女性店員。訊いてくる。
「わからない。席に置かれてたって」
ボタン。
「なんか、いまどき珍しいですね。そんな、あからさまに押してくださいみたいな、ボタン」
なんとなく。押してみる。何も起こらない。
押したら、死んだ彼が生き返ったり。しないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます