03

「おい。生きてるか?」


 腹を、強く押される。その勢いで。嘔吐した。赤黒いものが、床に散る。


「ああ。くっそ」


 爆発に巻き込まれて、何か変な破片を呑み込んでしまっていた。吐き出された破片。まだ熱を持っているらしい。


「ありがとう。腹のなかから焼かれるところだった。熱いのはシチューだけにしてくれまじで」


 仕事仲間。ちょっと笑っている。


「爆発したときに、見事に破片が入っていったな。跳弾みたいに跳ねてさ。ストライクだった」


「冗談じゃねえよ」


 真っ直ぐ飛んできたなら、まだ避けられるのに。よりによって、天井にぶつかって、軌道を変えて突っ込んできた。頭に当たっていたら、死んでいたかもしれない。


「とにもかくにも、爆発はしたな」


 システムの誤動作で勝手にミサイル発射命令の出た空母を、まるごと破壊する任務だった。空母に異常があった時点で、任務は失敗扱い。自分と仕事仲間は死亡扱いになる。


「何発、飛んでいった?」


 空母にたどり着いた時点で。すでにミサイルの発射は回避できる状態ではなかった。飛ぶ直前のミサイルに回路を繋ぎ直して、飛んですぐ爆破させたときに。破片が飛んできて呑み込んだ。で、吐いた。


「一発は飛んだな。大丈夫かな?」


 仕事仲間。空を見上げている。


「まあ、一発ぐらいなら。他の空母が何とかしてくれるだろ。着弾までしばらくかかるだろうし」


 高高度攻撃型なので、いったん上の上まで行って、そこから落ちてくる。


「通信は?」


「無理。ミサイルの爆破もあって余計に無理」


 ステルスチャフ搭載型のミサイルだった。たぶん、この空母内ではレーザー通信程度しか外部と接触する方法はない。


「ミサイル発射ボタンぐらいか。いま動かせる電子機器は」


 ミサイルの撃ち合いに備えるため、外部であらかじめ空母からミサイルを発射するボタンを作ってあって。それは、レーザー通信だからチャフの影響を受けない。


 この空母のボタンが、なくなっていた。話によると、窃盗や強奪の類いではないらしい。


「ファミレスの呼び出しボタンにでもなってんのかな。ここの発射ボタン」


「かもな。もうここまで来たら、空母ごと爆破するしかない」


 すでに、甲板はさっきの爆発で粉々になっている。


「俺たちどうやって逃げる?」


 空母を壊さずにシステムを回復させ、それを使用して帰る任務だった。システム回復用の回路は、さっきミサイルに繋いで爆破するのに使ってしまった。


「どうしようか」


 次のミサイル発射命令が、来ているらしい。空母のなかで、またミサイルが運ばれていく。

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