02

 彼の死亡通知。

 べつに誰か人が来るとか、特別な様式で送られてくるとか、そういうことはなくて。

 普通に、朝仕事に行く前にポストを見たら入っていた、葉書が一枚。それだけ。

 上記の者、死亡したのでお知らせ致します。それしか書いていない。


 彼が死んだ。

 最後に逢ったのは、3日前。いつも通り、わたしを抱いて。行ってくると言って、部屋を出ていった。わたしはベッドのなかで、その声を聞いただけ。それが、彼の最期の言葉。


「どんな表情してたっけ」


 彼の表情。思い出せなかった。よろこんでいたのか、かなしんでいたのか。わからない。抱いているとき、顔が見えないからか。

 彼が死んだという事実。それがあるだけ。葉書には、官邸付秘書送付とか特務担当部署所属とか、よく分からない肩書きが並んでいた。彼の仕事。最期まで分からなかった。

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