第四章"STARDUST"─11(終)
「鈍り続けているだと・・・応答しろ、俺の
追い詰められ続ける現人神は、これ以上なく無敵であることから離れてくる。
現人神の落ち度はほとんど無かった。
あったとしても直ぐに
故に原因な
そこで恐らくは詠金優人を通じて何かが起きて、大源と現世の間に願いの乖離が起きたのだろう。
そして、聖都につく全員の動きが鈍り、味方が減ればへるほど、スカイライトの動きが集中的に動けなくなってゆく。
「私には、詳しい事までは分かりません。」
少年の声により心の奥底から奮起したネネカは、しかし淡々と言葉を発する。
「けれどお前の言葉がどれだけ真実でも、魔法のランプを預けて産まれただけでもういい、なんて都合のいいモノを用意した報いじゃないんですか。」
「ならばそれも含めて修正するさ・・・それが叶うならば・・・!」
ああ、仮にそれだけならば良かったのに。
違う、違う。
それだけなはずが無い。
叛逆程度ならば、いくらでも手が打てたのに。
答えは、ようやく返ってきた。
『・・・お前は全て正しかったよ、
けれど、俺は会ってしまったんだ・・・彼女にな。』
「────────」
ああ、そうか。
かつての、そうあの日の蒼空光実が彼女と出会ってしまったのならば・・・。
「くくっ、はははは。なるほど愛か────」
凛々しく立ち向かうネネカを迎えうちながらも、しかし確実にもう迎撃すらままならなくなった己に敗北が襲いかかる感覚に浸りながら、スカイライトは苦笑を零す。
愛、愛とは・・・なるほどまったく。
「ならば、ああ、仕方ないな。」
他ならぬ己もまた蒼空光実が故に、彼女が確かに存在した事実が絶望の淵から立ち直れるように。
結ばれた恋した相手の一途な思いに、いつの時代も勝てないから。
自分の唯一の愛が現人神にとって、この世の何と比べても納得できる敗因だった。
ゆえに────迫る少女の心臓への拳にも、穏やかな視線を向けるのみ。
その瞳に今まで歩んだ二千年間で積み重ねた、万感に至る想いを宿して。
「今の絆と、自分の身と心を、大事にしなさい。
おまえの生涯に、どうか普遍な幸福がある事を祈るよ。」
それが少女に
「え────」
勢いは止まらず、拳は心臓部に届き。
刹那、聖都は眩くそして優しい光が広がる。
ネネカは戸惑う、あの穏やかな視線と言葉は今度こそ真実だと感じられた、だからこそ・・・。
しかしそれに対する答えを待たぬまま、ネネカの、いいや─────聖都全員の意識を奪った。
「・・・ああ、負けちまったな。」
渾身の、心臓への一撃は致命傷だった。
いま、聖都にいる全員の意識はないはずだ。
これにて、蒼空光実は完全に一人に戻り、いま彼は聖都の自分が住まう部屋に来ていた。
いま聖都には、
核である蒼空光実による、権限の放棄による崩壊の副作用により、余波で全員眠りについた。
そう、たったそれだけだ。
今回の祭りで巻き込まれた全員以外にも、昔から入れられた人もまた存在する。
当然、傷だらけのままの者も当然いるだろう。
そんな皆を、夢の終わりだぞとただ放すのは余りにも無責任だ。
現実はより悲惨な末路を辿るだろう。
だから、既にスカイライトは────いいや、蒼空光実は備えていた。
恐らくは現れるだろう本気の
ピースには個人的な手紙を任せたが、それはまた別の話。
更に、聖都の住人や古くから
これで新たな環境で過ごす負担も最小限となる。
さあ、最後だ。
蒼空光実として、せめて失敗した後に遺せるすべてを遺して逝こう。
厳重な鍵で閉められた、机の棚を開く。
それは1500年も前に貰いながらも、しかし一切の埃を被らせなかった、
先程並べたすべてをやり遂げるには、
そして、遺産は護符・・・祈ればそれは形になる。
本物ではない、しかしそれは彼女との別離になってしまった銀の銃。
最大の治癒力は本物には及ばないものの、込めた魔力により範囲は本物を凌駕する。
「これ位はしないと、本当に希望がなくなっちまうからな。」
目を閉じ、永きに渡り歩み続けた旅人の末路を祝福するように引き金を引いた。
超過した魔力は心臓を貫いて、そしてそれは星屑の光となって・・・
聖都すべてに、降り注いだ。
いま現在残る、聖都のみんなはこの光によって傷の総てを癒した。
蒼空光実の身体は、徐々に星屑のような光となって散り始める。
椅子に座り、ただじっと目を閉じて、終わりの時を待つ。
「・・・本当に、長かった。」
こんな、どうしようもない成れの果ての朽ち果てた男でも、ここまで来た。
そして、止めてくれたみんなへ感謝の念は止まらない。
そして──────
「ありがとう。」
灰のような星屑は、全て光になって空に。
永遠の別れを告げて、蒼空光実の痕跡は灰も残らず消え去った。
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