第四章"STARDUST"─4
「本当に、これは手強い。」
「・・・隙も、少ない。」
タフィーと厄魔は突入の開始と同時に敵部隊に速攻をかけた。
他の群の仲間も同じく、騎士相手に迫るが大した傷は負わせられない。
この役割において、相手の騎士たちも含めてタフィーは飛び抜けて強い。
だがこの部隊戦において、個人の強さは全てではない。
タフィーが手強いと分かると、孤立しないように相手が動く。
それは同時に、乱戦中の厄魔による不意打ちをも防いでいた。
「でも、これでいい。」
タフィーは断ずる。
速攻かけたのは、騎士たちの統率を少しでも崩すため。
これほどの練度のある相手を都合よく片付けられるとは欠片も思わない。
「行って、三人とも。」
「「「了解・・・!」」」
狙いは、レイジとソラリスとネネカの突破。
この先にいる、この戦場の要である
ここで消耗しては勝ち目はないと踏んで、タフィー達は強引に道を切り開いた。
狙い通り、三人は騎士たちの壁を超えて駆けて行く。
騎士たちは追わない、追えば孤立したところを端から叩かれると分かっている。
騎士たちはタフィーたちと、自然に戦闘続行する。
「手強い、けど・・・!」
二人がかりで、槍を使い人数とリーチで制してくる。
お手本のような時間稼ぎ、故に厄介だがしかし───
「リーチに押されるくらい、慣れっこだよ・・・!」
小柄な剣士であり、手練であるタフィーは大胆に踏み込む。
懐に入られると理解した騎士たちは足を出して蹴りで迎え打つが、これも想定通り。
「そこ・・・」
「・・・」
更にくぐり抜け、背後に回って後ろから突き刺す。
もう一人はこの期を狙った厄魔が忍刀で突き刺す。
ようやく、二人仕留めた。
強引に詰めて、ようやくだ。
これで手の内はバレた、次からこうは上手くいかないだろう。
冷や汗一つかいて、息を整える。
お陰でいい目覚めになりそうだ。
「・・・眠気は来ずに、済みそう。」
剣を握りしめる手を、緩める暇は無いのだから。
「来たか。」
レイジとソラリスが向かう先、一人の人影が出迎えた。
ここに来るのを分かっていたかのように、そこに立っていた。
不気味なほど水面のように整った静けさで、分かっていながら何故、対策をしなかったのかと言いたそうな二人に、やはり感情抜きで答えるのみ。
「何故とは聞くな、主の命だ。
そして────」
スラリと、刀剣を抜いた。
初志貫徹、陰りなく。
殺意すらなく、ただ刃足らんと視線を向ける。
「────神敵必滅、断ち切るのみ。」
「会話すらなしか・・・!」
レイジは剣を、ソラリスはレイピアを構える。
何の感慨もなく、速やかに戦闘は始まった。
その瞬間──────
「「ッ─────」」
煌めく斬閃、それが二人の首を掠めた。
目で追えない、なんて可愛いものじゃない。
少しでも前に出ようものなら、今頃これで終わっただろう。
牽制のみでも、それは絶技。
ひとたび放てば、それだけで無双。
「・・・強い。」
ソラリスの呟き、それにレイジは言葉なく同意する。
たった一太刀で理解する。
1000年に1度の鬼才とはなんたるかを。
それでも二人でデイビッドに立ち向かう。
経験を積んだ連携で、剣とレイピアは嵐のように攻撃が放たれる。
レイジの重く、疾い斬撃。
ソラリスの鋭く、正確な突き。
鍛錬と才能からなる連携に、流石の
「見事、流石は黒の剣士と無敗の少女。
これまで戦った中では上位の厳しさだ。」
その言葉に嘘偽りはないのだろう。
その上で、汗ひとつかかずに粛々と受け流す。
「俺たちの事を知っているのか!
だが・・・!」
「褒められてる気はしないよ!」
より連携は苛烈さを増す。
休みない連携でついに万事休すかと思われたがしかし。
「────見切った。」
「はッ・・・くっ・・・!」
「ソラリス!」
ほんの、寸分の隙間に最初に浴びせた斬閃が迫る。
片腕を飛ばされるコース、寸前で躱す。
されど傷は負い、腕から血が流れていく。
しかし手傷を負わせた程度で止まる男ではない。
「貰ったぞ、黒の剣士。」
「くっ、おおおッ!!」
「レイジ君・・・っ!」
一歩下がったソラリス。
五月雨のような8連続をレイジに向け、必死に食らいつくようにレイジもまた防御を主に斬り合う。
頬を掠め、脇腹を裂き。
削られるような傷を負うレイジを見て、堪らず前へ踏み出そうとするソラリスにも、ついでのように1つの斬閃が掠める。
「くそっ・・・!」
ソラリスにあわせ、レイジも下がる。
まるで隙がない。
攻めも完全だ、息を吸うことすら惜しい程に容赦の一切がありやしない。
「確かにやるが、しかしそれでは少々期待ハズレだ。」
「なんですって・・・!」
静かに構える
それが何となく伝わるからソラリスは苛立つ。
「貴公らは此度の戦場において最も期待される希望だろう。
その希望が、運命が、勝ちを見出す術はそれこそ心だろう。
貴公らが今まで事件を解決して来た時と同じように、そうするがいいだろう。」
「ふざけた理屈を言ってくれるな!」
心無き刀剣の言葉が、酷く軽々しく聞こえたものだから、再び二人で攻撃をしかける。
それでもやはり届かず。
「でなければどうする。まさか、ただ斬滅されに来たわけでもあるまい。」
剣で受けず、体で躱して距離を取る。
そして次の手を打つべく、構えを変えて───
「悩む暇は無いぞ、選ばれた剣士よ。」
「「なっ──────」」
見覚えがあり過ぎる構えから、見覚えがある斬撃。
驚きはしたが、それはそれ。
何とか無傷で受け流してみたが、やはり驚きは隠せない。
なぜなら。
「レイジ君の構えと、攻撃・・・!」
「何でお前が・・・!」
レイジの剣技など、直接教わる機会などありはしない。
誰にでも分かることだし、デイビッドもまたそうは言わない。
何故なら、理由はとても簡単であまりに無体だから。
「便利そうだったのでな、見て覚えた。
そう、俺にとって剣技とはそんなものだ。」
二人は息を呑んだ、訳が分からない。
必死に身体に叩き込んだ剣技を、僅か数回見切っただけでその一部を使えるなど馬鹿な話があっていいはずが無い。
だが
才能、環境、指導者、経験。
あらゆる総てが完全であるが故の結果。
これはただ刀剣にとって殺しやすい方法を使っただけに過ぎないのだ。
ただ、総合力で二人を相手とって凌駕しているだけのこととなる。
戦況は膠着状態。
レイジとソラリスは、
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