第四章"STARDUST"─3



「先に言っておこう、デイビッド=ウィリアムズは必ず二人以上で挑むように。」



驚くほど静かな、聖都周辺。

作戦参謀のピースは、これから行く群の面々にそう告げた。

ここから先はもう彼ら次第だ、だからせめてもの忠告として。



「・・・理由は。」

「彼が遂行絶剣ブルンツヴィークだからだ。

理由はそこで完結している。

ネネカ、君は一度彼の剣を見ているはずだ。」


寡黙な厄魔は、簡潔に理由を求める。

ピースはそれにやはり、簡潔に理由を語る。

論より証拠。帰ってきた二人のうち一人であるネネカは、ゆっくり頷いた。


「彼の剣は、一太刀でわかりました。

正直、目で追うことがそもそもの間違いです。

剣士として、非の打ち所が無いと言って良いと思います。」


あの研ぎ澄まされた、刀剣そのものだった演舞を忘れない。

明らかに異質だし、そして完全だ。

情報としてより、戦士としての見た感想の方が、信憑性以上に納得がいく。


何十人といるが、メインとして向かうのはネネカ、タフィー、レイジ、ソラリス、厄魔。

今回の条件下では文句なしのメンツでありながら、ピースからの忠告は確かに受け取った。


「なら、俺とソラリスで行かせてください。」

「私たちは死神相手に連携してますから!」


二人以上ならば、連携の経験がある者が適当だろう。

それが分かっているレイジは名乗りを上げた。

ソラリスも同様に、実績を立てた上で言う。

誇る訳では無い、ただ任せて欲しいという使命感からだ。


ピースは頷いた。

これ以上の適任はいないだろう。

で、あれば───


「ぼく、他の騎士たちの相手をする。」

「数が多いと聞く。拙者も同じく。」


そう、相手はデイビッドだけではない。

精鋭中の精鋭である聖騎士を初めとした部隊もいる。

これもネネカが言ったことだが、敵は一人一人が厄介だと言う。

確かに帰還した彼女だが、誰一人として仕留められなかったこともまた事実であり、これもやはりと言うか論より証拠である。


そして、メインとなる戦力は残りただ一人。


「スカイライト=ヴェラチュール。

あの人は、私が速攻をかけます。

それが出来なければ時間稼ぎを、彼に指揮をとらせません。」


ネネカなりの役割を述べる。

誰も反対はしなかった。

首級をとるか、先に取り巻きを潰すか。

それはそれこそ、やってみなければならない。


急な事態に急な編成。

付焼き刃なのは間違いないがしかし、やるしかないのも事実だ。


なぜなら───


「ほら、こうしている間も新天地アースガルドは拡大している。」


膜の外にいるというのに、その膜は近づいてくる。

それはつまり、徐々に大きくなっていることに他ならない。

対応は迅速に、そうでなければ手遅れになるのだから。


「では、作戦開始だ。

無事を祈ろう。」













「報告です、我が主君よ。

群の精鋭、到着致しました。

これより突入してくるようです。」

「ご苦労。予定通りに配置についてくれ。」


騎士の報告を、現人神ただ受け止める。

ようやく始まった革命。

その壁が一つ、襲いかかるのだ。


不敵に笑いながら、傍に使える現人神の右腕に目線を向ける。


「行くぞ、我が神剣ブルンツヴィーク

運命を迎えにな。」

「御意。」


いつもの通りに、デイビッドは応える。

同時に、騒がしくなる。


彼らが来たのだ。


新天地アースガルドの下、決戦は始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る