第三章"星を導く者(スフィアブレイバー)"ー5
作戦は完了した。
ネネカとマリア、そして配下たちを除き、この聖都にいた全員は
今頃彼らは、眠りにつきながら魂を
脳裏にある記憶と想いをダウンロードし、そして同調する。
二千年かけてひとまずの完成を経た、空想世界─────否、天地無限創造魔法の準備は完遂した。
この偉業は、スカイライトにしか行えない。
誰にも託せない。
何故なら、この魔法を実践出来るのはスカイライトの祈り以外に有り得ない。
「見ているか、■■■────俺はようやく此処まで来たよ。」
最も愛した彼女へ、ノイズ塗れで聞こえぬ名前を呼んで。
現人神はようやく悲願のスタートラインに立てたのだと自覚する。
「俺は行くよ。
"勝利"とは、愛しい誰かに出会えること。
その素晴らしさと喜びを、世界に示してみたいから。」
『ああ、それが俺たちが選んだ運命だから。』
真っ白な、何も無いセカイで同調するように少年に近い青年は言った。
それは
元々、仮想世界とは使用者の祈りにより実現するもの。
そしてこの
仮想世界内と現実に、何故別れているのか。
それは、■■■との間に産まれた娘が独り立ち出来たその日に、かつての弱い過去の自分の心を切り離したから。
そして、その切り離した過去の青年こそがスカイライト────否、蒼空光実の
その
魔法も奇跡も、みな等しく。
中枢に入り込んで破壊する、という手段を取る事は不可能なのだ。
無論、現実にいるスカイライトが死ねば
だがそれも、二千年の経験値を元にしたありとあらゆる行動でそれを許さない。
スカイライトは強力だ。
だかそれ以上に無敵で、最悪なのだ。
今の結果が、それを示している。
『始めよう、
「ああ、今こそ────。」
想いに耽るのはこれまで。
スタートラインに立ったばかりの己自身に喝を入れて、再びあの広場に立っていた。
さあ今こそ─────新たな星を描いてみせよう。
『「天創せよ、我が神星――鋼の
刹那、現人神の宣言にこの聖都の世界法則は揺らいだ。
この大きな笑顔にする花を、新たな宇宙として胎動させる為に。
「天地創造、万の種族、果て無く広がる
我らが産まれし森羅の秩序が不朽と照らす。袂を分かった今でさえ、この世界の繁栄を認めざるは得ないだろう」
ああ、遥かな
ただ一度、現人神は純なる感謝と畏敬を示そう。
そのどうしようもない現実を、それでも作り出してくれた。
それは紛れもない偉業であると、讃える想いに嘘はない。
そして人々もまた、満場一致に至れないが、だからこそ世界は存続してきた。
感謝を忘れたことなど、ありはしない。
ありがとう、頭が下がる。
よくぞ今まで世界を守り続けてくれた。
先祖代々、自分たちよりずっと昔に生まれたもの達から隅々まで"蒼空光実"は真摯に讃える。
そう、故に────
「然れば、現世を生きる
故に、"スカイライト=ヴェラチュール"は 現世では決して掴めない新たな森羅を描くのだ。
誰も彼もを救うべく、前人未到に手を伸ばした。
「いざ来るがいい、聖なる地へ。たとえ勇者にあらずとも、我が黄金の宮殿は遍く祈りを歓待するのだ。奈落の底から浄土まで、殿上人から貧夫まで。
此処に、真の聖都に、救済の条件など一切ない。
強きも、弱きも、上も、下も、狭間も、或いは異なる例外さえ。
今は仮に不可能だとしても、必ずや分け隔てなく掬い上げると誓っていた。
融和と対話を重んじながら、差別と暴力を容認しつつ、同時に共存させるという無理難題を形にしよう。
「苦難の夜はもう過ぎた――万有、残らず世界を描く
不可能のまま終わらせない。
その為に挑み続けた二千年。
永きを費やし紡ぎあげた確たる
さあ────。
『篝火を胸に、我が心は此を以て飛翔する。
無限に広がる地図を手に、空と海の境界線を描いた旗を掲げよう。』
中枢の
天よ轟け、地よ叫べ────そして人よ、いざ往かん。
「───
「
創生────
万象を超越すべく、新たな秩序を創造した。
花はより一層大きく成り、咲き誇る。
黄金の膜が、聖都全体を覆った。
その膜のもと、あらゆる魔法も奇跡も、或いは別の力さえも認めない。
魔族や竜族は、その中に入れば身体を動かすことは許されない。
その力を、根こそぎ奪い去ってゆくから。
人間、翼人、獣人の、魔力も奇跡も例外も、一切用いない行動だけが許される。
「済まないが、力づくが過ぎれば迷惑するのは他人でな。
頼むから、これをどうにかしようとしてくれるなよ。」
完成を中心で見届けるスカイライト。
そう、この膜はとても脆い。
魔力、奇跡、例外でさえ。
強い力が内部からも外部からも干渉した瞬間、
取り込まれていた人々は、一瞬で消え去るだろう。
だがこれは、敢えてそういう設計にしたのだ。
下手な手を打つなよと、
だからもう直ぐ、現人神の目的に気づくだろう。
もし、それでも。
知ったことじゃない、気に食わない、みんな死んでしまえばいいという悪辣な連中がいることも理解している。
そういう連中をどうするか?
決まっている。
「もう暫く、
心苦しいが、スタートラインではまだこれが限度なんだよ。」
英雄や流星、聖剣使い等のみんなの味方が防波堤になる。
当然、各国の軍隊等も引っ張りだこだ。
現れるかもしれない災厄に、身構える他ないだろう。
だから、聖都には強者は現れない。
予め、そうなることを狙っての設計だった。
あまりに無体に、手を打っている。
力づくを封じ、これが最適解なのだと示して見せるまで。
ああ、それでも。
「来るんだろう、おまえたちは。」
一部の条件を満たした者は、必ずやってくる。
確信をもって、現人神は覚悟を決める。
「引き続き頼むぞ、デイビッド。」
「御意、現人神の御心のままに。」
静かに見ていた
「来るがいい、俺は挫けない。立ち上がるさ。
深い希望も絶望も、重ねた全部が俺の力だ。」
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