第二章二節"開花"─2


いまマサトは、試練を受けていた。

一人はレイゴルト、一人はブラン。

手加減しているとはいえ、マサトはこのふたりの攻撃を凌いでいた。


レイゴルトもブランも、木刀一本で枷ありだが充分に脅威。

才能があるとはいえ、二人分の攻撃を凌ぐには、マサトという少年は幼すぎた。


やがて耐えられず、壁まで弾き飛ばされる。


『立てッ!自分の身を護れないで、誰かを護れるかッ!』

「は、はいっ!!」


それを、詠金は甘やかさない。

さっさと立て、続けろと。

何度ぶっ倒れようが吼える。


その姿を見て、レイゴルトもブランもただ黙って応え、試練であり続ける。

ついでに、この二名が刀の守護霊である先祖、詠金に驚かないのには理由がある。




スノウには、自己防衛の霊である"雪時"という者がいる。

ご先祖さまでもなく、自己防衛の為。


それを知ってるからか、今更先祖が化けて出る程度では彼らはもう驚かなかった。


むしろ雪時のどうしようもなさに比べれば、詠金のマトモさには感涙モノである。

レイゴルトやブランで無ければ、間違いなく涙した・・・かもしれない。


閑話休題それはそれとして



黙って試練となっているレイゴルトとブランだが、何も感じてないという訳では無い。

最初"二人がかりで攻撃し続けてください、僕は躱します"と言われた時は正気を疑ったが。


(なるほど、確かに目を見張るものがある。)

(こいつ、視野が広いんだ。)


レイゴルトが感服し、ブランは納得する。

最初こそ身体が追いつかずどうしようも無かった。パワー負け、スピード負け、耐えられない場面は多々ある。


それでも、徐々にだが護りが上手くなる。

それはマサトの才能である気配の読み取りを磨いている成果、だけではない。

常に周りの状況を読み取ること。


二人の攻撃は無論ながらワンパターンではない。

その上で、マサトは徐々に二人の攻撃をする。

だから攻撃しようとした時にはもう、防御されている事が徐々に増えてきた。








休憩にて。


「凄いな、あんた。」


ブランとマサトは、隣で座り込んでいた。


「ブランさんに、ぜーっ、ぜっ、ほめっ、られたなんてっ、ぜはーっ、おもわな」

「落ち着いてから喋ってよ。」


マサトは疲れ果てていた。

当たり前である、普通なら気絶するなりギブアップである。

それでも頑張っているのは凄い、が。

流石にその息がとんでもなく乱れた状態で喋るのは問題だった。


「・・・すみません、褒められるとは思わなくて。」

「褒めるよ。褒めた方が育つって聞いたからら。」


一息ついて、お喋りが始まった。

ブランの言葉に、そうなのかな、とマサトは疑問符を浮かべている。


「俺はそんなふうに周りを見れないから。」


羨ましいのか、或いはそうでないのか。

ブランは真っ直ぐにマサトに向けて言った。

彼は嘘をつかない。というより、嘘をつけない。

だから素直に嬉しかった。


「旅が、出会いが、僕をそうしたのかな。」


そうかもしれない、と自分で納得する。

ブランはそれを聞いて、再び口を開く。


「俺は変われるかな。」

「大丈夫、だと思います。」


保証はないけれど。

でもきっと、そう望むならいつか。

少しづつ、少しづつ、明確に目標を決めて歩けばいつか。

それは遠い道のりかもしれないけれど。


「・・・そっか。」


ブランはひとまずの納得を得て、立ち上がる。

マサトはそれを見て、時間が来たことを察する。

レイゴルトも戻ってきた。


マサトは立ち上がり、二人に頭を下げる。


「続きを、よろしくお願いします!」



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