第20話「その恋、片思い?」
「レキ、待たせたな」
肩にトビカゲを乗せたユートは、片手を上げて姿を現した。レキの予想通り寝ていたのか、少しばかり眠そうな顔になっている。そう感じた瞬間、レキの前に立ったユートは欠伸をし始めた。
「ユート、眠いの?」
「仮眠し過ぎてな。まぁ少しだけだし、何も心配は要らない」
「ん、大丈夫。レキはユートの妻だから、無駄な心配なんてしない」
「誰がいつお前と結婚したんだ?」
「一生守ってやるって、ユートはレキに言ったよ?」
レキの言葉に眉を顰めたユートは、溜息混じりに後頭部を掻いた。照れている訳ではなく、レキの発言に対して呆れている様子である。
「俺は俺が死ぬまでって言ったんだ。一生なんて言った覚えはねぇぞ」
「ユートは死なない。だから一生と同じでしょ?」
「過度な期待なんてするな。俺もお前と同じ普通の人間だからな、死ぬ時は死ぬ。高望みなんてしてたら、この世界じゃ生き残れないぞ」
「分かってる。だからレキもユートを守る為に頑張ってる、ほら上手く出来てるでしょ?」
「……」
そう言いながらレキは、ユートに組み立てた銃を手渡した。先程まで試射していた銃だが、手渡したと同時に全弾装填された弾倉も一緒に渡される。それを装填したユートは目を細め、ゆっくりレキが指差した方へと射線を向ける。
数メートル離れた位置に壁があり、そこには簡易的な射撃訓練場が広がっていた。その奥に人型の的があり、それに狙いを定めてユートは銃の引鉄を引いた。
「お見事……ね、ちゃんと役に立ってる」
「問題無いみてぇだな。相変わらず、お前の銃知識は頼りになる」
「うん、もっと褒める。出来れば頭を撫でるとレキは喜ぶし、もっと頑張る」
「はいはい、お前は凄いよ。頑張るのも良いが、程々にしておけ。いざって時が来たら、戦えなくなって困るのは勘弁だからな」
ユートにとっても、組織にとっても、レキという存在はとても大きいだろう。銃を管理している事もそうだが、手入れや改造を施している事が出来るのはレキだけだ。
武器管理と補充、そして改造……その全てに携わっているレキは、どの存在よりも優先すべき存在かもしれないだろう。いや、もしかすればリーダーとして率いているユートよりも守るべき存在と言っても良い。
そう思っているユートだったが、それを薄々感じ取ったのだろう。レキは不満気な表情を浮かべながら、頭を撫でられつつも告げたのである。
「違うよ、ユート。レキはあくまでおまけ」
「そんな事無いだろ。お前が居なきゃ、ロクな武器の取引も出来ないしな。アンダーグラウンドで他の奴等と取引出来るのは、お前が色々と知識を取引材料にしてるからだ。お前が居なかったら、ここまで戦えてねぇよ」
「……そう?」
「あぁ。勿論、知識もあって戦えるんだからな。正直、お前が一番敵に回したくねぇよ」
「レキはユートの味方だから、敵になんかならないよ」
クスリと笑みを浮かべたレキは、少しだけ離れてその場で一回転した。下から覗き込むように屈めたレキは、悪戯する子供のように口角を上げたまま言葉を続ける。
「レキはユートの妻になる女だから。レキの命はユートの物だよ」
「フッ……責任重大だな。つかそういう事は、本当に好きになった奴に言うんだな」
「むぅ……好きなのに」
「はいはい」
レキの言葉を受け止めず、ユートは銃を仕舞って歩を進め始める。その後ろで不満気な表情を浮かべたレキだったが、すぐに口角を上げてユートの背中を追った。
BLACK HOUNDS~小さき戦士達の軌跡~ 三城 谷 @mikiya6418
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