第19話「レキ、銃を想う」
ユートがテントで眠っている間、武器を全て保管している格納庫に足を運んでいた。忍び込もうという考えが頭を過ぎったが、レキは格納庫にカードキーを通して入口を開ける。
中にはズラリと並べられた銃に視線を向けつつ、ユートに頼まれた武器の場所まで足を運ぶ。やがて奥の扉にある部屋に入ったレキは、ニヤリと笑みを浮かべて作業台の上にある銃を手に取った。
「ユートの銃……凄く良い」
銃を頬に添えたレキは、艶のある表情を浮かべて目を細める。微かに重たさと冷たさを感じつつ、頬を赤く染めながら銃を作業台に戻した。指先で銃身をなぞり、口角を上げて微笑んでいる。
『レキ、レキ、キゲンイイ?』
「あ、トビカゲ」
そんなレキの嬉々としている様子を遮り、小さな鳥がレキの肩に乗った。首を傾げつつ、キョロキョロと周囲を見渡しながらレキの肩から机の上に移動する。
それは小鳥を模したロボットで、レキが片手間に作ったロボットだ。知能的には人並みで会話は成立するが、多くは会話出来ない曖昧な仕上がりとなっている。しかし、作業中に会話をするのであれば、多少の暇潰しにはなるのだろう。
「機嫌は悪いよ。アサギと決着が着けられなかったし」
『レキ、アサギ、カテナイ?』
「冗談、レキは勝つよ」
『レキ、アサギ、ドッチ、ツヨイ?』
「勿論、レキ。これは譲らない」
『レキ、ツヨイ。ヨカッタ、ヨカッタ!』
羽をバタつかせるトビカゲは、自分の事のように嬉々とした様子だ。その様子を見つめていたレキは、口角を上げてトビカゲの頭を指先で突く。少しだけよろけるトビカゲの様子に笑いつつ、組み立てた銃に弾を一発装填する。
カチャリと音を立てたレキは、壁に向かって一発だけ放った。その音に驚いたトビカゲは、室内を飛び回って本物の鳥のように慌てている。そんなトビカゲの反応を無視したレキは、目を細めて溜息混じりに肩を竦めた。
「反動は無い。けど、威力が不十分。これじゃユートの足を引っ張るかも」
『ダイジョウブ、ダイジョウブ……レキ、ウマカッタ。マト、アタッテル』
「当たってるのは当然。レキの腕は、アサギ以上……」
銃口から宙を舞う煙へ息を吹き、銃を机の上に置いてトビカゲを見つめる。壁に埋まっている弾丸に首を傾げ、微かに飛び出てるか確認したが……抜けない事が分かるとレキはジトッとした目で溜息を吐いた。
「トビカゲ、ユートを呼んで来て?」
『ユート、ヨブ、リョーカイ』
「ユートはいつものテントに居ると思う。寝てたら起こして良いよ」
『ワカッタ、ワカッタ!』
そう言ってトビカゲは格納庫を飛び出して行き、ユートの居るテントへと向かって行った。その様子を見送ったレキは、格納庫の中で足を運んだ。飾られている武器も含め、分解されている武器を見つめる。
既に使えなくなった物もあれば、未だに使う事が出来る部品もあるのだろう。銃自体が、綺麗な掃除されている物と掃除されずに放置されている物があった。それを使えるようにするもしないも、格納庫を管理しているレキの手腕次第。
「銃は裏切らない……」
そんな事を呟いたレキは、箱に入った銃や部品を漁りながらユートを待った。その表情は退屈そうで、虚無感に包まれている状態だ。
しかし数分後に姿を見せたユートを見た瞬間、レキはガラリと変わった雰囲気で腕に抱き着くのであった。年相応の無邪気な子供のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます