アンダーグラウンド編
第11話「束の間の平和 ①」
小型バグとの戦闘から二日が経ち、ユートは市場へ訪れていた。
地下に作られた街の名は……アンダーグラウンド。絶命世界となってしまった地上から地下へ潜り、下水道や地下鉄道、あらゆる地下空間で生活出来るように人々が創り上げた世界。
その世界は地下鉄道を軸に複数の区画に分かれており、東京地区にあるアンダーグラウンドは市場として賑わっている場所もある。地下数メートルという位置にある事で、ある程度の喧騒は地上へ響く事は無い。
地上と比べれば比較的には安全だが、決して油断する事は出来ない。だが、それでも生きる為に必要な物は揃えなくてはならない。
この腐り切った世界を生き抜く為には、どんな事でも出来る事は行動に移す。それがこのアンダーグラウンドでの最低限のルールとなっている。
「今日は何を買うの?装備だって充実してたはずだし、食糧も結構あったはずだよ?」
「どうして着いて来てるんだよ、お前」
「ユートは病み上がりでもあるんだから、あたしが着いてなきゃでしょ」
そんな場所に訪れていたユートの後を追い、行動を共にしているアサギは「えへん」と腰に手を添える。ドヤ顔を浮かべている様子を見て、ユートは溜息混じりに足を運ぶ事にした。
「あ、ちょちょ……置いて行こうとしないでよ」
「どうせ勝手に着いて来るだろ」
「流石、良く分かってる。それで?ユートは何を買いに来たのさ」
無理矢理に着いて来るアサギに対し、ユートは無視したまま足を運び続ける。ユートの態度に不満を覚えたアサギは、ニヤリと笑みを浮かべてユートの腕に抱き着いた。
「無視するなんてヒドいなぁ、ユートは」
「気安く抱き着くな、歩き辛い」
「せっかくのデートなんだし、これくらいは許してくれても良いじゃん?」
「何がデートだ。くだらない事言ってないで、さっさと離れろ」
「っもう、ノリが悪いなぁ」
抱き着かれた腕を振り解き、ユートは足早に歩を進める。そんなユートの背中を見つめ、アサギは肩を竦めつつも隣に並ぶ。拒否されたとしても、アサギの辞書には「諦める」という文字は無いのだろう。
そう思ったユートは、溜息を吐いてから口を開いた。
「新しいナイフと銃を探しに来たんだよ」
「武器を新調するの?どうして?」
「この間の戦闘で、弾を全部使っちまったしな。それに銃をバグの口内に突き付けたから、唾液塗れになっちまってんだよ。あれじゃもう使い物にならねぇからな」
「あぁ、なるほどね。んじゃあたしも一緒に探してあげるから、あたしの買い物にも付き合ってよ」
後ろ手に組みながら、ユートの顔を覗き込むアサギ。そんなアサギの言葉を聞いたユートは、眉根を寄せながら渋々とその提案を了承するのであった。
「仕方ねぇな。邪魔だけはすんなよ?」
「はいはーい」
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