第9話「バグを率いる少女」

 この青く綺麗な星は地球と呼ばれ、人口も多く豊かな土地だという噂は聞いていた。その噂が真実かどうか、真実であるならば欲しいと私の父は願った。

 それが事の発端であり、今の状況に直結しているのだろう。土地豊かであった地球の大地は、私達が辿り着いた事によって荒廃した大地へと変貌してしまった。

 だがしかし、それでも欲するのを止めるつもりは無いのだろう。その証拠に、各地に拡大させている領土を見れば一目瞭然だろう。反抗していた地球人を蔑ろにし、排除し続けていた。


 『姫様、お帰りなさいませ』

 「所用で出掛けていた。私の留守中、何か変わりは無かったか?」

 『はい、万事滞りなく進んでおります。もはや抗う地球人の姿が見えない事から、この星は既に我等の物となったと良いでしょう』

 「何度も言わせるな、下郎。地球というこの星が豊かだったのは、その地球人が発展を繰り返し、日々進化を遂げていたからだ。長い月日を経て繁栄させていた土地を失ったとしても、知識さえ残ればどうとでもなるのは必然だろう」

 『では、再び部隊を編成して参ります。周囲から徐々に範囲を拡大させ、地球人の生き残りが居ないか。そして居た場合、即刻排除をして参ります』

 「いや、待て。この際だ、少しの間だけ様子を見てみようではないか」

 『何故で御座いましょう?』

 「ガゼルよ、お主は少し視野を広げるべきだ。お主の眼は、力ある者を見極める為にあるのだろう。ならば、利用出来そうな人間を捕まえるべきだ。先も言ったが、知識が無ければ発展は不可能だ。我々には、その知識が圧倒的に不足しているのだ」


 ガゼルと呼ばれたその者は、褐色の肌に屈強な肉体を持ちながらもスラッとしている。腰に据えた剣が目立ち、彼の事を忠誠を誓う騎士だと錯覚させるだろう。

 そして目の前の椅子に座り、頬杖をしながらガゼルと言葉を交わす少女。彼女こそが、地球外生命体である『バグ』を率いている少女である。


 『ならば、生け捕りに致しましょう。必要だと断言出来ない者は、殺しても構わないでしょうか』

 「好きにせい。私は面倒は好かんのだが、興味のある人間もおる事だし……しばらくは私も好きに動かせてもらうぞ」

 『承知致しました。ですが、数名程の兵を連れて行動なさるようお願い申し上げます。地球人を油断するなと申すのであれば、姫様を御守りするのも我等の使命』


 ガゼルがそう告げた瞬間、「うげ」と面倒そうに眉根を寄せる少女。だがすぐに溜息を吐きつつ、少女は立ち上がりながらガゼルに告げるのであった。


 「あい、分かった。ならば、二人だけ同行を許そう。お主が好きに選ぶが良い」

 『はっ』

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