第7話「新たな刺客」

 「……ふぅ」


 人間同様、内側へダメージ与えられたのは幸運だった。どんなに強者であっても、肉体の内側……つまりは体内への直接ダメージを与えられれば、どんなに頑丈な奴でもダメージを受けるという事。

 そしてそれは、硬い外皮を持つバグも同様だという事が分かった。これはバグに対して、最も有効な手段だと言えるだろう。良い情報を会得したと言えるだろうが、体内へダメージを与えるには命を賭ける必要があるだろう。


 「まぁ、それでも俺は殺るが。これは命がいくつ有っても足りねぇな」

 『終わりましたか?戦いは』

 「――っ!?」


 苦笑した瞬間だった。耳へ入ったその言葉の先には、高台から俺を眺める少女の姿があった。冷たい風に揺られる中で、その少女の姿を見た瞬間に俺は寒気を感じた。

 戦う力を持っているはずなのにもかかわらず、それでも俺の力だけじゃ力不足だと悟った。悟ってしまったのだ。その少女の存在が、であると本能が理解したからだ。

 

 「お前……何者だ?」

 『咄嗟に距離を取る行動力、危険を察知する判断力……なるほど。普通の人間にしては、優れた才能を持っているようですね。けれど――』

 「っ!?」

 

 そう言った途端、少女は俺の目の前に近寄っていた。俺は反応する事が出来ず、その少女から距離を取ろうとした瞬間だった。

 腹部に強烈な痛みが、激痛が全身を走った。その痛みを確かめるより先、俺は自分の状況がどうなったのかを理解した。理解してしまったのだ。

 目の前に居る少女は、俺の腹部へ手刀を突き刺していた。


 「ぐっ……がはっ」

 『反応出来ず、ですか。それが貴方の限界です。それが限界であり、貴方の現時点です』

 「て、てめぇ……な、にを……」

 『そのまま眠りなさい。次に目覚める時、全てが終わっていますから』


 手刀を引き抜かれた瞬間、俺は意識が揺れてその場で倒れた。霞んでいく視界の中で、俺は少女の事を睨み付けようと顔を上げた。


 『おやすみなさい、い夢を。――我等の新しい同胞よ』

 

 何か言っている様子だったが、俺の意識はそこで途絶えた。だがその時、俺は少女の顔を見た。少女の顔は何処か寂しげで、悲しく、優しい笑みを浮かべていた。

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