mc2020.12.12 アドベンチャーナビ様 ご来店
本日、開店と同時にメモ帳のような冊子を握りしめた冒険者風貌の男性が来店した。
彼の右肩には小さな竜が寝息を立てていて、雰囲気といいタダモノじゃないな? とか思っていたが、彼が正体を名乗ると、やはりタダモノではなかったと驚いた。
男の名前はヴァンデといい、肩の小竜はエレといったかな。
それで、驚いた理由なんだけど、彼が『アドナビの審査員』であることを打ち明けたから目を丸くした。
アドナビっていえば、アドベンチャーナビ……冒険用具店に評価をつけて紹介雑誌として発売している有名な出版社だ。それが、わざわざウチの店に来るなんて。
……でも、首を傾げた。
ウチは別に冒険用具専門店じゃないわけで、見ての通り普通の雑貨屋なんだよね。あと、別に広告とか打ち出してもないし。なんで、こんな辺境な場所にあるウチにアドナビが来たのかを尋ねてみた。
すると、ヴァンデさんが魔界に出張していたところ、人間界から実践訓練のため訪れていた冒険学校の生徒たちと出会い、彼らが口々に「珍しい店があった」とウチを名指ししたらしい。うーん、十二月八日に来てくれた西方大陸の学校の生徒たちかな。
その話を聞いたヴァンデさんは、魔界と人間の国境沿いに店を出しているだけでも珍しいから、来店してみたとのこと。
おおう、それは有難い……けど、ウチは別に冒険用具の専門店じゃないしなあ。
わざわざ来て貰ったわけだし、ちょうど青空コーヒーを淹れたところだったから、手作りドーナツもサービスで提供して、一休みしてもらった。
ヴァンデさんはコーヒーを飲んだ瞬間、旨い! と喜んでくれて、ドーナツは肩に乗せた小竜エレ君と一緒に美味しそうに食べてた。
色々な他愛ない雑談をしてたけど、結局ウチは冒険用具店じゃないし、評価は結構ですって断った。別に雑誌に載るのは悪くないけど、ただの雑貨屋だからね。他に紹介されたほうが良いお店もあると思うし。
それを伝えると、ヴァンデさんは青空コーヒー豆(ドリップの方)を一袋とドーナツを一つ買って、お店から出て行った。
今日の出来事はそのくらい。
しかし、あのアドナビの審査員ですって名乗られた時、割と緊張したわ。
盗賊が入ってきた時よりも、心臓がドキドキ鳴ったもの。
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