mc2020.11.29 猫人族テールさん来店

 本日の昼頃、猫耳を生やした女の子が来店した。

 茶色のショートヘアにオレンジ掛かった大きな瞳、ピンと立った猫耳が可愛らしい彼女は、恐らく獣人族の猫種だと思われる。

 名前はテールさんといった。

 猫耳はもふもふしてるし、ズボンの腰辺りから伸びる尻尾がピロピロ動いていて、なんだか実家で飼っていた猫を思い出して触りそうになった。あぶねえ……。


 結構幼そうに見えたんだけど、その通りで年齢は十五。

 だけど彼女の種族は十五で成人扱いらしいし、立派な大人だ。

 現にテールさんは既に魔界の中心ダークリング城下町で働いているようで、今日は仕事休みで暇を持て余していたため、散歩がてら人間界近辺まで来たところウチの店を見つけたとか。


 遠く遥々来てくれた彼女に、とりあえずコーヒーを差し出す。

 ところが熱いと言って若干涙を浮かべ、泣かせてしまった。

 種族柄、猫舌だったのか……。悪いことをした。

 急いで謝り、氷を大量に入れてアイスコーヒーにしたところ、今度は笑顔で飲んでくれた。


 テールさんはコーヒーを飲みながら店内を物色するうちに、あるものに目を付けて、これは何かと聞いてきた。

 彼女が気になったのは『マグロの缶詰』だ。

 缶詰の表面には魚のイラストが描かれ、水煮されたマグロを細かく切って金属缶に密封したいわゆるツナ缶である。


 やはり猫……なのか、魚のイラストに興味津々。


 中に魚の水煮が保存食として入っていることを伝えると、非常に驚かれたご様子。

 魔界には缶詰文化があまり浸透していないため、乾燥物のジャーキー(干し肉)やラード類で固めた保存食が多く、水煮したものが長期間腐らずに食べれることを知って目を丸くさせていた。


 別に高い品物でもなく二百ゴールド程度のため、味見をして貰った。

 すると、耳と尻尾がピーンと立って、にゃふー、と喜びの声をあげた。

 一口で缶詰のとりこになってしまったようだ。


 彼女は棚に陳列されていた(奥で埃を被りつつあった)在庫分も引っ張り出し、合計二十個もお買い上げいただいた。


 ダークリングに住んでいる彼女が知らなかったってことは、魔界の都市部にもあまり出回っていないのかな?

 無くなり次第また来てくれるというので、再来店の期待を込めて近々大量に仕入れておこう。長期保存がきくし、最悪、自分が食べてしまってもいいしね。


 ツナ缶、サラダに入れるもヨシ、マヨネーズをつけて食べたりすると美味しいんだよねえー……。


 ああ、書いてて食べたくなってきた。


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