　本日、行商屋のマイルという青年が来店した。

　ターバンを巻いて凛とした顔の彼は、魔界と人間界を月一ほどで往復して、お互いに需要のある物資を売買する貿易のような商（あきな）いを行（おこな）っているらしい。

　以前からこの店が建っている林道を利用しているようで、前回来た時には無かったお店が出来ていたと驚いていた。

　商人の先輩である彼に、最近の商（あきな）い事情を聞いてみると、割と儲かっているとの話だった。

　そんで、面白い話と聞けたので記載。

　人間界では魔界の品物が売れ筋らしく、特に健康品に関して話題のようで、何気にお風呂に浮かべる回復効能樹木『ルリノキ』が人気を博しているという。

　おお、うちにもたくさん入荷している商品じゃないかと少し喜んだが、その直後、とんでもない話を聞かされた……。

　どうやらその火付け役というのが、オールキングダムで魔法道具店を経営する老夫婦の錬金術師が、より回復効果を強くしたルリノキの錬成に成功したとかで。

　おい、待て。

　その夫婦について、俺は知っている気がする。

　念のために、老夫婦の名前を聞いてみた。

　マイルさんは言った。

　錬金術師の名前は、タリーズさんとベティさんだと。

　うおいっ！！

　やっぱりタリーズ夫妻じゃねえか！！

　なんなの、ピクニックで痛めた足腰で、ルリノキに着眼しちゃったの！？

　あの二人、とんでもない商才があったんだな。

　やっぱり手に職を持ってる方々にはかなわねえ……。

　だけども、タリーズ夫妻が元気そうでよかったとは思うよ。　

　ちな、今日は余分なお金の持ち合わせがないらしく、マイルさんは何も買わなかったけど、今後は月一で店に寄って、珍しいものがあったら買ってくれるとのことだった。

　よっしゃ。

　今度、彼をうならせる品物を用意しておくぞ！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい