第3話 爽大 柚子

  爽大がボンヤリ図書室への渡り廊下を歩いていると女子に声を掛けられる。

柚子「あの。カッコいいなって、たまに思います!  ムリなら断ってくださって全然大丈夫です。よかったらお友だちから__」

廊下の柱の影から覗く派手めの女子が笑い合っているのが見える。爽大は柚子に小声で話す。

「これ、ウソ告?  あ、後ろの女子にバレねーように」

柚子は、頷く。

「オッケ。じゃ、付き合うフリしよ。キミは黙ってて」

「え」

爽大は、スクールカースト一軍の女子のところへ行く。同じクラスになったことはないが、可愛いプラス性格がちょっと、と有名。もう卒業だしどーでもいいし。

「ご心配お掛けして、どーも! この度、めでたく付き合うことになりました~。つーことで、コイツ借りてくな~」ニッコリして柚子の手を引っ張ってく爽大。

「ウッソー」

「趣味悪__」2人が走っていった。


いなくなってから爽大が吐き捨てた。

「__趣味ワリィのそっちだろ!っつーな!」なんか腹たつな!

柚子を振り返る。

「大丈夫~?  新手の嫌がらせ?  ま、どーでもいいけど。じゃな」

柚子が爽大と反対の方へ行こうとする。爽大が声を掛ける。

「あ、待って。せっかくだし、友達になってくれない?  女子の友達っていないんだよね」先輩とは、友達になりたかったのに。

「え。嬉しい。私も男友達っていないから」柚子  恋愛とか彼氏なんて自分には身分不相応ってわかってる。そもそも男が苦手だ。心許せる女友だちがいれば充分だ。


「アレ?  そうだっけ?  いつも話してる男子一匹いるよね。小田哲とか」小田哲は爽大と同中の男子。まあ、そんな悪いヤツではないと思うけど。女好き。あとケンカっ早い。この子は、どっちかつーと、地味というか真面目そうというか。小田哲のタイプとは違うような。

マンガとかだと、ヤンチャと優等生ってよくあるけど。現実だとあつかましくね?

「あー、うん」

「もしかして__付き合ってた?」

「ナイナイ。小田哲にはからかわれてるだけ。彼女いるし」

「フーン。じゃ、連絡交換しよ」二人、携帯を出す。


河合 柚子 高校三年生。158cm。BMI 標準。ベビーフェイス。地味なタイプ。演劇部


 ©  石川 直生 2020.


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