休日は二人で過ごす
「やることがないな」
朝ご飯を食べた後、優介はリビングでスマホを弄っていた。
土曜日で学校が休みだし、宿題もないからのんびりとしているだけだ。
ご飯の後片付けを手伝おうとしたのだが、氷天によって止められてしまった。
以前に食器を割ったことがあるからかもしれない。
「兄さんは今日どうするのですか?」
後片付けを終えた氷天がリビングに戻ってきた。
ツインテールでミニスカート、生足の氷天は未だに見慣れない。
「家でのんびりしてる」
友達に誘われているわけでないし、アニメでも見ながらまったりするのがいいだろう。
「そうですか」
朝食前にくっつき過ぎたためか、今の氷天は素っ気ない態度だ。
でも、何故かソファーに座っている優介の隣に座り、妙に距離が近い。
「だからのんびり氷天とくっつきながら過ごす」
「はい?」
聞こえるくらいの声のはずだが、氷天は目を丸くして聞き返してきた。
休日は夜になるまで各々で過ごしていることが多いので、くっつきながら過ごす、と言われて驚いたののだろう。
「だからくっつきながら過ごす。もう少し俺にくっつくことに慣れろ」
早速氷天の肩を抱いて引き寄せる。
すぐに頬が染まり、氷天は恥ずかしいのか俯いてしまう。
だけどいつものように抵抗はしないため、優介は氷天と触れ合う面積を増やしていく。
「兄さん、いくら慣れるためとはいっても……あ……」
背中に手を回して抱き締めると、氷天は甘い声を出した。
どうやら背中が敏感らしく、軽く擦るとさらに甘い声を出す。
今日はキャミソールを着ていないようで、背中を擦ってブラのラインがはっきりとわかった。
妹の下着に興味はないため、擦るのを止めて力を入れて抱き締める。
「すぐに慣れろとは言わないけど、やっぱり慣れた方がいいから、これからはなるべくくっつくことにするから」
体質上抱き合うのを止めることが出来ないので、夜だけでなくて昼間もくっついて慣らさないといけない。
普段からくっつくようにしておけば、流石の氷天も慣れてくるだろう。
せめて軽くくっつくくらいで恥ずかしがらなくならない程度に訓練は必要だ。
「それは、あう……」
恥ずか死してしまいそう、と思っているかのような顔を氷天はしているが、優介は離すことをしない。
本気で嫌がっているなら別だが、今までくっついて嫌とは言われたことがないため、止める必要はないだろう。
それに恥ずかしくて死ぬことはないし、このまま抱き締めておく。
「慣れるまで学校でもくっつくから」
「あう~……」
恥ずかしがっているのを隠すかのように、氷天は優介の胸に顔を埋める。
どうやら触れ合うより恥ずかしがっている顔を見られる方が恥ずかしいらしい。
ぐりぐり、とおでこを押し付けてくるのは、くっつくのは恥ずかしくても嫌じゃないとというアピールだろう。
「氷天……ずっと側にいてやるから」
「はい。私には兄さんがいないと困りますから」
優介がいなくなったら氷天は限界まで眠ることが出来ないだろう。
不眠は生物にとって致命的なので、氷天は何があっても絶対に優介の側にいるしかない。
氷天の頭を優しく撫でながら、優介は一つ思ったことがある。
抱き地蔵の体勢じゃないと眠れないからか、間違いなく氷天は優介に依存している。
依存してしまうのはしょうがないことなので何も言わない。
今さらどうこう言っても体質なんてすぐに変わるわけないし、どうあっても一緒にいることになるからだ。
氷天と一緒にいるのは好きだから問題ないので、危害加えられない限りは依存させていようが構わない。
「慣れてきた?」
「そんなすぐ慣れるわけありません」
確かに氷天の心臓は激しく動いているのが伝わってくるため、この程度で慣れるのは無理なようだ。
抱き地蔵の体勢になれば恥ずかしがっていてもすぐ寝るのだが。
「そういえば昨日は夜更かししたし、今は眠くないのか?」
あまりにも眠いのであれば、すぐにでも寝かせるつもりでいる。
「大丈夫です。兄さんが起きる前にくっついて恥ずかしさで目を覚ますので」
「ん? 何て?」
大丈夫、という言葉は聞こえたが、後半はほとんど聞き取れなかった。
氷天には何か目を覚ます方法があるようで、優介が起きる前に実行しているようだ。
「な、何でもありません。兄さんには関係ないことですので」
「そうか」
絶対に知りたいわけでもないし、本人に教える気がないなら問い詰めるつもりはない。
「眠くないなら今日はずっとくっついているけどな」
「あう~……恥ずか死してしまいますよ」
実際に死ぬことはないので、本気で止めてと言われるまでは抱き締めた状態が続く。
掃除とかする、と言い訳をしてきても、今日はやらせないから優介は氷天を離す気はない。
ずっとくっついてひたすら為らしていくことに徹底する。
「本当に嫌なら離れてっ言えばいい」
「言えるわけないじゃないですか。バカ……」
氷天は消え入りそうな声で呟くのだった。
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