第15話 最高の『タイミング』で

 創作する際の『ヒラメキ』が、シャボン玉の泡のようなものだとしたら?


 うおっ!

 ひらめいたぞー!!


 シュー……

(↑ ストローから飛び出します!)


 ぽよん!

(生まれましたー!)


 どうにかまるい形になったものだけが、フワフワ漂いながら、空中へと浮かび上がりますよね。


 生まれずに、形にならないものも、たくさんあると思います。


 運よくその姿を自分で見つけることが出来ると、丸くてつややかで七色に輝くその姿を「わぁ!綺麗!」って言いながら、絵に描くことが出来るかも知れません。


 または、小説に出来るかも。


 『何かの瞬間』に化学反応のようなものが起こり、『がしっ!!!』とそれを自分自身で捕まえて、形にする行動を起こさないと、作品は生み出せない気がします。


 泡は生まれているのに、長時間フワフワ漂ってくれているのに、自分ではそれに気づけないまま、はじけて消えてしまう場合もあると思います。


 生まれた!と思ったらその瞬間に、消えて無くなってしまうものも、あるかも知れません。


 とびっきりいいものが生まれたはずなのに、それを消えるまで放置してしまう事もあるかもしれず、何だか勿体ないですね。


 作品づくりって、『タイミング』に影響されるという気がしてなりません。


 人によってこの問題は異なると思うので、それぞれの捕まえ方(メモ取るなど?)を編み出すしか無いのかなぁ、と思ったりもします。


 まったく逆の話をします。


 私は最近まで、インターネット通信販売の会社で働いておりました。


 そこで、カスタマーサービス担当という接客業務(主にお客様からの問い合わせや苦情の電話やメール対応)をしておりました。


 「いつまでに届きますか?」とか、「この商品、どのくらいの大きさですか?」という質問に答えたり、苦情に対応する仕事です。


 苦情の内容にも、色々な種類があります。


 大体はお客様がおっしゃる通り、商品に傷があったり汚れがあったり、使用できなくてご連絡いただく場合が多いので丁寧に謝罪し、対応していました。


 でもそれとは別に、きちんとした説明をした上で販売しているにも関わらず、それを確認しないまま商品を購入し、「ちょっとー!この商品なんなのよ?どーしてくれんの?!!」と、感情のままに、わめき散らすお客様もいました。


 たいていはこちらが冷静に『こういった商品でございますので、どうかご了承くださいませ』とか、『こちらのページにて、ご説明させていただいております』などお伝えすると、納得してくださるのですが。


 たまに、こちらの言っている内容を全く聞いて(読んで)くれないばかりか、どんどん怒りがエスカレートしてくる方もいらっしゃいました(涙)。


 こちらが長々と『説明』をした事に対し、「反発された!」あるいは「何なの?弁解なの?」という気持ちと怒りがこみあげてしまったのでしょうか。


 こうなってしまうともう、実はお手上げなんです。同じ仕事を担当しているカスタマーサービス担当内か、会社で指揮を執る人に相談し、『別枠』でそのお客様を対応するしかなくなります。


 どうするかというと、社内で色んな意見を出し合って、そのお客様に適した対応方法を検討するしかないんですよね。


 そういう方はたいてい、何度も何度も同じ事を言ってきます。こちらの説明に耳を貸そうとしないからです。


 通常の場合にしている説明や、わかりづらかった事に対するこちらの謝罪の言葉などは、『この瞬間の、このお客様』には全く届きません。


 電話やメールを最初に対応した人間かその上司が、最終的にそのお客様へ連絡を取るしかありません。


 連絡する直前はドキドキして、冷や汗が出て、気が気じゃないですけど。


 会社側としてはこの場合、お客様に納得していただくしか無いのです(涙)。


 それがですね、実に不思議なんです!


「どーするどーするー?」って社内で相談しているうちに、なぜか解決してしまう場合があるんですよ。


 時間がいくらか経過すると……。


 お客様の怒りがおさまったり。


 お客様ご自身が「自分が間違っていたんだ!」ということに、突然気づかれたり。


 お客様が、もう別のことに気を取られたりして。


 ドキドキしながら担当者が電話したりメールの返信をする頃には、すっかり優しくなっている場合が多かったりするんですよ(笑)!


 私、これもシャボン玉みたいだと思ったりするんです。


 生み出したものが、弾けて(あるいはしぼんで)無くなったらしいです。


 お客様はご自身の勘違いにより、一番悪いタイミングで、世に出さない方がいい『苦情』を、生み出してしまったんですよね。


 もっと時間をかけて慎重に、言葉にする前に考えれば良かったのに。


 そうすればカスタマー担当の気持ちをここまで翻弄し、傷つけずに済んだかも知れないのに。


 まぁ、カスタマー担当は仕事でやっているわけですから、苦情を受けるのは当然なんですけれど。


 生み出さずに済んだろー(怒)! 

 

 と、全員で叫ばずにはいられない時も、ありました。


 でもそんな経験全てが、自分にとって作品を作る上で欠かせない、大切な材料になってくれました。


 その瞬間を、逃さないこと。

 

 形にする前に、よく考えること。


 時として間違いも起こる。


 その時はきちんと受け止める。


 今後どうするかを考える。


 また生んで、キャッチする!


 丸くてつややかで七色に輝くその『シャボン玉』を形にしたあと、誰かに「わぁ!綺麗!」と言ってもらえますように。


 楽しんで作れますように。


 いつもその気持ちを、忘れずにいられますように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る