第14話「C」交渉
ジャンがリカルド・フェリスと死闘を繰り広げている最中、「マスターローズ」
「バルデロ」「春日」の三名はN市の工場跡地に来ていた。
「何故俺をここに連れてこさせたんだ?」
春日が二人に尋ねる。
「メンターの事はもう聞いていますかディアブロ?」
「あぁ、貴女がジャンに調べさせてるターゲットの事だろう?」
「えぇ、今回ここで彼の"主"と会う約束をしたんです。」
「黒須 左京と会えるのか?
FHの中でも行動が掴めないと言われているのに」
黒須
故に黒須 左京に会う以前に連絡を取ることすら難しくそれがメンター捜索を尚更困難なものにしていた。
「実際、かなり難しかったですよ。
連絡先も分からずコンタクトが取れなかった訳ですから.....
しかし、必ず"痕跡"は残ります。」
「痕跡?」
「メンターは黒須に定期報告を行う為、毎回メールを送っていました。
しかし、そのメールは使い捨てで更に、
送られてから数十分でデータ事消去する徹底ぶりでした。
しかし、"数十分"はコンタクトが取れる事になるわけです。」
「回りくどい....結局どうしたんだ?」
春日が苛立ちながら尋ねるとローズは淡々と答えた。
「簡単ですよその数十分でメールの送受信元を解析し相手に"メールを送れる"だけの技量をもつハッカーに依頼しただけです。 」
「随分と大雑把な言い方だが手段は分かったそれでどんなメールを送ったんだ?」
「それは.....どうやらいらしたみたいですね。」
ローズは目配せした先にはメガネをかけた黒髪の青年がこちらに向かって歩いてきていた。
「あんたが"マスターローズ"か?」
青年は落ち着いていた口調でローズに尋ねるがその目は残酷なまでに冷えきっており殺意すらも帯びていた。
その姿を確認した春日とバルデロは何時でも戦えるように警戒している。
「えぇ、そうですよ"マスターレイス14"。
呼びづらいので黒須さんとお呼びしても?」
「どうでも良い.....
俺を探している理由を言え。」
ローズの問いに答えること無く黒須は話を進める。
「では、メンター...塔ヶ崎フミヤの居場所を教えてくれませんか?」
「........」
塔ヶ崎の名を聞き黒須は少し驚くが直ぐに表情を戻し話を続ける。
「アイツが今どこにいるのかは知らない。
用件はそれだけか?」
「そうですか。
なら言い方を変えましょう。
彼と今すぐ"コンタクト"を
取ってください。
そろそろ"定期連絡"の
時間になる筈ですから」
定期連絡の事をローズが話した瞬間、黒須の手に電流が流れ始める。
「何故、その事を知っている?
何処からその情報を得た?」
交渉ではなく戦いになると感じた春日と、バルデロは能力を発動しローズの前に出るが
当のローズは落ち着いた様子で話を続ける。
「三人とも落ち着いて下さい。
ここは"交渉の場"です。
闘争は必要ない。」
そう言われるとバルデロと春日は後ろに下がる。
しかし春日だけ能力を解放したまま黒須を警戒し続けていた。
「先ずは貴方の質問に答えましょう。
貴方が"とある組織"と取引をしていることを私は知っていますがその事を"FH"には報告していません。
ですのでこれが他に漏れることは無いことを約束しましょう。」
FHのメンバーを引き抜いている謎の組織と黒須が協力していることを仮にもマスターの称号を持つローズが報告しないと言う発言に黒須は益々、不信感を持った。
「何が目的なんだ?」
黒須の問いにローズは答える。
「そうですね。
強いて言えば"復讐"でしょうか?
その為にも貴方の協力している組織の情報が知りたい。
そして、その為にも組織に直接繋がっているメンターの事が知りたいと言った具合ですね。」
淡々と自分の目的が復讐であることを語るローズの姿に春日は驚いているが黒須は違う反応を示していた。
(あの目は、大切な者を奪われた事のある人間の目だ。
ローズの言っていることは真実なんだろう。)
UGNエージェントに家族を殺され復讐することを目的としている黒須にとってローズの復讐と言う言葉と目が今の話が真実であることを確信させた。
しかし、ローズの目的が自分と同じ復讐でも取引する材料にはならなかった。
とある"取引"を持ちかけられるまでは.....
ローズと黒須の会話を聞きながらも春日は常に黒須に対しての警戒が解けずにいた。
同じFHの仲間でありながら敵意を向けてくる黒須の気配や黒須の掌が能力によって常に帯電している状態からも力付くで聞き出すしかないと思っていたが、ローズの放った一言によりその警戒も解ける結果となった。
「黒須さん、貴方は勘違いしているようですが私は今メンターの行っている任務を"邪魔する"つもりはありません。
私はその後の取引をしたくて貴方を呼んだのです。」
「私の提示する条件は二つ。
1つはメンターの任務が完了した後に貴方達が協力していた組織の情報を私に差し出すこと。
もう1つは今後その組織とは取引せずに、
F市からメンターが立ち去ること。
この二つです。」
何故、黒須達にとって好条件である内容を
ローズが提示しているのか聞きながら春日は疑問に思い話に割り込む。
「ちょっと待て!マスターローズ。
いくらなんでもそれじゃあ裏切り者であるコイツらにとって都合が良すぎるだろう?
コイツらはFHを裏切ったんだぞ!」
「貴方の言いたいことは分かりますよディアブロ?
しかし、私はこの条件を変える気はありません。」
至極当然な反応にローズは納得しながらも春日の意見を否定した。
「それで俺がお前に真実を教えるとでも思っているのか?」
「えぇ、思ってますよ黒須さん。
何故ならこの取引は貴方を"救う"ことになるからです。」
「......救うだと?」
「今、私の部下がメンターに接触しています。」
「!?」
「えぇ、貴方に聞くまでもなく"接触する"ことは出来ている。
それなのにこの取引をするのは確実な情報が欲しいからです。
メンターは貴方に忠義を尽くしている。
だからこそ貴方の不利になることは決してしない。
ここで、取引をし確実な情報が手に入るのならば私は貴方達二人を組織から殺されるかもしれない憂いから解放することが出来る。」
「殺される?黒須はその組織の協力者だろ?
何故、殺されると言うことになる?」
春日の質問にローズは答える。
「一匹狼である黒須が何故最も忠義を尽くしてくれる部下を組織に貸しているのか?
考えられる可能性は二つ。
1つ目はその組織に恩がありそれを返している又は協力することで何かを手に入れることが出来る。
もう1つがその組織に脅されて仕方なく従っている。
黒須さんは恐らく後者に近い状況なのではないですか?」
「............」
黒須は沈黙を続けている。
「まぁ、貴方ほどプライドが高い人なら命令されることを極端に嫌う筈です。
それなのに手を貸すということはその組織と戦っても勝ち目が無いと思っているから」
「...........」
黒須は黙ってローズの話を聞き続けている。
「では1つだけ答えてください。
貴方の協力している組織で空間移動能力を持っているのは"一人"だけですか?」
「........あぁ。」
「なら、これが最後の材料です。
その能力者から探知される事を防ぐ装置を私は用意できます。」
黒須はその言葉に驚く。
「アイツの能力を阻害できるのか?」
「えぇ、現にその能力の波長を調べたことでメンターの居所を見つけました。」
ローズは腕に着けた時計に目をやる。
「定期連絡まであと1分程ですかね。
さぁ、黒須さん決断してください。
ここで私達と戦いその組織に協力を続けるか?
私達に情報を渡し部下と共に安全に逃げるか?」
黒須は提示された条件をもう一度頭の中で整理していた。
何が自分達にとって有利な結果を生むのかを.......
そして、数秒悩んだあと黒須は携帯を取り出し電話をかける。
相手は孤独な自分を支える唯一の臣下に....
電話は直ぐに相手に繋がると取引の結果が通達された。
続く
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