第11話「C」血
とある犯罪組織に一人の少女が買われた。
その子はその後とある性癖を持った富豪に買い取られていった。
数年後、富豪は何者かに頭を砕き潰されて
少女はまたその組織で売り物として扱われた。
彼女は前の家で"フェリス"と言う名前を与えられた様で今でもそう名乗っていた。
次に彼女を買い取ったのはとある殺し屋であった。
彼女に殺しの技を仕込み自分の手駒をとして扱いたかったらしくフェリスはここで銃という道具を知りその扱い方を学んだ。
しかし、また数年後殺し屋は何者かに殺されフェリスは組織に戻された。
すると今度はフェリスが俺達に話しかけてきた。
「私は前の家で殺しの技を教わった....貴方達の役に立つから今度は売らないで下さい。」
組織もフェリスが使えると判断したからか、手元においてこれまで数々の殺しをやらせてきた。
どうやら、フェリスは殺しを楽しんでいる節があるらしく銃でスマートに殺すこともあれば鈍器で人がペースト状になるまで潰して殺す等、殺し方が安定していなかった。
しかし、フェリスの働きにより組織に敵対する勢力もいなくなり何と有名な裏社会の犯罪組織である"ギルド"への加入も打診された。
組織のトップはその功績を称えてフェリスと直に会うこととなった。
舞台は豪華レストランの一室にそこには組織の全ての人間が集められていた。
そこで、フェリスは中にいる全員を皆殺しにした。
自分の手から拳銃を生み出しては発砲して殺害していく。
組織はここで始めて彼女がオーヴァードであったと気づいた。
粗方殺し終わり残った組織のボスである男に近付くと銃を捨てて少し談笑を始める。
「あははは!結構死んじゃったねボス?」
フェリスの悪気のない声がボスに響く。
「ふっ、ふざけるな!フェリス!
テメェ、ボスである俺にこんなことをして只で済むと思ってるんじゃ....」
「只で済む?バカじゃないの?それはこっちの台詞だよ....
だから全員集まるこのタイミングで仕掛けたんだからね。」
「元奴隷の分際の癖に...お前には良い思いもさせてやっただろうが!」
事実、彼女が組織にとって有用だと証明されてからは幹部扱いとしてかなり優遇されていた。
「それは感謝してるけど....
"この子"が殺せって言うから仕方ないよねぇ。」
「この子?」
周りに誰もいないのにフェリスがまるでいるように振る舞う姿にボスは疑問を持つ。
「あっ!ごめんごめん紹介してなかったね。」
フェリスは目をつむると顔付きが別人のように変わり男の様な低い声でこちらに話しかけてきた。
「俺の名は"リカルド"....フェリスが随分と世話になったな。」
「なっ.....お前っ!」
「死ね。」
その後、ボスであった物は挽き肉の様にひねり潰され殺された。
この一件の後に名前を彼女は「リカルド・フェリス」と名乗りギルドで、殺し屋として働き始めるのだった。
「テメェが敵か?」
フェリスからリカルドに変わった彼女が、
ジャンに向けて笑いながら尋ねる。
フェリスの笑いとは違い獲物を見るような目で歪んだ笑顔をこちらに向けている。
「リカルドくん....落ち着いてくれ。」
メンターがリカルドに話しかける。
「あ?テメェには聞いてねーだろうメンター。」
「我々は今、交渉を始めている途中だったんだ....君の力は要らないんだよリカルドくん。」
「んなこと興味もねぇな....フェリスが傷ついたから"俺は来たんだ"。
俺はフェリスを傷つけたヤツをぐちゃぐちゃになるまで潰して殺す....それだけだ。」
すると、リカルドは間髪いれずにジャンの元に走っていくと左手から武器を生成しながら殴りかかってきた。
その攻撃を避けると地面に大きな穴が空く。
振り下ろされた左手には不格好なハンマーが握られていた。
「随分と原始的な武器を使うんだな?」
ジャンがリカルドに尋ねるとリカルドは笑いながら答える。
「俺はフェリスみたいに"綺麗な殺し"なんて事には興味がない。
相手をぐちゃぐちゃに潰して砕いて息の根を止める...それが俺の好みなんでな!」
そう言うとリカルドは右手にチェーンソーを生成しジャンに向かって振り始める。
野獣の如く生成した武器を只相手に向かって振り続けるその攻撃スタイルはフェリスとは対照的な戦い方だったがジャンにとっては好都合であった。
(相手からこちらに近付いてきてくれるのなら....俺に勝機がある。)
ジャンの毒針は相手に刺されば一発で勝てる一撃必殺の技でありその間合いに入るためFHの中でもジャンは近接戦をメインに行うため攻撃はボクシング防御は柔術とバランスの良い戦闘スタイルを取っていた。
("一発でも当てられれば勝てる")
そう確信しているジャンは両手を目の前に構えてボクシングのジャブでリカルドに牽制をする。
リカルドもジャンの攻撃を知っているのか当たらないように回避を続けながらも、生成した武器で的確に攻撃を行っていた。
「やっぱりうざってぇな...お前のその針。」
リカルドがジャンの腕を見ながら言う。
「そいつを壊す事から始めるか...」
リカルドは両手の武器を捨てると新たに武器を生成する。
両腕まで鎧でおおわれた籠手を生み出すと、ジャンと同じように構えた。
「俺もボクシングは得意なんでな。
これでケリをつけてやるよ。」
リカルドがそう言いながら構えるのを見てジャンは勝ちを確信する。
(自分から俺の間合いに入ってくれるとは有難い。後はチャンスを見つけて"撃ち込む"だけだ。)
殴りかかってきたリカルドの右腕をジャンは左手でいなす。
その際、いなした左手をリカルドに捕まれるがもう関係はない。
何故ならその攻防のお陰でちょうど胸に撃ち込めるだけの隙間が空いたからだ。
ジャンの狙い済ました右ストレートがリカルドの心臓に向かって放たれる。
拳が到達し針がリカルドの胸に刺さるかと思われた瞬間、リカルドは一言呟いた。
「"予想通りだな"」
ズドン!バキン!
破裂音と衝突音が鳴り響くとジャンの顔が悲痛の色に染まる。
ジャンの右腕はリカルドの心臓にではなく胸から生成された"ハンマー"に激突し右腕の針は折れて出血していた。
(グッ、腕が!カウンターを食らったのか?
それにしてもこのダメージは.....)
「リアクティブアーマーって知ってるか?」
リカルドはジャンに尋ねる。
「戦車とかに付いてる装甲でなソイツに攻撃が当たると装甲自体が爆発して衝撃を和らげるって代物なんだが....さっきお前が撃ち込んだ俺の胸のハンマーにも同じ構造が使われている....しかも俺のは特別製でな衝撃を逃がすだけじゃなく相手にその衝撃を"ダメージとして上乗せ"出来るんだよ。」
リカルドの説明を受けてジャンは疑問が解けた。
(そうか....俺の拳の衝撃に加えて爆発の威力が乗ったハンマーにカウンターが入ったから俺の右腕はオシャカになったと言うことか)
ジャンは右腕を動かそうとするが感覚がないため上手く動かせない。
するとリカルドはジャンの両手をそれぞれの手で捕まえて抑え込んだ。
「なぁ....お前、俺が出てきた時ぶっちゃけ"勝てる"と思っただろ?」
リカルドがジャンに問いかける。
「俺はフェリスみたいに遠距離で戦わず近付いてきた姿見て"殺れる"と思ったんだろ?」
まるでジャンの思考を全て読んでいたかのように話続ける。
「だから、俺がわざと作った隙に釣られて殴ってきた訳だ....
その腕の針、毒かなんかだろ?
見え見えなんだよ、テメェみてぇな"能力"だけ恵まれた奴を相手にするなんざ... 」
リカルドはジャンの顔を改めて見ながら笑いかける。
「俺達はな...."オーヴァード専門の殺し屋"なんだぜ。
テメェの様な雑魚を何人も殺してきた。
俺達と戦った時点でお前はもう終わりなんだよ....」
毒針を失った蜂が今、怪物の手の内にいる。
逃げるか食われるか....
ジャンは目の前の怪物に対して始めての
"恐怖"を抱くのだった。
続く
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