第10話「C」銃撃

「そう言えば、あたしまだ自己紹介してなかったよね?(^_^)」

 そう言うと少女はジャンに笑顔で自己紹介を始めた。



「あたしの名前はフェリス。

 呼び名は鮮血姫( `・ω・´)ノ ヨロシクー 」

 "鮮血姫"(せんけつひ)ジャンはこの呼び名に、見覚えがあった。

 UGNのビンゴブックに記載されていた。


「お前は確かギルドのメンバーだろ?」

「へぇ〜!よく知ってるねー。

 昔はそうだったけどスカウトされて、

 今はここにいるんだ(。-`へ´-。)」

 自分の事を知っていたジャンに嬉しさを覚えながらも疑問をぶつける。

「あたしも答えたんだから教えてよ!

 何で頭を撃ち抜いた筈の貴方が生きてるわけ(-ω- ?)」

「.........」

「えー!教えてくれたって良いじゃーん!

 ケチー(# ̄З ̄)」



 ジャンは時間稼ぎをしていた。

 頭を撃たれた際の衝撃のダメージを回復するために....

(危なかった...俺の骨が"特別製"じゃなかったら死んでたな。)

 伊藤ジャンの能力には"蜂の特性"以外にももう一つ蜂に関連する能力が備わっていた。

 蜂は巣を作る際、正六角形を並べた構造の巣を建てる...俗に言う"ハニカム構造"でジャンの骨も同じような構造で形成されていた。

 この構造の特徴は軽量性と衝撃吸収能力にある。

 ジャンの骨は硬度を高めながらハニカム構造での肉抜きにより普通よりも軽く丈夫に、出来ているため徒手空拳で速度が上がりまた回避能力も高くなっている。

 衝撃吸収能力に関しても折り紙付きで今までどんな攻撃を受けてきてもよろける程度しか衝撃を感じたことはなかった。


「う~ん....もういいや、考えるのやーめた!(´Д`)」

 フェリスはそう言うとライフルを捨てると、腕から別の銃を創造した。

「分からないから何度も当てて確かめてみることにするよ( ^∀^)」

 そう言いながらジャンに向けて銃を発砲する。

 しかし、ジャンは最小限の回避で弾を避けた。

「何々?スゴいじゃん君!随分と簡単に避けてくれるね(゜ロ゜;ノ)ノ」

 ジャンの回避行動を見て並みのエージェントではないと考えたフェリスは手に持った拳銃を変化させる。

「威力重視でデザートイーグル作ったけど、連射性重視の銃に変えようかな?

 ねぇ君?この拳銃知ってる?

 グロック18cっていってねフルオートで毎分1200発発射できる優れ物なんだ。(*≧∀≦*)」

 フェリスはジャンに銃を向けてトリガーを引き続けた。

 ジャンでも最小限での回避は難しく弾を避けるために走り始める。


「いくら君が弾を回避できるスゴスゴマッチョメンだとしてもさ....この段幕を全ては避けられないよね(-ω- ?)」

 そう言いながら逃げるジャンに向かって銃を撃ち続けるが突如ジャンが切り返しフェリスに向かって突進してきた。

「わわっ!ちょっと来ないでよΣ(´□`;)」

 突進してくるジャンに銃を向けた結果、

 弾丸数発は腕に着弾したもののジャンは攻撃の間合いに入ることが出来た。


 そこから、腕の針をフェリスの顔に向けて打ち込むがフェリスも最低限の回避で攻撃を避けて先程まで日傘を持っていた腕をジャンに向ける。

 するとそこから一発の発砲音が聞こえて、ジャンは後方に大きく吹き飛ばされた。


「あっぶないなぁ!後少しで当たっちゃってたよ!(;´_ゝ`)....それに」

 そう言いながらフェリスは手元を見る。

 そこには少し形の崩れた二連ショットガンが握られていた。

「こんな不細工な道具作らされるなんて本当に屈辱だわ!(#`皿´)」

 フェリスには独特の美学があり殺しをする際は必ず自分の生成した武器で尚且つ美しい見た目をしている物を使うと決めていた。

 その為、この事態は彼女にとって屈辱的な光景となっていたのだ。


 するとこれまで事態を静観していたメンターがフェリスに話しかける。

「ギルドで腕利きの暗殺者と言われた君に屈辱を与えるとは....FHの若手も良いのが育ってきているようだね。」

「むきー!(#`皿´)ムカつくこと言わないでよメンター!

 それにこれはちょっと油断しただけであってもうしないもんね~!(`Δ´)」

 そうこう話しているとジャンが起き上がる。


「やっぱり立てちゃうんだ....

 .ショットガンの直撃を受けて起き上がれるし、さっき腕で受けてた弾も致命傷にはなってない感じだねー。

 あれ?もしかしてこの子強い?(;・ω・)」

「その様だな....よく鍛えられている。」

 すると、メンターはジャン向けて話しかける。

「伊藤ジャン....提案なんだが今日はこのまま見逃してもらえないだろうか?」

「さっきも言った通り、私は組織に入ったのではなく協力しているだけだ。

 用が終われば私は主の元に帰るその後は君の邪魔もしないしそれどころか協力してあげることもやぶさかではない。」

 ジャンはメンターからの提案に驚きながらも顔に出さないように尋ねる。

「良いのか?その女はその組織のメンバーなのだろう?」


 すると、フェリスは笑いながら答える。

「あはは!心配してくれるの?

 優しいね....でも安心して良いよ!

 メンターの言った通りで彼は私達の組織に協力してくれているだけで仲間じゃない。

 やることやってくれた後はどうなろうと興味もないしどうでも良いんだよね。

 だから、君がメンターの提案に乗っても私は何もしないよ。( ^∀^)」


 ジャンはメンターからの提案を受け考えを巡らせる。

(メンターの言い分が真実なら、組織での任務が終わり次第、FHに情報が来る可能性がある....だが、約束を守って確実に来る保証もない。

 ここで奴を見逃せば今後、また捕らえられる可能性も低くなる。

 だが、あの女を倒して捕らえると言うのも難しいだろう。

 "毒籠"を使おうにも開けた繁華街の道路では大した効果もでない。

 少し戦ってみて分かったがあの女はまだ俺と"本気"で戦っていない....何か隠している能力がある筈だ。)


 ジャンが組織にとってどちらが有利になるのか考えているとフェリスが持っていた銃を地面に落としたことにより事態は一変した。

 フェリスは自分の頬に手を触れてその手を見た瞬間に固まってしまっている。

 その光景を見たメンターは珍しく動揺した声をあげた。

「!?傷をつけられていたのか!」

「あたし.....の....血?何で....ケガした?... .あた...し」

 フェリスは自分の手に着いた少量の血を眺め狼狽えながら呟いている。

 その様子を見てメンターがジャンに警告をする。

「ちっ!手遅れか....伊藤ジャン、今すぐここから逃げるんだ!"ヤツ"が出てくる。」

「ヤツ?ヤツとは誰だ!」

 ジャンの質問にメンターは焦りながらも答えてくれる。

「フェリスにはリカルドというもう一つの"人格"がある。

 フェリスの体に障害が起きると出てくる防衛本能の様なもので何よりコイツが出てくると.....」



「"歯止めが効かなくなる"」




 暗闇の中で俺は目を覚ました。

 フェリスが呼んだのだろう....

 と言うことは"殺る事"は一つだ。

 俺はゆっくりと目を開けて事態を確認する。

(横にいるのは確かメンターとか言ってるヤツだったな?)

 コイツはまだ敵じゃない。

 今度は目の前のガキを確認する。

(俺に敵意を向けている....コイツか。)

 俺は今日の獲物を見つけてどう殺すか頭でシミュレーションをしながら形式的に質問をした。



「テメェが敵か?」





 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る