第9話「C」接触

 ジャンがメンターと接触する数時間、


 ジャンは早速、ローズから貰った権限をフルに活用して塔ヶ崎について調べ始めたが調査は中々進展しなかった。


 全く情報が手に入らなかったのだ。

 どんな完璧な人間でも何かしら追える様な痕跡を残してしまうものなのだが、塔ヶ崎に関しては全く当てはまらずF市の何処にいるのか?何の目的があるのかFHの情報網を全て使っても分からなかった。


 そんな中、ひとつの突破口が見つかった。

 奇しくも鹿波と姫尾の会話の中にヒントがあった。

 鹿波が教科書を失くした時に姫尾が言った言葉。

「物が失くなったら失くす前にやっていたことを思い出すといーよ♪」

 実は、全く痕跡を残さない塔ヶ崎唯一発見された場所があった。


 とあるF市の有名高校で起こったオーヴァードによる放火事件、これに塔ヶ崎は関わっていたらしく何と映像まで残っていた。

 ジャンは渡された資料の中から放火事件での映像データを確認する。

 そこには、数名の"UGNエージェント"と、

 塔ヶ崎の戦闘が記録されていた。

(どうやってこの映像を手に入れたのか大いに疑問が残るがそこは無視しておこう。)


 すると、塔ヶ崎が戦闘の途中で急に出現した"扉に入り消えてしまう"現象を目撃した。

 塔ヶ崎の能力は瞬間移動などではないため、協力者の能力だと推察できた。

 恐らく、この能力のおかげで塔ヶ崎はFHの追跡を振り切ることが出来ているのだろう。

 この事をローズに報告するとローズが一つの作戦を提案してくれた。


「先ずFHが塔ヶ崎を探していることをわざと周りに伝えて警戒心を煽ります。

 すると、また協力者の能力を使って移動することがあるでしょう...それを狙います。」

「マスターローズ狙うとはどう言うことですか?」

 FHの情報をわざわざ流して協力者の能力を使わせる事にジャンは疑問を呈する。


「私の部下であるバルデロも同じように空間移動の能力を持っています。

 この能力は重力を操る"バロール"というシンドロームに関係していまして.....まぁ、細かい説明は省きましょう。

 兎に角、空間移動の能力を使用する際、

 移動する座標に能力者のエネルギーが出現し安定させてから二つの地点を結び移動が行えるようになるわけです。」


「つまり、"入り口と出口"には能力を使用したオーヴァードのエネルギーの残滓が残るという訳です。」

「その残滓を手に入れる事が出来れば、移動する人物の座標が分かるのですか?」

「えぇ、私の懇意にしているWORKERを使えば可能です。」

「手筈は私が整えます。

 準備が出来たらジャンくんには塔ヶ崎の確保に向かってください。」

「承知いたしました、マスターローズ。」


 それから数日が経ち、ジャンは完成した探知機を使い付近を散策してみると近くの繁華街で反応があり急行するとそこには写真で見たことのあった男がタブレットを見ながら歩いていた。

 タブレットを閉じてジャンを見つめる男に俺は声をかける。


「お前が塔ヶ崎だな?」

 問われた塔ヶ崎は狼狽えず冷静に答える。

「同じFHのエージェントならコードネームで呼ぶべきじゃないかな?」

 ジャンはその問いを無視して話を続ける。

「お前にはFHを裏切り別の組織に加担している疑いがある。

 黙って俺についてくるのなら手荒な真似をしなくて済むのだが....」

「そうか、バレてしまってはしょうがないな。」

 塔ヶ崎は悪びれもせずに答えた。

「....FHを裏切っていると認めるんだな?」

「あぁ、君の言うFHに対して言うのなら、そうだな....裏切っているのだろう。」

「どういう意味だ?」

 ジャンは塔ヶ崎の言い回しに疑問を感じ尋ねた。

「私が忠義を尽くしているのは、マスターレイス14 黒須左京であってFHと言う組織には忠誠を誓っていない。」

「なら、何故?お前は黒須左京の元を離れて活動しているんだ?

 今のお前の行動も"左京"の指示か?」

 ジャンの発言を聞いた塔ヶ崎は苛立ちを顔に出しながら話す。

「貴様程度のエージェントが呼び捨てにして良い名前ではない.....そして残念ながら私のこの行動自体は我が主からの命令ではない。」

「だったら、何故お前は言うことを聞いている塔ヶ崎?」

「君達の追っている組織には個人的に、

 "借り"があってね....それは我が主も同じな様で私はあくまでその二つの借りを返すために協力しているに過ぎない。

 終わったら主の元に戻るつもりだよ。」

 ジャンは警戒しながら続けて塔ヶ崎に尋ねる。

「お前の言う組織とは一体何者なんだ?」

 その問いに対して塔ヶ崎は少し考えてから答えた。

「私個人としては教えてあげたい気持ちは山々なのだが....私も自分の命が惜しいのでね。

 そうだ....ヒントをあげよう。」

「ヒントだと?」

「あぁ、奴らの次の狙いを教えてやる。

 アイツらはとある能力を持ったオーヴァードを探していて私はその手伝いをしている。

 その能力者を使って何か仕出かすつもりらしい。」

「どういう意味だ?狙い?奴らとは...」

「一つ忠告をしてあげよう。」


 塔ヶ崎は重々しくジャンに語りかける。

「君と私は"似ている"....伊藤ジャン。

 主の為に行動し主の為に戦う。

 違いがあるとすれば私の主の方が君の主よりも"強い"と言うぐらいだろう。」

 今までジャンの名前を一度も言わなかった

 塔ヶ崎は俺の名前を言いながら話す。

 きっと、俺のボスについても知っているのだろうそう確信した。

「君の主を大切に思っているのならこの事件から手を引いて町を去れ。

 さもないと君の"大切な者"は全て奪われることになる。」

 そう言う塔ヶ崎の目には暗い光が灯っていた。

 まるで変えようのない現実を知っているかの様に重々しく説得力のある言葉で.....

「お前の手を貸している組織とは....一体何なんだ?塔ヶ崎....いやメンター!」

 俺はメンターの言葉に感じた不安感を振り切るように大声で威圧するがメンターは動じない。


「"神を作り神になろうとしている怪物達の巣"....それが君らの追っている物の正体だよ。」

「奴らの目的は何なんだ!俺のボスに何をする気だ答えろ!」

「ディアボロにはまだ危害は加わらないさ...君がこれ以上踏み込まなければね。」

 俺は直感的に理解した今すぐ塔ヶ崎から情報を得ないと取り返しがつかない事態になると....

 俺は能力を発動し腕から針を出現させる。

「私に拷問でもするつもりかね?

 こんな人混みの中で....」

「問題ない、ワーディングを使えば邪魔されることもない。」

 俺は焦りを感じながらもワーディングを使い付近にいる一般人を遠ざける様にしていた。

「成る程な....だが伊藤ジャン...いや決殺の針(デットリーニードル)と呼んでおこう。

 同じプロのエージェントとして」



「もう使われているぞ?ワーディングはな」

 その瞬間、ジャンの頭に衝撃が走り倒れた。

 直後、日傘を指したゴスロリの服を来た少女がライフルを片手にメンターの元に歩いてくる。


「ストーキングとは感心しないな。」

 メンターの言葉に頬を膨らませながら答える

「もー!助けてあげたのに、

 その態度は何よメンター<(`^´)>」

「だからと言って頭を狙うとはね.....」

「仕方ないでしょ〜このままじゃ家の組織のことバレる可能性有ったわけだしぃ(´Д`)」

「私はFHのエージェントだよ。

 仲間殺しは嫌われてしまう。」

「なら、メンターも正式に家に来る?

 歓迎するよ(*´∀`)」

「遠慮しておこう.....それに」

「まだ"決着"もついてないみたいだしね。」


 そう言いながらジャンの方を見ると体をふらつかせながらも立って二人を睨んでいた。


「嘘っ!何で生きてるのよ(゜ロ゜;ノ)ノ」

 少女は驚きながらジャンを見つめる。

 衝撃から回復したのかジャンは首を回すと二人に向かって拳を構える。

「何?あたし達と殺る気なの(*´∀`)」

「どうやらその様だね。」

 少女は笑いながらジャンに目を向けている。

「あははは!気に入った。

 相手してあげるよ( ^∀^)」

 少女は獲物に向けるような冷徹で歓喜に満ちた目をしながらジャンに伝える。



「美しく殺してあげるからね( ^∀^)」





 続く

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