番外編「B」父の受難

 小田嶋ユウサクはここ最近、気の抜けない日々を送っていた。

 シルエットと名乗るテロリストの偽物が現れたり支部長が本部から来た毛利さんに変わったり特戦の任務等色々あったがそれが理由ではない。

 彼が気の抜けない状態になっている一番の理由、それは


「良いかエマ、武器の選択はどんな状況にも対応できるように....」

「そうなんですね勉強になります高崎さん!」

 そうコイツ《高崎》が原因だっ!

(家のエマちゃんに近付いて何しとんじゃあこの男はっ!あんなに近い距離で話しおってからにぃ...)


 聞くところによるとエマは高崎のアドバイスにより自分専用の武器を作るらしくどの武器にしたら良いか高崎と相談していたのだ。

 ユウサクはそんなエマの姿を見るために援護課の仕事にかこつけて遠目から二人を見守っていたのだが、

親密な二人ユウサク視点を見てユウサクは嫉妬とストレスがどんどんと募っていった。

(あのガキぃ!

エマちゃんとあーんなに近付いて何話しこんどんのじゃあぁぁぁ離れんかぁぁ!!

せめて10m は離れろやボケぇぇ!)

 そんな事をユウサクが考えているとは露しらずのテンコが話しかけてくる。


「課長、ここにボード付けるんで壁に釘打ってくれますか?」

「!?あぁ分かっとるよ。」

 ユウサクは正気に戻るとトンカチを持ち壁に釘を打ち付けようとするがその瞬間、

「高崎さんの...って大きいですよね。」

 突如娘から驚きの言動が飛び出した。

(はぁぁぁぁあ!?)

 娘の発言に驚きユウサクはトンカチを危うくボードに打ち付けそうになる。

「何してるですか課長!?ボードじゃなくて壁に釘を打ってくださいよ!」

「あぁ、すまんすまんちょっと手が滑ってしもうたわ。」

 そう言って笑いながらユウサクは気を取り直してトンカチを振るおうとするが。


「そう言えば今度エマの.....触らせて貰って良いか?」

(ガァァァァァ!)

 ドゴッ!

「課長!壁に穴空いちゃいましたよ!」

(あんのガキぃ!エマちゃんに何て事言い寄るんやぁ...ブチコロして)

「良いですよ高崎さんには触って貰いたいですし。」

(くあゃたさたわかまなやぁぁぁぁ!)

 ドゴッ!ドゴッ!ガキン!

「課長やりすぎです!もう壁から鉄骨出ちゃってますって!」

 しかし、ユウサクの耳にテンコの声が入ってくることはない動揺によって完全に冷静さを失っているためだ。

「マジで?いやぁ前から触ってみたくてさけど良いのか?俺...下手だから壊しちゃうかもしれないぜ?」

「大丈夫ですよ私の...はそう簡単に壊れませんから」

(○◇▽□△○◎□!?!)

 ガン!ガン!ガン!ガンガン!

「課長ーーー!お願いだから正気に戻って!鉄骨曲がってきてるからぁ!」

 その声に反応しユウサクはテンコに顔を向けると話し始める。


「Еще рано для дочери дома!」

「課長、日本語を話してください。

 と言うか正気に戻ってください!」

「Μόνο αυτός ο τύπος πρέπει να το ξεφορτωθεί εδώ!!」

「課長ーーーー!」

 ユウサクのSun値はゼロに限りなく近い値まで削られ瞳も暗く落ち込んでいた。

 彼の耳にはもう高崎とエマの会話しか聞こえていなかった。

「そう言えば高崎さん...に行ったことあります?」

「いや、無いけど。」

「あそこの....すっごく...で病みつきになっちゃうんですよっ!」

「それで今度、お礼も兼ねて一緒に行きませんか?」

「おっ!良いね楽しみにしてるよ。」

(楽しみにしてるよ.....楽しみ?....何を?...タノシミ?....タノ...s)

(ブチッ!)


 この会話を聞いた後ユウサクは理性が千切れる音が聞こえた気がした。

 一心不乱にトンカチを振り下ろしていたユウサクの動きが急に止まる。

 テンコは無心でトンカチを壁に振り続けるユウサクを怖がり離れていたが止まった所を見計らい意を決して話かける。

「隊っ...課長?」

 ユウサクの異様な姿についつい本職の役職で呼びそうになるテンコ。

 呼ばれたユウサクはテンコの方に顔を向ける。

 そこでテンコは確信したユウサクが正気を失ったのだと。

 そこに写っていたのは白目を向き口から泡を吹きながらも睨み付けてくる人間じゃない何かの顔だった。

「GYAAAAAAaaaa!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 テンコは怪物を見た恐怖から大声を上げながらその場から逃走を図った。

 しかし、ユウサクだった者はその気配を察知したのかトンカチを振り上げたまま白目の状態でテンコを追い掛ける。

「隊長ーーー!恐いですから正気に戻ってくださいよぉぉぉ!」

「agtpdpw-JwptpmpapタカサキjgwpWAtpwptpdpjptgwgdpjpタカサキjgtpmpmgw」

「隊長ーーー!」

 もう人語が話せない状態の中所々タカサキの単語が聞こえることにテンコは疑問に思える余裕もなく逃げ惑う。

 すると、逃げている最中に運よく同僚であるソウマとミチを発見した。

(内の隊きってのアタッカーであるソウマを囮にすれば私は助かるかもしれない。)

 テンコは自分が生き残る為に二人に話しかける。

「おーい!ソウマぁ!ミチぃ!」

 テンコに呼ばれた二人はこちらに向き直る。

「ん?テンコどうし...」

「テンちゃん?どうし...」

 そして、背後から走ってくる人間を止めた隊長の姿を確認するや否や

「「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」」

 二人とも叫びながらテンコと同じようにその場から逃走を図った。

 そんな二人を見てテンコは焦る。

「ちょちょっと二人とも!逃げないで助けてよ。」

「無理に決まってんだろ!てか何だよあれ隊長か?」

「違うよソウマ!ミチ知ってるよあれはね怨霊って言うんだ。」

「dgtpwpAwjwkdqタカサキdgvgapmpmg」


「「「こえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」

「どーすんだよ?テンコ!このままじゃ俺達呪い殺されちまうぞ。」

「その為にあんたを呼んだのよソウマ。

 ちょっとこの怨霊足止めしといてよ私が無事に逃げられたら応援を送ってあげるから」

「ふざけんな!俺を人柱にしてんじゃ......

 おいミチてめぇも何とか言えよ。」

「ありがとう君の有志は明日まで忘れない。」

「勝手に死ぬ流れを作ってんじゃねー!

 それに明日になったら忘れるとかめっちゃ薄情だなテメェは!」



「GYAAAAAAaaa...TAKASAKIiii!!!」

「「「助けてくれーーー!」」」



 その後、騒ぎを聞き付けた毛利支部長の手によりユウサクは無事に取り押さえられるのだが後に毛利支部長は「エ○ァンゲリオンと戦っているみたいだった。」とその恐ろしい姿は暫くF市支部で話題になるのだった。



 父の起こした失態を高崎と共に謝りながら、エマは怒りを父の壊した壁の修理にぶつけていた。

「全く!何を考えているのよパパったら!」

「きっと、ストレス溜まってたんだろ?

 ほらっ援護課ってかなり差別されてたわけだし」

「それにしてもやりすぎです!他の援護課の仲間なんてパパの姿を見て暫く怯えてたんですからね!」

「しかも、理由をパパに問いただしたら、「不純異性交遊はいけませぇぇん!」とか意味不明な事を言い続けるし」

「何か心配するような事でもあったんじゃねーの?」

「もうパパの事なんて知りません!」


「あっ、そう言えば前の話の続きですけど

高崎さんの"使ってる刀"って大きいですよね?」

「ん?まぁ、俺の能力をフルに生かすためにも大きい方が使いやすいからな。」

「私の武器も大きくした方がいいのかなぁ?」

「それは人によると思うぜ。」


「それにデカさならお前のバイクだって相当なもんだろ?」

「そうですね...けど意外でしたよまさか高崎さんの趣味が"バイク"だったなんて」

「だってバイクってカッコいいじゃん!

 だから今度"エマのバイク"にも触らせて欲しいと思うんだけどさ俺って不器用だから

変に触って"バイク"壊しちまわないか心配なんだよな。」

「大丈夫ですって私の"バイク"は頑丈なんでそう簡単には壊れませんし。」


「それなら今度、試し乗りさせて貰うわ。」

「そう言えば前に話してた行きつけの店についてなんですけど」

「あぁ、Bar.CatTailだっけ?」

「はい、お世話になったお礼に父と三人で

行きたかったんですけどこんなことになっちゃったんでお礼は別のものでも良いですか?」

「別に気にしなくても良いぜ、でもまぁ残念ではあるな病み付きになる

"日替わり定食"食ってみたかったなぁ。」






 小田嶋ユウサク特戦の隊長であり頼れる男であるが娘の事になると暴走を引き起こす。

 彼の受難はこれからも続く。





 続く

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