番外編「A」回想と事件

 オーヴァードによる放火事件解決後、

 俺は識崎と同じUGNの協力者である

 イリーガルとなっていた。


 警察内部では普通の人間能力のないが起こす事件の捜査をしながらもオーヴァード関連の事件が起きた際は識崎と共に事件を解決するそんな日々を過ごしていたある日、

 俺は夜中に識崎に呼び出され『Bar.CatTail』に向かっていた。


 扉を開けるとウェイターである二人の男女が俺も向かえてくれた。

「いらっしゃいませーあっ黒観さん識崎さんはまだ来てないんですよ。」

「そうなのか、あの野郎呼びつけておいて遅刻とかふざけやがって。」

「おっさん、識崎に呼ばれたってことは副業の相談なのか?」

 UGNでの任務を知らないウェイターの二人には俺は識崎の探偵業を手伝う為にここで打ち合わせをしているとなっている。


「それと、タツヤ俺はまだオッサンじゃねーよ。」

「愚痴が増えてくるのは年取った証拠って言うじゃねーか?」

「何処ソースの情報だよ。」

「ん?ソース?焼きそばの話?」

 タツヤと同じくウェイターをしているカナちゃんが的はずれな質問を俺にかましてくる。

「....何でもねーよ何時も通り待たさせて貰うわ。」

「分かったよ黒観さん...飲み物はいつものヤツね?」

 いつもの注文が終わると俺は最初に識崎と話したビリヤード台に設置された椅子にこしかけた。


(それにしても、まさか俺がこういう店に入り浸る様になるとわな。)

 過去の事件のトラウマから逃げるために必死に仕事をしていた昔の俺にとってバーで休憩する自分の姿なんて想像できなかったからだ。

 能力が上手く使えるようになってから俺は定期的に蛮花町の見回りをしていた。

 また、アイツ《斬殺犯》にあった時は誰も殺させないで捕まえるそう覚悟を決めて


 そんなことを考えているといつもと同じようにハンチング帽とトレンチコートを着こんだ識崎が俺のもとに現れる。

「遅くなって申し訳ないね黒観くん。」

 識崎は申し訳無さゼロの表情と態度で俺に、謝罪の言葉を述べる。

「もう、テメェが時間を守れるなんて考えるのは止めたから問題ねーよ。」

「それで、今回はどんな任務なんだ?」

「いや、これはUGNからの依頼ではない。」

「あ?んじゃ何だ一緒に酒でも飲もうなんて言うんじゃねーぞ。」

「私としてはそれもやぶさかではないが、君は私達が最初に出会い解いた放火事件を覚えているかい?」

 黒観がオーヴァードとして生きる覚悟を決め始めてオーヴァードを捕まえた為、忘れられない思い出となっていた。

「あぁ、それで?」

「"残った事件"に進展があってね解決したいと思うのだよ。」

「!?まだオーヴァードが絡んでいたのか?」

 俺は識崎の言葉に動揺し席から立ち上がる。

「まぁまぁ、落ち着きたまえ。詳しいことは現場に行って話す。」

 そう言って立ち上がりバーを出ようとする識崎に俺はバーカウンターに会計として金を置き追従するのだった。



「さぁ、ついたよ黒観くん。」

 そう言って連れてこられたのは俺と識崎が始めてあったあの放火事件の起こったマンションだった。

「ここは」

「そうだ、君が放火犯から命を救った場所だよ。君が私の推理を疑いながらも協力してくれたね。」

「そりゃしかたねーだろ、識崎がオーヴァード何て知らなかったしそもそもオーヴァードに関しても半信半疑だったからな。」


 改めて考えると俺は良く識崎の意見を聞こうと思ったと考える。

 放火現場で犯人しか知り得ない情報をペラペラとしゃべり聞かせてくる....

 オーヴァードと分かった今なら納得できるが普通の人間だと思っていた当初だとむしろ捕まえなかっただけでも感謝して欲しいとは思うがな。

 そんな事を考えていると識崎が話し始める。

「今回、君を呼んだのはここに残っている犯罪者を表の刑事に捕まえて欲しいからだよ。」

「それは構わねーが一体何の罪を犯したんだ?」

「それを話すには先ず、放火された5号室と君の入った5号室の住人について話す必要があるね。」

「私がこの放火事件を知り現場についたとき5号室にとり残された息子を心配するように消防士に詰め寄る母親を見かけた。」

「母親の容姿や行動から私は、彼女の職業が水商売だと分かった訳だ。」

「だが、それは罪じゃねーだろ?何処に犯罪があるって言うんだ?」

「話はここから面白くなるんだよ。」

「この出火を消防に伝えたのは母親ではなく隣に住んでいる5号室の男性だったわけだ。」

「聞くところによると出火場がリビングだと言うこととそこに息子が入ることまで説明してくれたそうだ。」

「そりゃ、お隣なんだから息子が帰って来た時に挨拶ぐらいはするだろそれで知ったんじゃないのか?」

「出火の時出てきた彼の服装はスーツ姿で会社の入館証を首にぶら下げたままだった。

 しかも、出火は丁度学校帰りの昼過ぎだ。

 おかしいだろう?」

 確かに会社員ならその時間は仕事をしていて当然だし休んでいたとしても入館証を首から下げる意味がない。

 そこから導き出される答えは....

「急いで帰ってきた?」

「正解だ。」

「恐らく、あの母親が家にいる時間帯を盗聴器か何かで知っていて急いで帰ってきたんだろう。」

「けど、何のために?」

「そう言えば君の突入した部屋からこんなものが見つかったぞ。」

 そう言って俺に写真を見せてきた。

「.....これは」

「なっ?君の仕事だろ。」



 僕は何時になく興奮していた。

 ついに...ついに憧れの千夏さんの家を突き止めたんだ。

 そして、隣に住むことで彼女の生活ルーティーンも調べることが出来た。

 まぁ、盗聴器やら盗撮の機械を買うのに時間がかかったり放火事件があったりと数々の障害があったけど(警察に部屋の機械について聞かれたときは肝が冷えた。)

 それも今日で終わりだ。

(この時間に千夏さんは家に帰ってくる....子供は寝ているから問題ない...それに暴れられないように強化したスタンガンと縛るロープも準備した。)

(千夏さんを捕まえたら車で誰にも見つからない所に移してから...あんなことやこんなこと)

 僕は千夏さんとの妄想に花を咲かせていると下から登ってくる音がした。

(放火事件の影響でエレベーターが止まってるから階段で来るのは予想できた....それにこの音!間違いなく彼女のヒールだ。)

 僕は自分の部屋の扉で彼女を襲うスタンバイをし目の前に来るのを見計らって扉を開けようとした瞬間。

 扉から何かが勢い良く貫通して僕の首を絞め始めた。

(なっ....何だこれ!硬い....うっ人間の腕?)

 そう思いながら確実に絞まっていく腕に意識を、刈り取られながらも話が聞こえてきた。


「....本当に引っ掛かったよ。」

「流石、私の作戦だ。」

「にしても....ぶふっ!その、格好。」

「何だね私は最も安全で効率的な行動をしているだけだぞ。」

「けど....その格好でヒールはっ...ぶはっ!」

「見た目よりも実だよ現にほら?」



誘拐犯が、ひっかかった。」


 次の日の新聞に小さくだがある記事が掲載された。

『警察官、誘拐事件防ぐ!』

 黒崎が、オーヴァードになってから始めて、

 の逮捕案件だった。

 後に黒崎は語った。



「事件を解決できたのは嬉しいが個人的には」


「識崎のハイヒール姿が見れたので面白くてぶっちゃけ一番記憶に残った」と.....






 続く

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