第6話「A」犯人と爆炎

 識崎が黒観と共に来たのはF市にある有名な高校だった。

「さぁ、着いたぞ黒観くん。」

「着いたぞって...ここ学校じゃねーか。」

「その通りだ、さぁ入ろう。」

「待て待て待て待て、説明しろ。」

 何の説明もせずに入ろうとする識崎を黒観は止めて話を続けた。

「説明も何もさっき言ったろう?犯人がここにいるんだよ。」

「お前な...ここは高校だぞ被害を受けるなら未だしも犯人がいるようには」

「思えない...と言う顔つきだね、仕方ない説明しよう。」

 やれやれと言う顔つきで識崎は説明を始めた。

「この事件の犯人はオーヴァードの能力を確かめる為に5件の放火を行った全ての場所に高校生が使う通学用のバスの駅がある。

 そして、事件が起きた日にちは常に平日の昼間それも下校の時間とピッタリ合う。」

「そして、6件目の放火本命のこの事件の場所も通学バスの近くでかつ同じように昼間に起こった。」

「そして、最大の証拠は火の弱まったタイミングだ。」

「タイミング?」

「あぁ、バックドラフトで裏の窓が割れて爆発した後に火の勢いが収まっただろう?」

「この犯人の能力は炎を操ることで火が弱まったと言うことは?」

「直接爆発するのを見ていた?」

「その通りここの住宅街の裏には一軒家で大量にあってね五階のあの部屋が見える高さと位置の一軒家を探したんだ、当てはまったのは三軒その内この通学バスを利用しているのは一軒だけだった。」

 一枚の紙を見せてくれる。

「根津アカヤこの高校に在学している一年生、彼が犯人だ。」

「なっ!まだ子供じゃないか。」

「子供でもオーヴァードに覚醒する...寧ろ子供の方が多い位だ。」

 黒観は信じられなかった。

 これだけの事件を起こした犯人が高校生だと言うことに何とか反論の言葉を探していると、

 教室の窓から大きな火柱と爆音を確認した。

「.....どうやらちょっと遅かったみたいだね。」

「嘘だろ?」

「急ごう黒観くん手遅れになる前に」

 俺は識崎と共に学校の中に入っていった。




 僕はいじめられっ子だった。

 小学校から中学そして今の高校でもずっといじめられてきた。

 学校の先生にも相談したが取り合って貰えず家族にも相談できない。

 いじめは日に日にエスカレートしていった。

 ある雨の日だった。

 僕は、隠された通学カバンを校舎裏のゴミ捨て場で見つけて取り戻そうとしていた....その時だった。

「大丈夫かい?」

 僕の後ろから声が聞こえてきた。

 振り向くとスーツを着た男性が僕を見ていた

「手伝って上げよう。」

 そう言って彼が指を上に上げるとカバンが空を舞い僕の手元に戻ってきた。

 驚いている僕の肩に手を起き、彼は言った。

「君ならもっと凄いことが出来る」と


 彼は『メンター』と名乗り僕が最近の都市伝説になっているオーヴァードなのだと教えてくれた。

 僕は選ばれた存在なのだと故に力を示す必要があると....僕はメンターの教えに従い、

 力を身につけた。

「おい、アカヤ聞いているのか?」

 内の学校の教師が僕に話しかけている。

 コイツはみんなと同じように僕をいじめる最悪な教師だ。

「全く、さっさと返事をしないかお前みたいなグズがいるから....まぁいいこっちに来てこの問題を解け。」

 皆の笑い声が聞こえる。

 誰かがバカにされているこの空間を楽しんでいる傍観者の声だ。

 僕は先生の指示に従い先生の横の教壇の近くに来た。

 そして、先生に向けて手をかざした。

「アカヤお前何を....」

 僕は力を解放した手から高熱の炎が爆発となって横に火柱となって上がった。

 それを受けた先生だったものは吹き飛び外へと消えた。

 さっきまで笑っていた皆が呆然としている。

 数秒の沈黙の後、みんなが騒ぎながら外に出ようとしたのでもう一度大きな爆発を起こしこう言った。

「勝手に逃げることは許さない君達の命は僕...いや、俺が管理しているんだから」

 もう俺をいじめる奴も笑う奴もいない。

 今度は俺がコイツらをいじめて笑う番だ。



 教室から上がった火柱を見て私は計画の成功を確認し笑みを浮かべた。

「計画通り....いや、それ以上だね。」

 能力に覚醒してから1ヶ月でこれだけの力を使えるようになるとは、これだけの能力の兵士を短期間で育成できる事をセルリーダーに報告すれば間違いなく私の格が上がる。

 そうすれば何れ.....

「全てはいと高き御方の為に.....」




 続く

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