第2話「A」奇策と救出

 怪しげな人物から火災の起きている部屋にまだ人がいることを聞いた俺は近くの消防隊員に相談しよるとすると

「無駄だよ。」

 と怪しげな人物が止めるように言った。

「オーヴァードが起こしている火を普通の人間に止められるわけがない。」

「じゃあ、どうすれば良いんだ!中に人がいるんだろ?助けないと」

「黒観くん、警官なら冷静に対処すべきだ。」

 ふてぶてしく指摘する人物に俺は苛立ちを覚える。

(テメェが中に人がいるって言うから慌ててんだろうが)

「私が指摘した真実に苛立つのは筋違いだと思うぞ?それに私にも名前がある識崎だ。」

 喋ってない愚痴をまるで聞いたかのように反論され次いでに名前も聞かされた様子に俺が驚いていると言葉を続けた。

「それにね黒観くん。」

「私は助けられないとは一言も言ってないよ。」



「もうダメだ。」

 消防隊員の一人が弱音を吐いたのを見て、

 ベテラン隊員である自分が激を飛ばす。

「バカ野郎!消防隊である俺たちが諦めてんじゃねぇ。」

 そう言う反面、自分も彼らと同じく悲観的な感情になっていた。

(放水を続けているのに一向に弱まる気配がしない。

 これじゃあ突入隊も向かわせられない。

 ....どうすれば)

 そう思案していると大きな爆発音が聞こえた

 確認するとどうやら熱で裏の窓が割れてバックドラフト現象で燃えたのだろう。

(これじゃあ、もう内部はきっと)

 住民の報告によればまだ中に少年がいるらしいのだが救出できていない現在、

 生存は絶望的と考えた矢先、

 驚くべき者を目撃した。



 爆発の15分前...


「あの野郎!無茶言いやがって。」

 黒観は出火しているマンションの非常階段を急いで駆け上がっていた。

 何故、そうしているかと言うと俺は識崎怪しげな人物に言われた作戦を実行しようとしているからだ。


「良いかい?黒観くん、この放火を起こしている犯人は恐らくオーヴァードになりたてか今まで力を使ってこなかった人物だ。」

「五回も能力を使っていることとそれまで死者を出してないことから考えても慎重だが無駄は犠牲は出したくないと考えているのだろう。」

「その根拠は何なんだよ?」

「時間だよ黒観くん5件とも家主や家族が家にいない所で犯行に及んでいた。」

「きっと入念に調べたんだろうね、こんなこと愉快犯や放火魔なら絶対にしない。」


 確かにこれまで5件とも建物は燃えているが死者や外傷者は出ていなかった。


「この犯人の狙いは今日のこの事件を引き起こすことだったのさオーヴァードの能力だと疑われないように放火するためのね。」

「....おっと話が長くなりすぎた。」

 識崎がマンション目を向けて言った。

「黒観くん君が協力してくれるのなら中にいる人を助けられるぞ?」

「怪しいお前の言葉を信じろって言うのかよ?」

「まぁ、そうだな普通の人間ならば信用できないだろうね。」

「疑うのなら無視してくれて構わないよ。」

 飄々としながら識崎は喋っている。

「........本当に助けられるんだな?」

「勿論、私は嘘は言わない。」

「俺は何をすれば良い?」


 無事階段を上り5階にたどり着いた俺は

 5号室の扉を開いて識崎に言われた部屋へと向かった。

「向かってもらうのは5階の6号室のとなりの5号室だ。」

「火事の最中だから部屋の鍵も開いているそこからは宝探しの時間だ。」

「その部屋のどこかに大型の盗聴用の機械が置かれている場所があるはずだ。そして私の予想通りなら...」

 識崎の言った通りある部屋に大型の盗聴機が置かれている部屋があった。

 俺は呼吸を整えて盗聴機の壁に蹴りを入れた。

 すると、ドコっと言う音と共に壁が崩れて

 四角く区切られた穴が空いた。

(やっぱりアイツの言った通りだ。)

 中を覗くと、近くで倒れている子供を見つけた。

 そして、部屋の中央には大きな火の塊が浮遊していた。

(これが、オーヴァードの力ってことなのか)

 俺は辺りを見て子供を優しく運ぼうとした矢先部屋の窓に亀裂が入った。

(ヤバい!)

 直感的に危険を察知した俺は子供を引っ張り守るように体で覆った。

 その瞬間、バックドラフトが起こり凄まじい炎風が起こった。

(クソっ!背中が熱ぃ)

 背中に熱を感じながらを体を動かして扉を開けて外に出ると俺は気を失った。


 その後、俺と少年は無事に保護されたらしく俺は病院のベッドの上にいた。

 どうやらあの爆発が起こった後、急に炎が弱まったらしく急いで部屋に向かっていた所、俺と鉢合わせしたのだ。

 自分の五体の無事を確認しながらも俺は内心清々しい気持ちになっていた。

(俺、今度はちゃんと助けられたんだな。)

 過去の記憶を振り払うように事件解決に勤しんできた俺にとって人を救えたことが何より嬉しかった。

 すると、病室の扉がノックされ看護師が入ってきた。

「黒観さん目が覚めましたか、すぐ先生を呼んできますね。」

 看護師さんが戻るのを見ながら俺は上司への言い訳を考えるのだった。




 続く

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