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「まだ、灯りはつけないの?」


 彼。


 真っ暗な部屋、窓越しで曇り空を見ていたわたしに。いつも通り、話しかけてくる。


 さっきの流れ星は。


 窓に反射した、彼の携帯端末の光だった。


「電気。つけてもいいかな?」


「だめ」


 いつものやりとり。

 わたしは、暗いほうが好きで。彼は、明るいほうが好き。こんなところさえも、合わない。


「わたしたち。もう。終わりに、しよっか」


 恋が、終わる。

 音もなく。何の感慨もなく。

 ただ、終わる。そういう、関係。たぶん、もう二度と、会うこともない。


「わたしが出ていくね」


 太陽がいちいち動いたら、星座が変わっちゃう。雨粒は、小さくて軽いから。どこへでも飛んでいく。


 こんな。陰気な女は。風に吹かれて、いなくなってしまえばいい。


 窓を開けた。

 飛び降りてしまいたいような、気分だった。


「うわっ」


 風が強かったので。

 閉めた。


「だめだなあ。わたし」


 いっときの気分に流される。こんな場所で飛び降りたって。何も、変わりはしないのに。せめて、雨粒らしく。彼の見えないところで、ひっそりと、しのう。

 でも。結局。

 しねないんだろうな。

 みじめに。暗がりで、彼のことを思い出しながら。縮こまって、生きていくのかもしれない。


 なにが楽しいのかな。そんな人生の。わかんないや。

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