第37話話し合い(ヱン様視点)
「まさかそんな!?」
「ワイバーンたちだけではない。もうすぐ他の地上の生き物達もやって来る」
我が話をすると、広間に大きな騒ぎが起こった。あちこちで、そんなはずはない、他の街からの報告は!どうして今までで誰も気づかなかった!
煩いことといったら。まぁ、その気持ちも分からなくないが、何故他人任せな言葉ばかりなのだ。
騒いでいる間に少々観察してみる。すると騒いでいる人間達の中に、静かに部下だろうか、指示を出している者達がいた。そして隣を見ると、静かに立ち、しかしこれからの事を考えているのだろう、戦う意思が感じる、国王を見つめるグロリアの姿が。
さらに国王の方を見れば、国王も騒いでいる者達には目もくれず、数人の者達に指示を出している。
なるほど、使える人間がこれで分かった。騒いでいる人間はあまり役にたたんという事だな。
しっかりと状況を把握している者達は反応が違う。今自分がやらなければいけない事が分かっていて、そのために行動している。
「静まれ!!」
国王が大きな声で叫ぶと、一瞬で広間の中が静かになった。
「これから呼ばれた者はここに残れ!後の者達は呼ばれるまで各自の仕事に専念せよ!!」
国王の隣に立っていた男が、次々に名前を呼んでいく。やはり我の考えは間違っていなかったようだ。呼ばれた人間たちが頭を下げるのだが、その者達は先程、静かに部下に指示していた者たちだった。
「今呼ばれた者以外はすぐにここから退場せよ!!」
名前を読み上げた男がそう言うと、不安そうな表情をした者達が広間から出ていく。
「では移動いたしましょう」
我らが次に行った部屋は、そうだな、エリアス達が今使っている部屋と同じくらいの部屋だった。大きなテーブルと椅子が何個も置いてあり、各自椅子に座って行く。我とグロリアはテーブルの狭い方、椅子が3つ置いてある所へ。
少しすると、国王が部屋へ入ってきた。それと同時に皆が立ち上がりお辞儀をする。我は座ったままだが、何故この者達は、立ったり座ったりするのだ?
不思議に思っていると、国王が反対のテーブルの狭い方の、3つ置かれている椅子の真ん中に座り、国王が手を上げると皆が座った。だから何故すぐに座るのだ?今立ったではないか。
そしてここから話し合いが始まった。今奴らがどの辺りにいて、どの位の規模なのか。それを止めるために戦力がどの位必要なのかなど。我が話している間、皆何も言わずに静かに我の話を聞いていた。
「そんな規模のオークとトロールの群れが」
「知らせがなかたのは、逃げられた者達が居なかったからか」
皆が我の方を見る。
「奴らが通ったあとには何も残らん。おそらく誰も何も生きていないだろう。生きていたとしても、今どうなっているか。もちろん街もなくなっておろう」
我がそう言った瞬間、グロリアの体がぴくっと動いた。そんなグロリアをチラッと見た後、また話を進める。
今外に居るワイバーンやアースドラゴ達はこれから我と一緒に戦う事。おそらくこれからここに来る、地上の者達とも話し合い一緒に戦う事になる事。
そしてまだ完全に分かったわけではないが、おそらく我でも考えられな、予想外のことが起きているであろうことを話す。
「それはとてもありがたい。が、それならば、魔獣達を攻撃しないように兵達に言わなければ」
「大丈夫だろう、今頃ドラゴン達が上手くやっているはずだ。ドラゴン騎士を使ってな」
国王は頷くと、後で地上の者達が来たときに、戦略については話し合おうという事になった。下手に人間が我らの周りで戦えば、我らが動くのに邪魔になり、本来の力が出せないことがあるかもしれない。何しろ我々と人間では、力も動きも全然違うからな。
もし我が本気で攻撃したとき、近くに人間がいたら、オーク達と一緒に遥か彼方まで飛ばしてしまうか、一緒に殺してしまうかもしれん。
後は我と一緒に戦うのはここに居るドラゴン達や、人間か契約した魔獣ではない。我のいう事は聞いてくれるだろうが、人間とは上手く動けるか。そこでもめ事が起こる可能性もある。戦いが始まれば、そんなもめ事をしている場合ではない。まぁ、エリアスなら、どんな魔獣でも仲良くなれそうだがな。
今頃、フラワーバードと仲良くしているころだろう。ふむ、お互いが魅かれ合っているのならば、契約に手を貸そうか。
それからも話し合いは続き、いったん皆が部屋を後にすることになった。皆が外へ出ていくなか、部屋には我とグロリア、国王と国王の側に1人の男が残る。男の名前はテオリウス。ライオネルと同じような存在らしい。
「ヱン様が居てくださり、何と運の良かったことか」
「私が守りたいのは息子のムーとエリアスとその家族だ。それだけは覚えておけ。守るのはついでだ。ムー達が好きな場所を守ろうとしているだけだ。それと、地上の者達と話をしたあと、少々出かけてくる。何半日もあればすぐに帰って来る。奴らの進むスピードは遅いからな。ああ、お前達も準備をする時間はたっぷりあるぞ」
我はそれだけ言うと、グロリアを連れて部屋を出た。そして、
「グロリア、話をしたらヴィック達の様子を見てこよう」
そう言うと、グロリアは驚いた顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます