第11話ドラゴンおじさんもお勉強

 ムーちゃんとお友達になって、ドラゴンとおじさんがかあ様にとっても怒られて、その日から、ドラゴンおじさんもお家に住むことになりました。

 

 誕生日の日、僕達が一緒に寝てから、ドラゴンおじさんまた怒られちゃったんだって。それでかあ様が、ドラゴンおじさんにお家に一緒に住んで、おじさんもムーちゃんと一緒にお勉強しなさいって言いました。

 ドラゴンおじさんは最初嫌だって言ったんだけど、かあ様がもっと怒ったら分かったって。だから今みんな一緒にお家で暮らしてます。


「ムーちゃん、おにわいこ!」


「エリアスちゃん、絶対にお家の壁からお外にいっちゃダメよ!」


「は~い!」


 僕この前、ムーちゃんと一緒に、街のお菓子たくさん売ってるお店に遊びに行こうとしました。そしたらムーちゃんは一緒に行けないって言われちゃったんだぁ。えっとねぇ、王様じぃじやとう様が良いって言うまで、お家の周りにある壁から、お外に出ちゃい行けないんだって。ドラゴンおじさんも。


 せっかくムーちゃんとお外で遊びたかったのに。それに街を案内してあげたかったの。僕達みんなでしょんぼりです。

 でも、お庭までだったらお外で遊んでも良いって。お庭で遊ぶ時は、エアイオネルがお店でクッキーを買ってきてくれます。ムーちゃんに焼かないでねって言って、みんなで食べるんだよ。

 早く王様じぃじもとう様も、街で遊んで良いって言わないかな。


 今日もお庭でみんなで遊んでからクッキー食べます。ドラゴンおじさんは…僕達のお隣でかあ様がお勉強です。魔法のお勉強だって。


「エン様が力をコントロールしているのを見れば、ムーちゃんも真似をします。子供は親を見て育つのですから、いい加減な事をしてはいけません。さぁ、練習です!」


「………なぜ我がこんな事に」


 ブオォォォォォッ!! 大きな火の玉がかあ様が作った結界に当たって、お母さんの結界が壊れて、僕達の方に風がブワァって吹いてきました。そのせいでクッキーもお茶も全部飛んじゃった。僕達のクッキー! 

 みんなでドラゴンおじさんを怒ります。ライオネルがササってお片づけして、新しいクッキーとか用意してくれました。


「エン様! 今の結界が壊れないくらいまで、魔法のコントロールをしなければ。もしムーちゃんが同じ事を結界なしでしたら、お屋敷に穴が空いてしまいます!」


「………はぁ。分かったわかった」


 もう何で僕達のお隣でお勉強するの! みんなでちょっと離れた場所でおやつ食べます。お家にいる騎士さん達が練習する場所で練習すればいいのに!

 

 お家の後ろにとっても広い場所があって、そこでとう様やゲリーさん達や騎士さん達が、剣の練習したり、魔法の練習します。みんなの練習する所です。だからドラゴンおじさんもそこで練習すれば良いんだよ。


「エリアス様、練習場も壁の外ですよ。まだ外には出られませんよ」


 あっ、そうか。お庭から行けるから間違っちゃった。


 ドラゴンおじさんがまた魔法使います。今度はお母さんの結界にぶつかって、おじさんの方に火の玉が飛んでいって、そしたらおじさんが火の玉をしっぽで叩いて、お空に飛ばしちゃいました。どんどん火の玉見えなくなって、遠くの森の方に消えちゃった。


「我の顔に当たるところだった。あのくらいの火に当たろうがなんて事はないが、当たらない方が良いからな」


「………森の方へ行ったわね。何も起こっていなければ良いけれど。エン様!!」


 かあ様がまた怒り始めちゃった。


「ぷるちゃん、ウルちゃん、ムーちゃんおへやいこ」


 怒ってるかあ様ダメダメ。僕達怒られてないけど、なんか逃げなくちゃ。ライオネルが僕のお部屋にクッキー持って来てくれるって。みんなでお手々繋いでお家の中に入ります。

 

 おやつ食べ終わって、窓からかあ様達見てたら、かあ様もドラゴンおじさんも、ずっとお庭でケンカしてました。


      *********


 エリアスの誕生日パーティーが終わってすぐ、トラッシュに帰った陛下と俺は、陛下にまだ他のドラゴン騎士達には話をするなと言われ、何日かは落ち着かない気分で過ごす事になった。

 陛下は側近を集め、これからの対応について話し合いをすると言っておられたが、なかなか話はまとまらないようだ。


 当たり前だろう。いきなりのエンシェントドラゴンだ。しかもその息子だとムーを連れてきたと思えば、すでにエリアスと契約をしていると言う。

 ドラゴンとの契約は我々にとってとても素晴らしい事だが、今回は問題だらけだ。


 幼すぎるエリアス。そして同じく幼いムー。周りがどう思うか。思うだけで手を出してこなければ良いが。幼いエリアス達をどうこうする者達が現れたら。

 俺達の国にそういう輩がおると考えたくはないが、他国からエリアス達を狙う者が現れるかもしれない。

 幼い2人だ。洗脳魔法を使われれば、すぐに自由は奪われ、力として利用されてしまう。

 かと言って、ずっと黙っていることは不可能だ。隠したところでいつかは必ずバレる。エリアス達がじっとしていられるわけもないしな。


「どうしたコステロ。帰ってきてから、ずっと難しい顔をしているな。新人の悩みか?」


 声をかけてきたのはドラゴン騎士団団長パーシバル隊長だ。そしてその隣には副隊長のウィリス副隊長と、他にもボウルズさん、クーパーさん、ホールさんが、俺の背後に立っていた。


「どうしたんですか? 悩み事なら私達に話してみては?」


 今のはウィルス副団長だ。


 せっかく声をかけてくれた団長達に、まだ話す事が出来ないないため、思わず黙ってしまう。


「それにしてもあいつらもこの頃コソコソ、何を喋っているんだか」


 今度はクーパーさんだ。


 そう帰って来た日、陛下も動揺なされていたのだろう。ガルダー達にはエン様の事を仲間に話すなと言われなかったのだ。

 ガルダー達は帰ってきて早々にエン様のこともムーのことも、そしてエリアスの話もしてしまった。それからずっとエン様の話で盛り上がっているのだ。

 ただ俺や陛下が、他の騎士に話をしていない事は分かっているので、団長達に話を聞かれないように、自分たちだけで集まり結界を張って話をしている。


「どうした? 話せないのか? そんなに重大な悩みなのか?」


 ボウルズさんだ。


「申し訳ありません」


「良いさ、そういう事もあるよな。誰にだって話せない事の1つや2つ」


 ホールさんに言葉にウィリス副隊長が、


「それはこの前、私に届いたはずの贈り物のクッキーを、あなたが内緒で食べた、というような事ですか?」


 しまったと、逃げようとするホールさんを副団長が捕まえ、思い切り腹を殴る。膝をつくホールさん。


 そんなに俺達に召集がかかったのは、さらに5日後の事だった。

 騎士団の宿舎に集められたのは団長を始め、今任務についていない全てのドラゴン騎士だ。おそらくエリアスの話だろうと分かっていた俺は、まさかその話、陛下が宿舎まできて直々にお話になるとは思っていなかった。側近のクレランス殿が話に来られると思っていたのだ。

 

 こんな男ばかりで綺麗とは言えない宿舎に陛下が来られるなど、いつもどんな事があっても大抵は驚かない団長が流石に驚いていた。


「良いか皆のものこれから話す事は、わしが国民に発表するまでは他言無用じゃ。お前達を信用して話すのじゃ。もし話さないと自信がない者は、今すぐここから出て行き、そして新たな任務にはつけないと思うが良い」


 集まった全員がビシッと達敬礼をする。陛下は頷くと、エン様とムー、エリアスの話を始めた。


 陛下のお話に宿舎の中が大きくどよめく。そしてこの話を外で聞いていたドラゴン達は大騒ぎだ。

 

 陛下がお話になられた事。それはエリアスとムーをここへ招き、ドラゴン達にムーの訓練をして欲しいというものだった。それからエン様も同様に、ここで訓練すると。

 伝説のエンシェントドラゴンがここに、という決定に、ドラゴン達は大喜びし、窓から外を覗けば、空をぐるぐる飛んでいるドラゴンもいる。


 話を続けられる陛下。エリアスとムーとの出会い、エン様による我々への願い。全てをはなし終わると、次はこれからについての話しになった。


 まず、陛下は国中そして街へ、エリアスとムーが契約した事を伝へ、そしてあの時エン様がおっしゃった事を、そのまま国民へ伝える。エリアスとムーに変な事、例えば無理やりにドラゴン騎士になるように仕向けたり、手を出そうとすれば、街どころか国がなくなる可能性がある事なども付け加えると。


 次に、国民にその情報が浸透したら、エリアス達をここへ招き、ムーの訓練をドラゴン達に任せると。

 それを聞き、またドラゴン達が騒ぎ始める。何しろドラゴン達はどんな事でもいい、エン様とムーと関わりたいのだ。


 話が終わり、陛下は準備があると急いで馬車に乗り込む。その時私は陛下に直々に、陛下が国民に発表後、エリアス達を迎えに行くという命を受けた。

 陛下が去ったあと、団長が俺に話しかけてきた。黙っていたのはこの話かと。頷けば、俺の背中をバシバシ叩きながら、外へ出て行ってしまった。副団長達も俺を見て、ニヤニヤ笑っている。


 この話し合いが行われ、それからいろいろと準備などをし、陛下が国民へとエリアス達のこと発表されたのは、さらに10日後の事だった。

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