第10話ドラゴンおじさんとかあ様

 炎がムーちゃんのお口から、ブワアァァァァッ!! って。

 それで炎が消えたら、まだ焼いてなかったお肉が、ちょうど僕達が食べられるくらいに焼けてて、それから周りにあったお野菜が全部真っ黒になってました。パラパラって、風で飛んで行っちゃってます。

 

「おお~!」


 僕とぷるちゃんとウルちゃんは、拍手したり震えたりおしっぽ振ったり。ムーちゃん凄いね。それにお野菜も無くなって僕嬉しい。僕お野菜嫌いだもん。苦いお野菜とか辛いお野菜嫌いなの。でもムーちゃんが焼いて無くしてくれたから良かった。ありがとう。


 僕達がムーちゃんのこと凄いすごいってしてたら、ニコニコのムーちゃんがちょっと離れて、またブワアァァァァッ!! って炎を口から出しました。さっきよりもちょっと大きな炎です。


 そしたら今度はお肉が半分くらい黒くなっちゃいました。ダメダメ、焼きすぎだよ!

僕達はムーに焼きすぎだよって教えてあげようとしました。

 でも向こうでとう様達とお話し合いしてたドラゴンおじさんが、ニッて笑いながら、パチパチ拍手してます。おじさんダメだよ。焼きすぎだよ? 食べる所なくなっちゃうよ。


「すごいじゃないかムー。こんなに早く力が使えるとは。さすが我の息子だ」


 おじさんがムーちゃんの頭なでなでします。ムーちゃんニコニコです。


「だが消すのであればもう少しだな。こうやるんだ」


 ポンッ! おじさんが急にドラゴンに変身しました。それでムーちゃんみたいにお口から炎を出します。でもムーちゃんみたいな炎じゃなくて、もっともっと大きい炎です。

 ドラゴンおじさんの炎はお肉と野菜があった所をぐるぐる回って、そのあとすぅって消えました。


「あらぁ~」


 ムーちゃんがコンガリ焼いてくれたお肉が真っ黒くなって、それから真っ黒なってたお野菜は、全部消えちゃってました。僕のお誕生日のお肉…。また食べるって楽しみにしてたのに。

 

 僕はドラゴンおじさんの所に走って行って、僕達のご飯ダメにしちゃったドラゴンおじさんのこと怒りました。


「おじさん、ダメよ! おにく食べれなくなっちゃった! ぼくのおたんじょびのごはん! なんでまっくろくろにしちゃったの!」


『ぷるるるん!!』


『ぼくたちの、よるのごはんだよ!』


 僕達に怒られておじさんお目々がキョロキョロです。それからごめんなさいして、すぐに新しいお肉持って来てくれるって。だから待っててくれって。

 お家からドラゴンの姿で飛んじゃうと街の人がびっくりしちゃうから、また人間の姿に戻って、お屋根の上飛んでどっかに行っちゃいました。


 とう様達が真っ黒くろになっちゃったお肉と見て、何かお話してます。僕達はお肉を木の枝で突いてみたけど、ツンってしたらパラパラパラって、お肉なくなっちゃいました。さっきのお野菜みたい。


 おじさんはすぐに帰って来ました。それからもう大丈夫だぞって言って、おじさんのお隣に大きなちょっとだけ明るい丸を作ります。魔法? って聞いたら、荷物をしまって置く魔法だって。

 その中にお体半分入れちゃったおじさん。出てきたらお手々に大きな大きな鳥さん持ってました。うんとねぇ、ドラゴンおじさんより小さいけど、人間のおじさんよりは大きい鳥。それなのにおじさん片方のお手々で持ってるの。凄いねぇ。


「ロック鳥!?」


 とう様が鳥さん見てそう言いました。この大きな鳥さんロック鳥って言うんだって。


「今この近くの森で1番美味しい魔獣はこいつだ。すぐに見つかって良かった」


 おじさんがぽんってロック鳥を投げたら、近くにあったテーブルの上に落ちて、テーブルがバキバキバキッ!! 壊れちゃいました。

 僕達はそれに近づいて、ロック鳥のことツンツン指で突いてみます。ロック鳥のくちばしね、僕やぷるちゃんもウルちゃんも、みんなお体全部入っちゃうくらい大きいんだよ。

 後ろからにぃに達が来て、にぃに達もお羽触ったり叩いたりします。


「これおしい?」


「う~ん、どうかな、僕ロック鳥なんて食べたことないよ」


「エン様が美味しいって言うんぜ、きっと美味しいよ」


 にぃに達とお話してた時でした。かあ様がすすすって歩いてきて、僕達にとう様の所に行ってなさいって言いました。

 僕かあ様のお顔みて、すぐにぷるちゃんを頭の上に乗せて、ウルちゃんはムーちゃんの頭に乗せて、ムーちゃんのお手々繋いでとう様達の所に行きます。


「にげてにげて!」


 早く歩いてとう様の所まで行ったら、すぐにとう様の後ろに隠れました。にぃに達も一緒だよ。

 

 あのね、かあ様のお顔、怒ってる時のお顔でした。少し怒ってるんじゃなくて、とっても怒ってる時のお顔。あのお顔してるかあ様は凄く怖くて、僕1番嫌なお顔です。ぷるちゃんもウルちゃんもおんなじ。だからいつもあのお顔のかあ様の時はすぐに逃げるんだよ。えとねぇ、この前僕がお家の壁にお絵かきしちゃった時も同じお顔でした。


『ギャウギャ?』


『あのね、こわいから逃げないとダメなの』


『ギャウウ?』


 ムーちゃんは初めてかあ様の怒ってるお顔見たから、良く分かんないって、じぃ~って一生懸命かあ様のお顔見てます。

 

「何を考えているのですかっ!!」


 急にかあ様が大きなお声で怒ったから、僕達ビクッてしちゃいました。ムーちゃんもビックリ。とってもビックリして、ちょんって座っちゃったんだ。でもすぐに立って僕達の後ろに隠れます。

 隠れたムーちゃんに僕達一生懸命ムーちゃんに教えます。かあ様のお顔覚えておいてって、絶対忘れちゃダメって。ムーちゃんうんうん頷きます。


「エン様はムーちゃんの教育をと申しましたが、貴方様もムーちゃんと変わらないではありませんか!」


 おじさんお目々まん丸で、とっても驚いたお顔してかあ様見てます。


「ムーちゃんにやり過ぎを注意するどころか、褒めて自分からさらに強い炎を吐いたりして。せっかく今日のために用意した食材を無駄にして、まったく何をなさっているのですか!」


 かあ様止まらなくなっちゃいました。おじさんが何かお話しようとするけど、かあ様がずっと怒ってるから何も言えません。


 かあ様はおじさんがムーちゃんと一緒に魔法使って、ご飯食べられなくしちゃった事や、それから魔法が強すぎて、もしかしたら僕達がお怪我しちゃったかもしれない事、あとは勝手に大きな魔獣捕まえてきて、それをなげてテーブル壊しちゃった事。いろいろな事怒ってます。


 最初何か言おうとしてたおじさんが、だんだんしょんぼりおじさんに変わっていきます。でもかあ様怒るの止まりません。


「だいたいエン様は、ムーちゃんに教育を頼みたいとおっしゃいましたが、今貴方様がやられた事は、それとは全く反対のことですのよ!」


 とう様がにぃに達と一緒にお部屋に行ってなさいって。後でまた呼びにきてくれるから、そしたらお庭でまた遊んで良いって言いました。

 僕はムーちゃんとお手々繋いで、それからムーちゃんの反対のお手々はラッセルにぃにが、僕の反対のお手々はダレルにぃにが繋いで、みんなでお部屋に戻ります。


 お部屋に行って、ムーちゃんに壊しちゃいけない物教えます。僕の大切なぬいぐるみとかおもちゃとか、それから絵本もダメだし、さっきみたいに真っ黒くろはダメ。うんとね、お部屋の中の物だけじゃなくて、おうちの中の物全部もやしちゃダメ。


『あのね。これは全部大切な物なんだよ。これさっきみたいに焦がしちゃうと、みんなが怒るからね。こわい怖いだよ』


『ぎゃうぎゃ!!』


『えっとね壊すって言うのは、う~ん、破いたり割っちゃったり、それから…僕上手にお話できない』


「なんか僕ムーちゃん危ない気がするする。とう様はお部屋の中にいなさいって言ったけど、みんな玄関ホールに行こう。ルーファス呼んでくる。ルーファスに説明してもらおう!」


 みんなで玄関ホールまで戻って、ラッセルにぃにがお外に走っていきます。すぐにルーファスとにぃにが戻ってきました。

 ルーファスがお家の中歩きながら、ムーちゃんにいろんな事教えてくれます。料理人さんに要らないコップもらって、ルーファスがそれを割って、ムーちゃんに壊れるのはこういう事って教えてくれたり、とう様が捨てた紙を拾って破いたり、うん、いろんな事。ムーちゃん静かにルーファスのお話聞いてました。


 お家の中ぐるぐるしてたら、やっとライオネルがお外に行っても良いって、呼びに来てくれたから、みんなで走ってお外に行きます。

 お外に行ったらおじさんが、ドラゴンおじさんに変身してしょんぼりしたお顔で、さっき持ってきてくれたロック鳥をバラバラにしてました。


 そっとかあ様のお顔見ます。かあ様もう怒ってない? ムーちゃんもビクビクしてかあ様のお顔見てます。


「エリアスちゃん、そんなお顔してどうしたの?」


 かあ様いつものニコニコお顔に戻ってました。

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