第12話絶対助けるよ!そしてある人達…
急いで子ファングのお父さんの所に向かいます。夕方会った時は元気だったのに、こんなに急に穢れって襲ってくるの?僕の前に乗っかってる子ファングはポロポロ涙流してます。すぐに安心させてあげたくて、抱きしめてあげたかったけど、今の僕じゃオニキスの上に乗ってるだけで精一杯。着いたら抱きしめてあげるから、もう少しだけ我慢してね。
ライが周りを明るくしてくれるから、暗くてもスピード上げて走ることが出来ます。ファングの縄張りに入って、少し行った所に、たくさんのファングが集まってました。すぐにお父さんファングの所に行こうとしたら、その手前でオニキスが止まって、木の陰に僕を下ろしました。
「どうちたの?はやくいこ。」
「ハルト、子ファング。お前達はここに隠れていろ。良いと言うまで出てくるな。」
「オニキシュ?」
「…人間が居る。どんな人間か分からん。盗賊かも知れないから、絶対に出てくるな。いいな。」
そう言って、僕達を残してオニキスはお父さんファングの所へ。え?人間?僕は木の陰からチラッと覗きます。暗くてあんまりよく見えないけど、確かに人みたいな団体がファング達と反対の方向にいるような。
「とうしゃ…。」
そうだ。今はそれどころじゃない。子ファングを落ち着かせてあげないと。僕は子ファングをぎゅっと抱きしめます。
「だいじょぶ。オニキシュ、たしゅけりゅる。しゅごいんだかりゃ。」
「うん。」
ブレイブも僕達の足元で跳ね回って、大丈夫って言ってるみたい。フウとライが交代で、状況を教えてくれます。オニキスは安全のためって言って、ライの光り使わないで、月の光だけで穢れを祓おうとしてるんだって。他のファングは、人間威嚇して近づかないようにしてるみたい。頑張ってオニキス!
でもどうして人がここに居るのかな。どこから来たんだろう。この前木の上から見た時は、街とか道とか何にもなかったよね。わざわざこの森に来たってこと?何しに?オニキスのいったとおり、盗賊とかだったらやだな。もし戦って皆んなが傷ついたら嫌だもん。もしかしたら、死んじゃうかも知れないんだよ。
もう、気になること多すぎだよ。人のこと気にしながら、オニキスの様子見てきたフウに、子ファングのお父さんどうなってるか聞きました。
「どう?だいじょぶ?」
「オニキス頑張ってるの。でも、穢れが濃いって言ってるよ。」
「こい?」
「そう。穢れが濃いと、なかなか治らないの。」
穢れが濃いってことは、薄い穢れもあるの?オニキスが倒れてた時は、たくさんの穢れが集まりすぎたって言ってたし、今度穢れのこともっと勉強して、祓い方の魔法練習して、お手伝い出来たらいいな。お友達の魔獣も家族も僕守りたいもん。子ファングの頭なでなでしながらそんなこと考えてたら、ライが戻って来ました。人の様子見に行ってたんだけど、今は人は動く気がないみたいって。じっとこっちの様子見てるって言ってました。良かった。とりあえずは、お父さんファング助けるまで、そのまま動かないでくれるといいな。
「ハルト…。」
オニキスが戻ってきました。子ファングが駆け寄ります。
「とうしゃ、なおったでしゅか?!」
「………。すまない。あまりにも穢れが濃すぎて、俺にも祓えない。」
「とうしゃ!!」
子ファングが走って、群れの中へ入っていきました。そんな助からないの?だっていつも会ってたのに。子ファングの大好きなお父さんなのに。オニキスは首を振って静かにお座りしました。ファング達がワフワフ、次々と鳴き出しました。お父さんファングを見送るための鳴き声だって。ずっと泣いて待ってた子ファングを思い出して、僕はもっと悲しい気持ちになっちゃった
…僕なら治せないかな。オニキス助けた時みたいに、助けられないかな?
「オニキシュ。ぼく、だめ?たしゅけられない?オニキシュたしゅけまちた。だかりゃ。」
「だめだハルト。今回は穢れが濃すぎる。もう少しで助けられるなら手伝ってもらおうと思ったが、あれはダメだ。この前みたいに、上手く行くか分からない。もし失敗したら、今度はハルトが穢れに襲われて、死んでしまうかも知れないんだ。」
「でも…。ぼく、子ファングかわいしょう。ぼくやってみちゃい。」
「ダメだ。人間だって居るのに、もしその途中で襲ってきたら。」
「ぼくやりゅ!!」
オニキスが止めたけど、やっぱり何もしないまま、お父さんファング死ぬのやだもん。子ファング泣くのやだもん。
僕は転びそうになりながら、ファングの群れの中に入って行きました。オニキス達も慌てて、後をついてきます。この時の僕は、助ける事しか考えてませんでした。
<ある領主視点>
まさかだった。案内されて最初に向かった場所には何も情報がなく、周りを確認しようと森の奥へと進んだはいいが、ファングの群れに遭遇してしまうとは。すぐに戦闘の態勢を取った。しかし…。
ファング達はいっこうに俺達を襲って来なかった。それどころか、何かを守るように、俺達が近づかないように威嚇してきた。何だ?何かあるのか。観察していると、そこに奴が現れた。
ロードファング。俺達が探していたロードファングだろうか。そうはいない魔獣の上位種だ。間違いないと思うが…。
ロードファングは俺達をチラッとみた後、すぐにファングの中心へと歩いて行き、何かを始めた。木の上から様子を伺っていた冒険者が報告してきた。どうも中心に倒れているファングがいるらしい。そしてそのファングは穢れに襲われたのではないかと言ってきた。その冒険者も汚れを払う力を少しだけ持っているため、感覚で分かったらしい。その穢れをロードファングが祓おうとしているのではないかと。
ファング達と俺達との睨み合いは続き、少し経った時、ロードファングが歩き出し、木の陰へと消えていった。倒れてていたファングはそのままらしい。ダメだったのか?それからすぐ、ファング達がいっせいに声をあげ始めた。仲間へのとむらいか?
と、ロードファングが消えた方から、ガサッという草が動く音がした。そして俺の部下が声をあげた。
「キアル様!あれは!」
私は目を疑った。まさか小さい小さい、あれは2歳くらいか。本当に小さな子供が現れた。そしてファングの中心へと入って行った。その後ろから、さっきのロードファングが慌てた様子で子供を追ってきた。ファング達も子供を襲う様子はない。一体どうなってるんだ。
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