第9話森の中探検。知らない物だらけ

<あるまちの冒険者ギルド>

「それは本当なのか。子供とロードファングがいたと言うのは。」


「ああ、連絡してきたのはシスだからな。見間違いってこともあるかも知れないが、まあ、間違いはないだろうな。」


 複数の男達が、冒険者ギルドのマスター室で話合っていた。1人はこの街の領主。もう1人はこの冒険者ギルドのギルドマスター。他、主要メンバーが集まっている。晴人とオニキスを見かけたシスという冒険者が、冒険者ギルドにその事を報告したため、緊急の招集がかかったのだ。シスがハルトを目撃して2日が経っていた。


 これからどうするのか。助けに向かっても、もう生きては居ないだろうという意見や、それでもロードファングが目撃されたいじょう、確認に向かうべきだという意見。もしかしたらまだ子供が、何かの拍子に生きているかもしれないという意見。様々な意見が出される中、領主が手をあげ、皆を静かにさせる。


「子供が生きているにしろ、死んでいるにしろ、何かしら身元が分かるものがあるかも知れない。それに、本当にもし生きているのなら、助けに行かなければ。捜索隊を編成しよう。ランクはA以上。相手はロードファングだ。参加は自由としよう。もちろん俺は行くがな。」


 領主自らが捜索隊に参加する。その情報とともに、ギルドの依頼掲示板に、捜索隊への参加希望の依頼が張り出された。


「どれだけ、集まってくれるか…。」


 領主の小さい囁きが、ギルドマスターの耳にだけ届いていた。


<森の中>

「ふゆゆ。おはよ、ごじゃいましゅ。」


「起きたか?」


「「ハルトおはよう!!」」


 ご飯を食べて、今日は何がしたいか聞かれたから、今日は森の中探検したいって言いました。だってここには、僕が知らない物ばかりだから。もしかしたら地球にもあったかも知れないけど、多分違う物ばかりだと思うんだ。

 トイレしてオニキスに浄化してもらって、洋服と体も浄化してもらいました。何て便利な魔法。僕も魔法の勉強したら、出来るようになるかな?


 今日もオニキスに乗って出かけます。オニキスが最初に連れて行ってくれたのは、この前の花畑。ここはオニキスが1番好きな場所なんだって。いろいろな花が1日も欠かさずに、毎日咲いてる所なんだって。


「この花は、蜜がとっても美味しいんだよ。ほら舐めてみて。」


 フウが教えてくれたピンクの花、チューリップみたい。それを1つだけ摘んで、蜜舐めようとして、花びらを取ろうとしたんだけど、そうじゃないって。そのまま花を傾けろって。コップみたいにするのかな?言われた通り、コップみたいにして花びらに口つけてみました。そしたら甘いとっても美味しい蜜が、口に流れ込んで来ました。


「おいちい!!」


「でしょう。僕達妖精は、皆んなこの蜜が大好きなんだよ。」


「摘まないで、うまくそのまま飲めれば、次の日にはまた蜜がたまってるんだ。オレ毎日飲んでた。」


 そっか、それ先に行って(言って)くれれば良いのに。摘んじゃったよ。あれ?この花。オニキスが花のすぐ下から、茎折ってみろって。ポキンって音がしました。さっきは普通の茎だったのに、今はガラスみたい。それでね花の部分も、カチカチに固まってた。この花、本当にコップみたいになっちゃった。


「しゅごい!」


「この花は、摘んで少し経つと、こうして固まってしまうんだ。森にいる魔獣の中には、この花を道具として使っている者もいる。」


 器用な魔獣なんだね。ファングとかはもちろん使わないって言ってたけど、うーん。どんな魔獣なんだろう。そのうち会えるかな。


「でも、フウがそれをハルトに教えて良かった。ハルトこれでお前は、水が飲みやすいだろう。」


 そうだね。昨日とかも湖に行って、手で一生懸命に水すくって飲んでたんだ。木の実だけの水分じゃ足りなくて。でも手は小さいし飲みにくいし、大変だったんだ。この花コップがあれば、楽に水が飲めるね。

 その後も、この花は蜜が苦いからダメとか、何もしなければ良い匂いの花なのに、触ると臭い匂いになる花とか。1番面白かったのは、触ると色が変わる花です。最初は水色の花で、ちょんて触ると黄色に変わって、もう1回触ると次は赤。他にも黄緑とかオレンジとか、毎回色が変わるんだ。ね、面白いでしょ。

 一通り花の説明してもらって、それだけで結構時間が過ぎちゃった。でも夜までにはもう少し時間があるはず。探検したいって言ったのに、花畑だけで終わっちゃったらつまんないよ。


「ほかにも、みちゃいでしゅ。」


「じゃああそこに行くか。家にも近いから、すぐに帰れるし。」


 オニキスが次に連れて行ってくれたのは、草がいっぱい生えてる所。ここには何があるのかな?じっと草見てたら、かさこそ草が動き出しました。草の中から出てきたのは、僕の小さい手のひらと同じくらいの、小さい小さいリスでした。


「かわいい!!まだこども?」


「いや、これで大人だ。」


「ふわ!!おとななの?」


 凄い!こんな小さいのに大人なんだ。こういう草のいっぱい生えてる所で生活してる、ルーリアっていう魔獣なんだって。人懐っこくて、優しい魔獣なんだって。今も僕の頭や肩、手のひらに膝、ルーリアがちょこんって座ってます。可愛い!!

 ルーリアと戯れているうちに、だんだん辺りが暗くなってきました。時間のこと忘れてた。残念、今日の探検はここまでです。


 ルーリアにバイバイして、家に帰ろうとしたら、皆んな帰ったのに、1匹のルーリアが僕の頭から下りません。オニキスに乗る僕。僕の肩に乗るフウとライ。そして頭に乗ったままのルーリア。オニキスが帰るように言ったみたいだけど、全然帰る様子がありません。


「どうちよ。オニキス、ちゅれていっていい?」


「はあ。」


 オニキスがすっごいため息。何?


「帰れと言ったが、お前のことが気に入ったから、一緒に連れてけと。魔力が少ないから、契約は出来ないぞと言ったが、それでもついて来るってきかない。連れて帰るしかないだろう。」


 そうなの?このルーリアの家族とかは、それでいいの?僕は一緒にいても別にいいけど。ていうか、むしろ嬉しいけど。オニキスに確認してもらったら、独り立ちしたばっかりだからいいんだって。そういうことなら、


「じゃ、いっしょ、いこ。」


 皆んなで家に帰ります。花畑と草むらしか行かなかったけど、とっても楽しい1日でした。

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