第5話契約しましょう。そうしましょう。そして名前を考える。
「よし、決まったところで、すぐに契約を始めよう。」
そんなすぐ?朝になってからでもいいんじゃない?光の妖精に明るくして貰ってるけど、何もこんな夜中に。
って思ったんだけど、2人の顔見たら、今やらなくちゃって思いました。だって、さっきよりももっと、ニコニコにニヤニヤなんだもん。こんなに楽しみにしてるのに、待たせちゃダメだよね。
ところで契約って、どうやるんだろう。
「けいやく、どうやりゅの?」
「ああ、そうか。知らないんだったな。よしまずはフウから契約してみよう。いいか。今から俺がお前に、魔力の流し方を教える。さっきみたいに手を出せ。」
言われた通り手を出すと、さっきみたいにまた手を乗せてきました。それから今からロードファングが魔力を僕に流すって。少し待ってたら、ロードファングの手から、暖かい熱が僕の体に入りこんできました。あっ、これ、僕が倒れてたロードファングをなでなでして時と同じ感じ。この暖かいのが魔力なのかな。
「どうだ。体に暖かいものが流れ込んできただろう。それが魔力だ。」
やっぱりそうなんだ。
「いいか。この暖かいものはお前の中にもある。まずはその暖かいものを想像してみろ。体全部に溜める感じで。」
あったかい感じ、あったかい感じ。さっきのロードファングの魔力を思い出しながら、それから僕の、あの時のことを思い出しながら集中します。少しして体の中に暖かいものがたまり始めたんだ。これが僕の魔力。僕がバッてロードファング見たら、成功したみたいだなって。
「じゃあそのままフウのことを触れ。あー触りにくいか。よし手にのっけろ。それからお前のその魔力をフウに流せ。さっきの俺みたいにな。それが出来たら、フウの名前を呼べ。そして契約すると言うんだ。」
僕の手の平に乗ったフウに、魔力を流します。どんどん魔力が流れ出して、僕は言われた通り、
「フウ、ぼくとけいやくちて。」
そう言ったら、フウが光り出して、目を開けてられなくなっちゃった。ぎゅうっと目を瞑ってたら、ロードファングが声をかけてきました。
「おい。契約は成功したぞ。」
そっと目を開けたら、さっきまで羽とか、キラキラしてたんだけど、それがもっとキラキラして、体も少しだけ輝いてるフウがいたよ。ロードファングいわく、契約したからパワーアップして、今の姿になったんだって。へえ~。でも、良かった。契約がうまく出来て。
さあ、次はロードファング。名前がないって言ってたけど、どうするんだろう。ロードファングでいいのかな?
「よし、今度は俺だ。俺はもともと名前がなかったからな。契約の時は、契約する奴が名前をつけるんだ。お前のことだぞ。さあ、俺に名前をつけてくれ。それからはフウの時と一緒だ。」
僕が名前つけるの?!まさかでした。僕、ペットとか飼ったことないから、こういうの苦手。どうしよう。僕が内心ワタワタしてるのをよそに、ロードファングはニヤニヤがさらにニヤニヤに。ああ、そんな嬉しそうな顔して…。ちゃんと名前考えてあげなくちゃ。
ロードファングは黒いオオカミ。しかもとっても綺麗な黒。そう言えばお母さんが、ロードファングみたいに綺麗な黒の石を持ってた。名前は…、ブラックオニキス。石の意味は確か、悪を退けて、悪霊とかから守ってくれるお守りの石って言ってたよね。皆んなを穢れから守るロードファングに、ぴったりじゃない。
「オニキシュ!………。」
「オニキシュ?」
「んー、しゅ!…。」
お願い分かって…。いい名前だと思うのに、お子様な呂律が邪魔するよ。
「…。ああ、オニキスか。」
僕は思いっきり、ウンウン頷いたよ。良かった分かってくれて。
「オニキスか…。いい名前だ。」
オニキスも気に入ってくれたみたい。よし名前決定。今日からロードファングはオニキスね。
フウの時みたいに、魔力を溜めます。それが出来たら、オニキスが自分のおでこと僕のおでこをくっつけたよ。準備完了です。
「オニキシュ、ぼくとけいやくちて。」
さっきみたいに、光がオニキスを包みます。僕もまた目を瞑りました。そして目を開けた時そこには、さっきよりも艶々なさらに黒が綺麗になったオニキスが居ました。触ってみたら、さらさらふわふわ。どっちもで気持ちいい。
「よし、俺の方も契約は成功だ。これからよろしくなハルト。」
「僕も僕も~!」
皆んなでそれぞれぎゅうううって抱きしめました。
それでね、僕、皆んなにお願いしてみたんだ。契約でもいいんだけど、契約って言葉変えて、家族って言わないって。だってこれからずっと一緒に居るんだし、それに僕、家族が欲しいよ。お父さんもお母さんも居なくなっちゃって、叔父さんとは家族になれなくて。本当は僕、寂しかったんだ。
僕の言葉に、最初びっくりしてた2人だけど、でも、家族でいいって。2人も家族の方がもっと嬉しいって。
今日僕達は、家族になったよ。これからどうしようか。3人でいろんなことしたいね。森の中を探検するのもいいし、2人の他の仲間にも会ってみたいし。まあ、3人一緒だったら、何でも良いんだけどね。
これから楽しみだなあ~。
何でこんな所に子供が?俺の目の錯覚か?ロードファングと妖精といたように見えたが。何処からか、ロードファングが攫ってきたのか?
とりあえず、冒険者ギルドと、領主様に知らせなくては。見間違いだろうが本当だろうが、どちらにしろ今のオレでは助ける事は出来ない。ロードファングだぞ。魔獣のランクでトップクラスの。上級冒険者が、最低でも10人はいる。それ以上か?
早く早く。俺は馬を走らせた。
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